Ep.2 魔女と、魔女と人間の子ども

 昔、その世界の魔女は皆、貴族でした。

 魔法を使うことができる特許階級の魔女たちは、国の政治も地方の地政も、人間の管理も、何もかもを魔法で行い、人間達は魔女たちの配下でした。

 人間はそれを妬み、人間はやがて魔女を捕まえて首枷をはめ、自分の所持品として扱うようになりました。自分の為に魔法を使わせ、自分が豊かになるためだけの道具にしようとしたのです。

 それは、世界中に広まってゆきます。

 貴族である魔女たちは、人間が住む領域との間に高い塀を作り、生まれてくる子どもを侵入する者がいない屋敷の中で育てました。

 それでも侵入した人間に攫われる子どもは後を立ちません。

 攫われた魔女の子どもは、外の人間達に酷い仕打ちを受け、けれど死なないように管理され、永遠に人間のために魔法を使うのです。

 あぁ、そんな悲劇を許していいものか?

 魔女の王である、女王は立ち上がります。

「……創世の魔女――、アイリア・ペチェッティ=セシル・フィルールの加護を受けた私たちに敵はいない。人間など、この世界から一人残らず滅ぼして仕舞えば良い!」

 それは長い争いには……残念ながら、なりませんでした。

 力を持たない人間と、力を持つ魔女。

 果たしてどちらが勝者となるのか? そんなこと、火を見るより明らかでしょう?

 それは誰もが思ったはずです。

「魔女に勝てる人間なんていない」

 人間は、魔女に滅ぼされていきました。代わりに残ったのは、魔女たちと、魔女と人間の間に生まれ魔力を持っている人間たちです。

 魔女と人間の間の子どもたちは言います。

「和解すべきだ」

 けれど、魔女は首を振るのです。

「そんなことができるはずがない」

 最終的にはどうなったと思います?

 あぁ、そうですね。

 長い年月の中で、魔女と人間の間に生まれた子どもは魔女たちが思っているよりもたくさん、たくさんいました。彼らは魔女たちが住んでいる高い塀で囲まれた貴族の街には入ることが出来ません。魔女と人間との間に生まれた子ども。それは、人間に攫われ人間の街に引き摺り込まれ、そこで子を宿した魔女の子ども。

 彼らは人間が住む街に隠れ住み、自身に魔力があることを隠して生きてきたのです。

 生まれた時から魔女だけの世界に生きてきた魔女たちとは違い、魔女と人間の間の子どもたちは、なぜ人間が魔女を攫ったのかを知っています。彼らにとって力を独占しようとする魔女たちが、自分たちを作った元凶なのです。

 魔女がもし、その力を魔女だけのものではなく、他の、……力がない人間のために使ったのならば……。人間はこんなことをしなかったのではないか、――と、魔女と人間は間に生まれた子どもは考えます。

 けれどそれは魔女たちには理解されません。

 挙げ句の果てに、魔女たちは言います。

「魔女と人間の間の子ども。穢らわしい。お前たちは魔女ではない。純粋な血を持つ、創世の魔女の子どもではない。お前たちを全員処刑する」

 と――。

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