98、ギフトアカデミーの生徒会長

茂から勉強用の椅子を借り、彼はベッドに腰掛ける。

俺がベッドでも良かったのだが、彼から「明智先輩には椅子の方が似合いますよ!」と勢いのある言葉に押されてしまいそのような位置関係になる。


「明智先輩は凄いですよね……。僕はギフトアカデミーに通うのが怖いですよ……」

「そうか?慣れれば普通の学校だよ?」

「めちゃくちゃ治安が悪いじゃないですか!明智先輩は決闘申し込まれたとか聞きますし怖いですよ!普通そんな決闘なんてシステム学校にないんですよ!?怖い先輩に目を付けられたら……、なんて考えると胃が……」

「そん時は俺が代打で茂の変わりに決闘出てやるよ」

「うー……。でも、明智先輩と僕じゃ1年しか被らないじゃないですか!2年に進級して決闘を申し込まれたらと思うと……」

「んな絶望すんなよ。ギフトアカデミーの現生徒で決闘したことある奴2人しかいないんだから」

「宝くじで1億当たるよりも確率高い!」

「無敵の返しやめろよ」


因みに在校生での決闘経験者は俺と仮面の騎士の2人のみである。

高校生活2度目の仮面女を除けば、普通の高校生での決闘経験者は俺オンリーということである。

気弱で内気な茂には関係ないシステムだろう。


「ギフトアカデミーなんて不良の通う学校ですよ……。姉ちゃんも絵美姉ちゃんもよく普通に通っていられるよ……」

「見た目不良の奴にそんな相談されてもな……。あと、不良の通う学校なんて誰も思ってねーよ」

「不良よりたち悪いですよ……。僕はギフトアカデミーの生徒が暴徒となり人を襲う怖い連中で溢れるって未来で知っているんですから!」

「未来……?」

「あ、あぁ……。なんでもありません……。とにかくこの世界に希望なんてないんです」

「ふーん」


まさか茂の奴、既にこの世界の未来について見てしまっているのか……。

そう言われるとヨルの世界を知っているだけにギフトアカデミーの生徒にはマイナスの印象しかないはずだ。

通いたくない理由も察してしまった。


「でも明智先輩と同じ学校に通えるのは純粋に楽しみなんですよ?僕はギフト所持者なのでギフトアカデミーしか進路先ありませんし」

「まぁ、俺もギフト所持者だから進路が固定されたのはストレスだよな……」


俺もギフトアカデミーに通わないで良いなら通わないよ。

わざわざ血に染まるギフトアカデミーよりも、普通に達裄さんや悠久先生たちが過去に通った青空学園の生徒になりたかったよ……。

人生どうにもならない理不尽ばかりである。


「明智先輩……。僕はギフトアカデミーでやっていけるんでしょうか……?」

「さぁ……?どうにかなるっしょ」

「僕はそうならないんですよぉ!」

「君は心配性だね」


因みにギフトアカデミーに通う佐木茂など原作のゲームには一切描写もなく、IFも描かれていないので絶対に去年で死んでしまう絵美が2年生に進級出来たのと同じレベルで完全に未知な領域である。

知らんもんは知らん。


茂の学年と同じになる原作キャラは千秋に歩夢とか……、後輩キャラあんまりいねぇな……。


(あとは親戚のあいつとか)


あぁ、親戚のあいつ……。

ヒロインじゃないから忘れてしまっていたが、明智家の親戚のかれんも同じ学年になるんだったか。

中の人は明智の血が混ざる者は全員大嫌いなので、名前すら出したくないらしい。

なんならこの国の宝である星子もスタチャも好きではないらしいので筋金入りである。

俺と一緒にいるのに信じられない。


あとは可能性として俺らと同じ年齢ではあるが、2年遅れでセレナが入学することもあり得るが最近元気かどうかは聞いてないから知らん。

タケルにセレナのこと聞いても「リハビリはしてるが入学してくるかは知らないよ。そこは彼女の問題だし」と言われ、サワルナさんに聞いても「害虫が気安く麗奈の名前を出すな!」とキレられるので一切彼女の近況報告は知らないのである。

タイマンで直接会うのはハズイし、タケルとサワルナさんをセレナの見舞いとして呼び出すのもハズイ。

そんなこんなでセレナの現状は彼らのみ知るという状態である。


「だったらどうすれば学園生活が楽しみになるか言ってみ?もしかしたら叶うかもしれないぞ!」

「本当ですか!?なら僕は生徒会長になってる明智先輩が見たいです!」

「儚き願いだったな……」

「考えてすらいないじゃないですか!」

「俺が生徒会長とか宝くじで1億当たるよりも確率低いぞ」

「無敵の返しやめてくださいよ!?」

「お前が言い出したことだろ」


『悲しみの連鎖を断ち切り』の本編では主人公である十文字タケルの学年の中での生徒会長は片瀬茉麻である。

この選択肢を変わらないだろう。


ギフトアカデミーの生徒会長選はかなり特殊である。

普通の学校であれば立候補をしたり、推薦されたりなどそういうシステムであろう。

しかし、ギフトアカデミーはそのトップである学園長より学校を任せられるツートップに生徒会長と副生徒会長の座が決定される。

第5ギフトアカデミーであるならば、近城悠久に選択権が委ねられる。


そして、その彼女から生徒会長が片瀬茉麻、副生徒会長に十文字タケルが任命されるのである。


茂の頼みを聞いて立候補をしてあげたくても、してあげられないのである。

なんなら俺は宮村永遠が生徒会長となり支配する学校が見たいがそれも叶わないのだ。

原作の近城悠久曰く、『宮村永遠は性格が暗いのと性格が生徒会長に向かない』と評判を下している。


「生徒会長様はな、学園長先生様に決定権があるの。俺が選ばれるわけないだろ」

「僕が学園長先生様なら明智先輩様をご指名しますよ」

「ご指名って……。風俗みたいでなんかエロいな……」

「エロいですね……」

「茂も思春期で安心したよ」


茂がシスコンだけじゃない健全な下心のある男子だとわかり、謎の安堵が胸に降りてきた。

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