10、クラスメートチーム結成

『あっ、そうだ。宮本武蔵の異名を要らない変わりに川本武蔵にお願いがあるんだわ』


織田との決闘が決まり、詠美と会話した後に秀頼に声をかけてきたクラスメートの川本武蔵はそう言って秀頼からとある依頼をされる。

内容を聞き、2つ返事をした川本武蔵は、それに従って決闘当日に戦いの舞台である体育館の出入口に立っていた。

彼以外に数人が味方として立っている。


そんな川本武蔵の視界にはたくさんの人が溢れていた。


「決闘を見せろぉぉぉ!」

「そうだ!そうだ!せっかくの決闘だぞ!」

「ダメだ!明智の頼みのため、宮本武蔵の生まれ変わりの川本武蔵がここを通さねぇ!」


秀頼が川本武蔵にお願いしたのは、なるべくギャラリーを入れたくないから体育館を封鎖してくれとのことだった。

学校側で封鎖はしないらしく、秀頼の根回しにより体育館は川本武蔵と数人により封鎖している。


「オイ、山本ぉ!こないだ部活サボって、今日は体育館封鎖だぁ?舐めてんのかテメェ!?」

「すんませーん!先輩!でも、ダチが封鎖しろって言うので先輩の頼みでも聞けねーんすわ!」


そして、同じクラスの山本が先輩を説得している。

そう、秀頼は5人の門番を体育館に設置していたのである。


「デュフフフフフ、明智氏らの決闘の邪魔はさせないでござる!させないでござる!」

「って、体育館前に目視で200人くらい居るんですけど!?明らかに5人じゃ防げないって!」


やる気を見せる白田と、戦力不足を嘆く熊本さん。

秀頼の想像以上に、体育館に押し寄せる数が多すぎた。

でも、それでもクラスメートの秀頼のお願いのために彼らは立ちはだかった。


「戦力不足がなんだ!先輩がなんだ!ここは通らせねぇ!マイフレンド秀頼が通すなってんなら通さねぇぞ!」

「…………え?誰っすか?」


味方っぽい男子生徒に山本が突っ込んだ。

川本武蔵、白田敦、熊本セナ、そして自分・山本大悟。

山本はこのメンバーはクラスメートだから知っているが、マイフレンド秀頼と呼ぶ謎の男性は知らなかった。

因みに熊本さんらも全員知らない人物である。


「へっ!俺と秀頼は小5からの仲。あいつのムチャな頼みはすぐ俺に行く。鹿野だ、よろしくな!」

「マジで誰だよ!?」


絶妙に秀頼が小5時代の描写が皆無なので、本編に名前すら上がったこともない秀頼の親友がリーダー面をして山本らの味方ポジションにいた。

因みに中1からの付き合いの山本すら、本当にはじめて顔を見た男だった。





「退け。俺はどうしても明智という男の戦いが見たい」


そこへ、ターザンがズカズカと鹿野の前に出る。

敵意を感じ、鹿野が構える。


「へっ!人生は一期一会!鹿野」

「ターザンだ!」


バッ、バッ、バッ!

