5、三島遥香は不満を隠さない

「今日は行きたいところあるんだって?」

「はい!実は美月さんと美鈴さんに紹介されたお店があって……」

「へー。あの2人、センスあるからな」


店選びのセンスが無さそうな子がそもそも少ない気もする。

悲しいが0ではないのもまた事実である。

三島がごそごそとスマホを取り出して「お店の公式サイトを見せますね!」と気合いを入れている。

30秒ほどの操作が終わると、俺にスマホを渡してきた。


「どれどれ?服屋かな?」

「いいえ、違います!占い師です!『暗黒真珠佐山』ってとこらしいんですけど……」

「『暗黒真珠佐山』……?」


すげぇ、聞いたことのあるお店が三島遥香の口から飛び出す。

ただ、前に初めて『暗黒真珠佐山』のお店に行く際にマスターから紹介されたサイトの作りが違うので、もしかしたら同じ名前の違う店かもしれない。

……同じ名前を付けるセンスの者がこの世にもう1人いるなら世も末であるが……。


「このサーヤさんって人が地味に凄い占い師なんだそうですよ」

「へー……、サーヤさん……」


公式サイトで顔写真が掲載されていると、おもいっきり知人の顔だった。

サイトのデザインが変わっているのも、達裄コンサルのせいかもしれないと諸々のパズルのピースが当てはまっていく。

そういえば美月と美鈴がサーヤと知り合い疑惑があったが、本当に知り合いのようだ……。


「この公式サイトの口コミも凄いんですよ!『優しい店主さんが丁寧に占ってくれて悩みが晴れました!』だって」

「『優しい店主さんが丁寧に占ってくれて』……?」

「『とても理解あるお方で笑顔が素敵でした!』」

「『笑顔が素敵』……?」


知らん偽造されたサーヤ像が三島の口からすらすら現れる。

誰?

誰の話してるのぉ!?

なまじめちゃくちゃ知り合いだから、さっきの因縁の相手です面してきたDQNより質悪いんだけどぉ!?


「てか、『※個人の感想です』はずるいよ!言いたい放題じゃないか!」

「まぁ、よくありますよねこういうの」

「無し!『暗黒真珠佐山』は無し!」

「えー?」


三島は不満そうな声を上げる。

純粋に会いたくない。

特に知り合いと一緒に入りたくないお店の中で5本の指に入る。


「俺、占い信じてねぇからよ」

「そうなんですか?」

「あぁ。朝のニュースでやってる星座占いしか信じないタイプよ」

「信じてるじゃないですか!それが1番信じられないタイプの占いだし……」

「星座占いは最高だよっ……!」

「人間の占いが12通りで分けられるはずないじゃないですか……」


少なくともサーヤと三島を対面させたくない。

三島が公式サイトを信じて人格者なイメージを持つサーヤのイメージが壊れる瞬間を俺は見たくない。

サーヤとはクリーンな気持ちでダメな人物像を共有出来る人じゃないと一緒に入れない。


「行きませんか?」

「行かないよ……」

「美月さんや美鈴さん、絵美さんたちや永遠さんとも行きませんか!?付き合ってる彼女全員と『暗黒真珠佐山』に行きませんか!?」

「行かないから!絶対彼女と行かないと誓うから!」

「わかりましたよ……。行きたかったなー」


三島がぷくーっと頬を膨らませる。

そもそも若い女の子が行きたがるようなお店ではない。


「じゃあどこ行きますか?」

「うーん……」

「案を潰した明智さんの案ください!」


大分引きずってるな……。

というか美月と美鈴はあの店に入った上で三島に紹介してるの……?

意外と常連客……?


「じゃあ三島の家とか?」

「ボクの家ですか……?」

「そういえば行ったことなかったなって……。ダメなら散歩とかカラオケとかでも良いけど……」

「別にダメじゃないですけど……。ついさっきギリギリまで服選びしていた家に戻るのが恥ずかしいなって……」


それもそっか……。

いきなり急過ぎたか……。


「あと、ボクの家に猫いますけど大丈夫ですか?」

「それは大丈夫だよ!俺、猫派だし!それにウチにも猫いるしな!」

「え?明智さんの家に猫いるんですか?前はペット飼ってなかったですよね?」

「最近飼ったんだよ」


「へー!そうなんですね!」と目をキラキラさせる猫好きの三島。

残念ながら三島の期待する猫ではないのが残念である。


「写メとかないですか!?」

「写メに納める価値がない猫だから……」

「逆にどんな猫なんですか……?」

「ぬいぐるみみたいな猫なんだよ……。今度俺の家に来たら嫌でも会えるよ……」

「めちゃくちゃ可愛いじゃないですか!ぬいぐるみみたいに可愛い猫だなんて楽しみ!」


ぬいぐるみみたいな猫(本当に文字通り)なのだが、三島の中ではぬいぐるみみたいに可愛い猫となったようだ……。

ぬいぐるみみたいに可愛い猫と思っている彼女に、猫のぬいぐるみの写真を見せたら頭おかしい奴と思われるのではないかとヒヤヒヤする……。


「明智さんの家の猫はオス?メス?」

「オス」

「名前は?」

「サンドラ」

「可愛い名前ですね!」


三島の中の猫ハードルが上がった。

もう本物の猫を無理して飼うしかないだろうか……。


「三島の家の猫はオス?」

「ネコ助はメスだよ」

「メス猫……、ネコ助なのに……」

「オスならネコ彦だよ」

「どういうセンス……」


しかしついにネコ助ミサイルで有名なネコ助に会えると思うとワクワクする三島家訪問であった。

ネコ助ミサイル、楽しみ過ぎる……!











デート描写の度に主人公の1週間のタイムスケジュールどうなってんやろって思う……。


最近この作品を書いていて登場人物たちが点と点で明智秀頼と繋がっていて、秀頼の認知していないところで登場人物たちが知り合い同士になっているような繋がりの描写が面白くて好き。

秀頼が人間関係の爆弾処理をする度に、いつか爆発させてやりたいと思う。

秀頼の知り合いでしたー、が1番面白いから爆発にウズウズしてる。

前回のゆりかと麻衣様のような感じのやつです。


特にスタヴァの姉ちゃんとサーヤなどの横の繋がりは一切秀頼に明かしてないので、いつかこの辺りの人間関係の消化もやりますと宣言だけしておきます。

その頃には完結が近いかもしれませんね……。

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