雲の中には、龍や天使が隠れている。

 そして、雲の中には、宝物が隠れている。

「あそこよ」

 大きな雲の塊。繭のような形をしている。

「えーと……これってアレすか?」

「中に空飛ぶ王国は入ってないわよ」

 いやしかし。どう見てもアレである。

「ちなみに宝物ってなんですか?」

「財宝よ」

 財宝? ここにきて、そうくるか。

「大昔に滅んだ国や沈んだ船、それらの遺した財宝が入ってるの。掘っても見つからないのは、ここにあるからよ」

「……………なんでまた」

「いずれ、必要となる日が来るから」

「誰に? 誰が隠したんですか?」

 フローライトは、無言で繭雲を眺めた。ややあって、口を開く。

「そうねえ。必要なくなるかもしれないわねぇ……………」


「答えになってないっす」

「そうね」


「あの中に入ってるのは、財宝だけじゃないのよ。叡智とか、あと色々」

「いきなり雑になりましたね」

「そうね」

 フローライトは、いつもの軽やかな笑みを浮かべた。

「ねえ、不思議に思わない? 雲に財宝が隠れてるとして、雲一つない快晴の時、財宝はいったいどこにあるのか」

「雲が移動してるんじゃないんすか? アレみたいに」

 頭上が快晴だからって、地球上のどこにも雲がないわけはないだろう。

「隠し場所があるのよ」

 隠し場所の隠し場所。入れ子だ。

「いい機会だから、紹介するわね」

 紹介するものなんだ。隠し『場所』。

「ちょっと遠いわよ。50Km/h は出してね」

「ホウキ掴んで飛んでくれたら早いと思うっすよ」

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