第10話

そして、白堵はあたしの手のひらの中で四つん這いになり、薬指にキスをしてきた。



その瞬間、熱くなっていた頬が更に熱を帯び、心臓がきゅんっと悲鳴をあげた。



「これでも、幻覚だって思う?」



少し長めのキスをしたあと、白堵が聞いてきた。



白堵がキスをした薬指には小さな赤いあとが残っていて、それがキスマークだと気づくのに、少しだけ時間がかかった。



「……現実だね、きっと」



「『きっと』じゃない『絶対』」



白堵はそう言いなおし、にっこりとほほ笑んだのだった。

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