第8話
それからしばらくは和心の隣で袋詰めに勤めていたあたしだけれど、さすがにお客さんの冷たい視線に耐えられなくなって2レジへと戻ってきていた。
「ありがとうございましたぁ」
「あっしたぁ!!」
「いらっしゃいませ」
「へいらっしゃい!!」
あたしの言葉に合わせてレジ内の白堵という妖精が大きな声をあげる。
小さな体からは想像もつかないくらい大きな声がでているのに、店内のあたし以外は誰も反応を見せない。
やっぱり、この子の声も姿も、あたしにしか見えていないらしい。
「ありがとうございました」
「あっしたぁ! ハゲ親父!」
白堵が調子に乗ってそんなことを言うものだから、思わず「ブッ」と噴き出してしまうあたし。
それを見たお客さんが怪訝そうな顔をしてこちらを見つめてきた。
「な、なんでもありません」
慌てて愛想笑いをする。
「やめてよ、もう」
小さく文句を言い、レジを閉める。
しかし、お会計のたびに白堵や美影を気にしていたら業務に集中できない。
レジ内のお金の誤差が一定金額を超えると、そのレジを使っていた人が誤差の分だけ自腹で支払うシステムになっているので、あまり浮ついているとお財布に響いてくるのに。
「ちょっとあんた、いつまでそこにいるつもり?」
お客さんが引いたのを見計らって、あたしは白堵にそう聞いた。
「いつまでって、いつまでも、だけど?」
「あんたがそこにいるとさ、あたしレジに集中できないんだよね」
「そんなこと言われても、僕レジの妖精だからなぁ……」
困ったように首をかしげる白堵。
「それに、僕と美影はずーっとここにいるよ? 今まで月奈ちゃんに見えていなかっただけで」
そういえば、昨日美影も同じ様な事を言っていたっけ。
それにしても、早くも『ちゃん』づけなんて図々しいな……。
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