鹿野とターザンの素手の対決が始まってしまう。

ターザンのターザンラリアットを喰らう鹿野が目の前の男の危険さに気付く。


「川本、こいつはやべぇ!俺より強いぞ!だが、俺が1人でやる!手助けは要らねぇ!」

「え?あ、じゃあ頑張ってください?」


一応味方っぽい鹿野がターザンを引き付ける。

あと、別に川本武蔵は鹿野の助太刀に入るつもりもなかったが、手助けは要らないというので鹿野の存在について考えないことにした。


「うおっ!?」


鹿野に意識を取られていたら、質量に押し潰されそうになる川本武蔵。

味方に損害を出す鹿野に、実はあいつは敵なんじゃないかと疑いながら川本は人をさばいていく。


「くっ……、人が多すぎるぜ……。明智め……。終わったらなんか奢ってもらうからな。チクショウ……」


山本が軽口を叩きながら、先輩を追い払う。

普段、秀頼やタケルを突っ込むことで山本は鍛えられていたのである。


「残念だったな、山本!ギフト『蛇変化へびへんげ』」

「なっ!?汚ねぇっすよ!蛇田へびだ先輩!?」


山本の目の前にいたサッカー部の先輩が蛇に化ける。

色々なギフト使いが蔓延る学校なのを山本は思い出し、気合いを入れる。


「熊本!そっちに蛇田先輩が行った!」

「へ、蛇田って誰!?うわっ、蛇だっ!キモッ!キモッ!」


蛇になっている蛇田は、女子の熊本さんから『キモッ!』を連呼されていて、心で傷付いていた。


「邪魔な蛇だ……」

「あ……」


全く事情がわかってないターザンのところへ蛇が行ってしまい、ひょいと素手で持ち上げられた。


「迷い蛇よ、自然はあっちだ」

「……あ、あの。そ、それ人……」

「あ?」

「いや、なんでもないっす……」


ひゅっと窓から蛇が投げ捨てられた。

山本はタメなのに、グラサンをかけて鹿野と殴り合いをしていて、蛇を素手で掴む野性児のターザンに恐れおののいてしまっていた。

「まぁ、蛇だし大丈夫でしょ」と自分で自分を納得させた。


「くっ、キリがないぞ山本!」

「そうだな、川本」

「こうなったら……」

「何かあるのか川本!?」

「くっ……、無念」

「諦めんなよ!?」


悔しそうに目を瞑る川本武蔵に山本が盛大に突っ込みを入れる。


「良いか!?宮本武蔵はな!遅刻してでも巌流島行ったんだよ!諦めないで舟漕いだんだよ!わかったか!」

「山本……」

「そうだ、山本の言うとおりだ!お前の目の前が佐々木小次郎だったら敵前逃亡だぞっ!」

「誰あれ?」

「鹿野とか名乗ってたやつ」


ターザンへ背中を向けて走っていた鹿野を川本武蔵が白い目で見ていた。


「ちょっと、山本君!剣道部でしょ!1番戦いに慣れてる君がみんなを引っ張らないと!」

「川本なんだけど……」

「俺が山本だし、サッカー部な。熊本、川本と山本が逆になってる」

「山本、川本、熊本、宮本、もうぐちゃぐちゃでござる……」


白田がさっきから名前が上がるメンバーを聞いて、頭が混乱してきていた。

秀頼のクラスメートグループ(鹿野だけ違うクラス)は、連携が上手く取れていない状況に陥っていた。

このメンバーにプラスして、みんなの中心・明智秀頼が居れば200人っぽちぐらい既に追い払っていただろう。

だが、リーダー不在により、5人の心はバラバラだった……。


「退け、川本!織田部長の試合だぞ!退かないならギフトで強行突破だ!ギフト発動『重力破壊』!」

「ぐっ……!?」


川本武蔵が2年の先輩に強大なGが加えられる。

『重力破壊』。

1分も喰らっていたら吐血し、3分も喰らっていたら身体から心臓が抜かれるほどに大きい重力に川本武蔵は立っていられなくなる。


「さぁ、退け川本!」

「ぐぅ……退きそうだ……」

「退け!退け!退けぇぇぇぇぇ!」


2年の先輩が更に重力を加える。

10秒当てられて、床に川本が倒れ込む。


「ダメっすよ、重力パイセン」

「あ?」


川本武蔵が数分後にはあの世に行こうとしていた時だった。

山本が『重力破壊』を駆使している先輩の肩を叩く。


「オ、オレは金田だぞ!」

「どっちでも良い。あんたのギフト弱点だらけっすよ」

「なっ!?」

「ギフト陰性、ギフト使えない無能力な俺があんたのギフト破ってやるっすよ」






本気モードの山本が──今、覚醒した。













ギフト対決が新鮮です。

本編開始前は、こういうギフト同士のバトルとか書きたかったのに、ロクな戦闘描写がなかったな……。

今まで戦闘描写が描かれたのは死神ババアとか、ヨルの過去編くらいだろうか。



山本が主人公してる……。

初登場時、こんなにずっと登場するキャラになるとは思わなかった……。

山本の取り巻き2人はリストラしたのにね……。




あと、鹿野が誰なのか。

作者もわかってない。

秀頼とは年に3回くらい会話する仲。

因みに同じクラスになったことがなく、タケルも絵美も鹿野が誰なのか知らない。

親友の秀頼しか面識がない男。

多分リストラするから忘れて良い。




クラスメートチームメンバー紹介(1人クラスメートではない)

山本……秀頼から信頼されている地味な突っ込み役。

彼が有象無象の4人をまとめる。

秀頼に鍛えられていてそれなりに強いが、ギフトがない一般人。


川本……剣道部であり、自称宮本武蔵の生まれ変わり。

そこそこ強いが、そこそこ止まり。


白田……秀頼のギャルゲー友達。

言動以外のスペックが無駄に高い。


熊本……クラスメートチームの紅一点。

戦闘力は咲夜並み(つまり弱い)。


鹿野……誰?

戦闘力はヨルより弱いくらい。





次回、ギャラリー200人を相手にクラスメートチームが反撃を開始する!

(多分秀頼より、山本たちの戦いの方がきついと思う)





本日、限定近況ノートを更新しました。

ドロッとした修羅場が……。

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