6、佐々木絵美は揺らされる

「すげぇ!エミが私と同じクラスだ!はははっ、しかも出席番号が私の1個後じゃん!あはははは!」

「わ、わかったから机揺らさんといてぇ」


山本が席に戻るのを見送りながら絵美の席をちらっと見ていると、早速詠美のオモチャ……、ではなく餌食になっている。

絵美もグイグイ来るタイプだが、その血がより濃いのか詠美もそういうタイプだ。

咲夜とかに見習って欲しいタイプの血だ。

…………なんか突然、あのコミュ障娘が恋しいな。


去年のクラスがみんなに囲まれたクラスだけに、ちょっと寂しいなぁ……。

咲夜に限らず彼女が恋しくなるな……。


キスとか、『セ』から始まり『ス』で終わる行為を制限している変わりにベタベタとくっ付くことが多いが、だんだんみんなのもう1歩進みたいマンネリ感が出て来ていて、もうちょっとどうにかしたいものだ。


13人と付き合っていて、童貞は逆にダサイ。

どうにか今年中に大人の階段を猛ダッシュしたい。


でもなぁ、キスとかアレとかやったやってないで彼女たちと差を付けたくないんだよね……。

…………達裄さんに相談案件か?


原作も大事だが、それ以上に彼女が大事なので色々と頭でシミュレーションしていく。

そんなことを考えていると、チャイムが鳴り、今年担任になった女性教師が姿を現した。


「はい、静かに……。静かだな、このクラス」

『…………』

「…………逆に静か過ぎじゃない!?なんか気まずい!このクラスハズレみたいじゃん!騒げ騒げ!ほら、サッカー部・山本!」

「え?」

「騒げ!サッカー部は盛り上げ上手だろ!?お通夜みたいなこの空気ぶっ壊してくれぇ!」

「別に俺、そういうキャラじゃないんだけど……」


去年、英語の担当をしていたうぇーい系教師の担任は、静かすぎるファーストコンタクトがダメらしい。



傍観者気取りで俺は頬杖をかいているところに、指名された山本はイヤイヤながらクラスの教壇に立つ。

サッカー部は大変だな。


「じゃあ、新しいクラスの交流会で、レクリエーション始めるぜぇぇ!」

『うおおおお!』

『流石、マイケル山本だぜぇ!』

『うおおおお!』

『マイケル山本素敵ぃー!』

「へっ、あんまり持ち上げんなよお前ら」

「盛り上げ過ぎ、山本退場」

「え?」


男の声援を一身に受けた山本大悟は担任にレッドカードを出されて退場させられた。

因みにマイケル山本はサッカー部の山本の異名である。

由来はムーンウォークをしながらドリブルして、シュートを決める姿からマイケル山本になったらしい。

中学時代、山本にムーンウォークを授けたのが遠い昔に感じる。


「というわけで、山本が暖めた空気に便乗するが、このクラスの担任の星野だ。英語の担当。趣味は名城巡りだ」


去年の担任の無難な教師とは打って変わり、賑やかな変な先生だ。

初対面ではないが、担任となると新鮮な気分である。


「というわけで最初は自己紹介をしてもらうところだが……」


絶対出席番号1番からなんでしょ?

明智より前の名前とクラスメートになったことがない。

負けを知りたい。


「その前に2人の転校生の紹介だ。第4ギフトアカデミーより現れた新星の星。可愛らしいルックスに男子が盛り上がることは想像に難しくない」

『うおおおお!』

「騒げ!お前ら!テンション上げないと紹介しないぞ!」

『うおおおお!転校生うおおおお!』

「乗ってきたな!もっとテンションアップ!毎日学園祭!」

『うおおおお!学園祭うおおおお!』

「毎日修学旅行!」

『うおおおお!修学旅行うおおおお!』

「今なら毎日マラソン大会だ!」

『…………』

「ダメか、マラソン大会はダメか……」


うおおおお!が止んだ瞬間であった……。

この先生のテンションに付いていけない……。


「あの……、すいません先生……。凄く中に入りにくいんですけど……」

「すまんね。野球球場みたいな盛り上がりの中に紹介したかったんだけど」

「ありがとうございます。でも、ありがた迷惑です」

「そ、そうか」


転校生にキッツい一言を浴びせられた担任は「では、どうぞ」と冷静に2人の転校生を招き入れた。





「おはようございます。アリア・ファン・レーストと申します。今日から2年間、この学校にお世話になります」

『うおおおお!金髪美人うおおおお!』


クラスメートもアリアのヒロインオーラに当てられてテンションが高いらしい。

そして俺も……。


アリア様きたぁぁぁぁ!

セカンド、ファイナルでヨルに並ぶメインヒロインきたぁぁぁぁ!

毎日学園祭、毎日修学旅行、毎日マラソン大会にはテンション上がらなかったが、アリアの登場にテンション爆上げである。

原作キャラクターとのコンタクトでは永遠ちゃんの次にテンションが上がった人物かもしれない。


めっちゃヒロインオーラに当てられていた。


「さぁ、次はあなたよ」

「…………アリア様の護衛。仮面の騎士だ」

『…………』


仮面の騎士の自己紹介ではみんながシーンとなった。

このテンションの落差よ……。


仮面の騎士で出席番号は『か行』に入るのかな?とか考えているのであった……。

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