第2話

男の体は小指くらいで、眩しそうに目を細めている。



えっと……。



これは、一体なに?



どうすればいいかわからずに、思わず周囲を見回す。



すると、その小さな男がまた口を開いた。



「なにぼーっと突っ立ってんだよ。しかもバカ面で」



はぁぁぁ!?



見知らぬ小さな男の毒舌に、あたしは唖然としたまま怒りを覚えた。



なんなのこいつ。



何さまなの?



ってか、なんでレジの中にいんの!?



わけがわからない。



「あんた……誰?」



あたしは恐る恐る声をかけた。



『バカ面』とか言うし、目つきも怖いし。



でもその小ささから可愛いとも感じていた。



「あ?」



そう言ってあたしを見あげる小さな男。



よく見ると整った顔立ちをしていて、なかなかのイケメンだ。



「あんた、誰? いつからそこにいるの?」



あたしが聞くと、そのイケメンは驚いたように目を丸くして「お前、俺が見えるのか?」と、言ってきた。



えぇ。



見えますよ。



ばっりち、がっつり。



さっき目をこすったけれど、まったく消えてくれませんでしたよ。



あたしが「見える」と、答えて頷くと、イケメンは見る見るうちに笑顔になった。



その笑顔があまりにも可愛くて、ぽっと頬が熱くなってしまう。



「マジで!? 俺のこと見えてんのか!!」



その場でぴょんぴょんと飛び跳ねるものだから、レジが小さく揺れた。



「だから、見えてるってば。てか、誰?」



「俺、美影(みかげ)!!」



「美影……って、名前?」



「おう。お前鳥谷だろ? 鳥谷月奈」



「なんであたしの名前知ってんの……」



「だって俺、ずっとここにいるし」



少し自慢げにそう言って笑う。



「ずっとって……?」



「ここのコンビニができてから、ずっと」



この子はなにを言っているんだろう。



このコンビニができたのは3年ほど前のこと。



3年も前からレジの中にいるなら、もっと早くに存在に気づいているに決まっているじゃないか。



「俺のことが見えるやつに、初めて会った!」



美影はそう言って少年のような笑顔を浮かべた。



まるで、普通の人に自分の姿は見えない。



というような言い方だ。



クエスチョンマークを浮かべて美影を見つめていると、「俺、妖精なんだ」と、言葉を続けてきた。



「妖精?」



やっぱり、あたし疲れてるんだ。



今日は早退させてもらって、ゆっくり休もう。


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