第7話 承和の変

 良房は、承和の変で地位と権力を手中にし、五人を助けようとすれば安易にできた筈だった。五人はこの変で良房に加担し、多くの無罪の人間を罪に陥れた。 

 五人は良房党として今後は出世が約束されていると思っていた。彼らは善男の訴えなど良房が揉み消してくれるだろとたかをくくっていた。

 しかし良房は、善男に味方し五人を蹴落とした。良房は、五人の共犯者を権力に媚びる犬と信用していなかった。

 これを機会に良房は五人を見捨て自分の一族を代わりに出世させた良房のほうが善男より一枚上手であった。良房は政治の天才であり、策略にかけては日本一といっていいだろ。摂関政治の代表者とされる藤原道長も、良房の敷いたレールの上を走ったに過ぎない。「創業者」である良房のほうが何かと大変でその知能と運と並外れた行動力を最大限に発揮し、恐ろしい執念でこの絶対的な地位を掴みとったのである。

 天皇家も良房にむざむざと権力を奪われてはいなかった。天皇家も完璧な防御でもって他家の浸入を防いでいた。

 この防御は難攻不落とされていた。良房でさえその壁を乗り越えるのはできないと思われていた。 桓武天皇は自分の子供の内、平城・嵯峨・淳和の三人 

を選び自分の娘と結婚させ、直系の子孫の王位を継承させようとした。しかし嵯峨天皇の時、平城上皇は反乱の兵を挙げた。

 平城上皇は、藤原仲成、薬子夫婦の力をたのみとしていた。藤原薬子の変で嵯峨天皇は改めて藤原氏の底力を再確認した。

 藤原氏は、中臣鎌足・藤原不比等・光明子・恵美押勝・藤原百川と二百年近くに渡って天皇家に次ぐ権力を保ち続けていた。嵯峨天皇と淳和天皇の兄弟は藤原家を牽制するため藤原家の力を削ぐいろいろな手をうった。

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