第11話
バイトから帰宅してから、あたしはすぐに2階の父親の書斎へと向かった。
4畳半の狭いフローリングは壁一面が本棚になっていて、そこにギッシリと分厚い本が並んでいる。
あたしは棚に入りきらず床に積まれている本に気をつけながら、背表紙を確認していく。
最近人気になった作家の文庫本から、英語で何と書いているのかわからないタイトルの本まで、くまなく探す。
この中なら、神話や伝説関係の本も置いてあるはず。
その本が見つかれば、妖精や小人といった生き物についても説明されいるんじゃないかと思ったんだ。
そして、棚の一番上のほうに【妖精の住む町】という、薄い童話のような背表紙を見つけた。
「あった!」
思わず声をあげるあたし。
そして、めいっぱい背伸びをして手を伸ばす。
しかし、本棚は天井まで背丈があるため、とどかない。
キョロキョロと周囲を見回してみても、脚立のようなものは見当たらない。
「もう、お父さんってばこんな高いところの本を、どうやって取っているのよ」
おせじにも背が高いとは言えないうちの家族。
いくら本が好きでも、とれなきゃ意味がない。
あたしは一旦部屋を出て自室に戻り、椅子を持ってきた。
「よいしょっと」
キャスターがついていて少しバランスの悪い椅子に乗り、手を伸ばす。
しかし、それでもやっぱり届かなくて、あたしは椅子の上で少し背伸びをした。
指先に、童話の背表紙が触れる。
あと少し。
中指と人差し指で起用に本をつかみ、そのまま引き出す。
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