20、明智秀頼はタケルに任せる

肝だめしの際に撮影した写真をスマホに投影する。



──あの日、帰ろうとした俺たちの目の前に乗せてきてくれたアニオタ運転手が待っていてくれていたのだ。

『1時間後に拾う』と言ってくれていたのに、どうやら追加して2時間待ってくれたらしい。


『同士の男をそのままにはしておれんさ。……ふふっ、こんな田舎道。どうせ、私は仕事がなくて暇だからな。足がなくて困る客を乗せるのがバスの運転手の仕事さ』


渋い雰囲気を纏ったバスの運転手のおっちゃんがあまに頭から離れなくなるくらいには、全部持っていった記憶が残っているのだ。




「あん時は楽しかったねぇ……」


スマホの画面を消し、掛けられたカレンダーに目を向ける。

既にそのカレンダーは4月の日程を示していた。


今日から、俺は2年生として進級する。


『悲しみの連鎖を断ち切り』セカンドシーズンの始まりだ。

とうとう、織田との決闘から平和だった日々は昨日までで終わってしまった。


しかし本編の状況から、狂ってしまったことは多数ある。


絵美の生存。

ゆりかの生存。

永遠ちゃんの家族生存。

三島の家族生存。

美鈴の紋章消滅。

ヨルが丸くなる。

津軽円の中身が来栖由美。

明智秀頼の中身が豊臣光秀。



と、微妙に原作とは違う展開になってしまっている。

この小さい差が、どんな形で今後、変わっていってしまうのかは誰にもわからない。




頼むぜ、タケル!

お前が誰ルートに進むかによって、俺の死亡が確定してしまうわけなんだから。


俺はとりあえず13人の彼女いて大変だから、高見の見物をさせていただきます。

今まで通り、降りかかる火の粉を払う程度しか原作を変える気はないんでしくよろっ!

存分にヒロインとイチャイチャしまくって、俺の目の保養にしたいくらいだ。


タケルちゃんは、これまで特に何もしてこなかったんだから、そろそろ主人公っぽいところが見たいね!

うん見たい、見たい。

セカンドシーズン、ファイルシーズンに向かうつもりだからタケルも手を抜いていたんだろう。

それくらいには親友のことについてはわかっている。


ファーストのヨルルートのタケルは、基本何にもしないし、現実のタケルは続編ありきのヨルルートを辿ったということになる。

まだまだ予定調和よ。



「始まったなぁ、続編ルート」


スマホのアプリを開きながら、「いやぁ、ここまで生きたな!」とちょっとだけ人生を振り返りながら呟いていた。



『あなたを護るためならば、この世界ごと敵にまわしても構わない。あなたが好きだ』


「ふふふっ……。ふふふっ……」


ちょっとだけ、時間があまり暇だったので昨夜放送されていた『誓いの刀』という、戦国武将の女体化したテレビアニメだ。

この義理堅い明智光秀ちゃんが織田信長ちゃんを裏切る姿が見たい!

早く見たい!

まだ2話目の放送だが、アニメやゲームが生きる糧になっている。


「でゅふ……。でゅふふふふふ……」


白田みたいな笑いが出るくらいに、今の自分は気持ち悪い顔をしているんだと思う。

でも、今から家を出れば原作が始まる。



見たくない、現実の逃避。

アニメが見終わった頃、キリッとした顔に戻る。




「よし、今から学校行くか」




俺たちの戦いはこれからだ!





潔く、自室を飛び出した……。

安全で、平和な死が絡まないエンディングを目指して、タケルを操っていこうじゃないか!






──第1部完結。










(気持ち悪い顔して、よく一瞬でキリッと変えられたな……。お前ってオモシロ。ウケる)


お前はうるさい。

いらない自分の声を蹴り上げるつもりでシカトぶっこいたのであった。










1年生編、完結です。




昨日のコメント欄にて、『スタヴァの姉ちゃんは年上ヒロイン枠じゃないのか!』というクレームがたくさんありました。

私の中でのスタヴァの姉ちゃんは、スタヴァのヒロイン枠です。

スタヴァの姉ちゃんの秀頼攻略も、いつかするんだと思います。


完結のお知らせより、スタヴァの姉ちゃんのお知らせの方が長い……。

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