9、津軽和と細川星子のメッセージ

決闘の日がだんだんと近付いてくる。

部長が近くで生活をしていると考えると、生きた心地がしなかった……。


俺が明智秀頼で、死亡する運命にあるという恐ろしいが、ぼんやりとし過ぎていることより遥かに部長の方が俺には怖い……。


絵美やタケルたちは、極力決闘について触れなかった。

それは嬉しいが、なんか距離を取られたみたいでなぁ……。


「辛いなぁ……、俺……」


佐山さんの占いから、向き合えって言われたのにバタバタし過ぎててそんな余裕はなかった。

決闘さえ終われば向き合えるかもしれない。

ただ、決闘が終わる頃に、俺は無事にいられるだろうか……。


親しい人たちからよそよそしい対応をされて、変に傷付いてる自分がいた。

決闘には触れて欲しくないのに、よそよそしくして欲しくないなんて、矛盾してるんだよなぁ……。


そんな時、スマホのバイブが鳴る。

ラインの通知だ。

開くと、なんか久し振りな感じがする津軽和からだった。

中学生の彼女から連絡が来るなんて、なんさあったのかと思い、急いでメッセージを読む。




『ゴミクズ先輩!決闘ってマ!?』

『あなた、弱いんだから負けるに決まってますよ!』

『今のうち、降参した方が良いですよ!』



「負け確と思われとる!?」


麻衣様から『クソ雑魚』扱いされ、この和のメッセージ。

本当に俺って弱いんだなぁ……。

まぁ、達裄さんに比べるとまだまだ弱っちいから反論できないわけだけど。


「ん?」


俺の既読が付いたのに気付いたのか、また和からメッセージが届く。



『冗談っす。秀頼先輩なら勝てるっすよ!』

『みんな、口に出せないみたいなんで私が代弁しますけど』

『心配してるみたいです』

『だから、勝って安心させてください』

『負けたら一生ゴミクズっすよ!』

『ゴミクズじゃないゴミクズ先輩って私にも見せてくださいっすよ!』




「和……」


ゴミクズじゃないゴミクズ先輩って何?

でも、みんな心配してくれてるのか。

…………嬉しいなぁ。


あぁ、俺みんなが大好きなんだ……。

視界がぼやけてきて、目元から滴が出てくる。

ありがとう和……。

ムカつく後輩だけど、救われたよ。



『最後に、最近特に忙しくてラインすら渡せないせーちゃんからメッセージがあります。再生してください』


ピコっと、通知音と共にmp3のボイスメッセージが送られる。

タップすると共に短い読み込みバーが出て、すぐに再生された。





『このゴミクズぅぅぅぅぅアニキぃぃぃぃ!私のパンツ想像してんじゃねぇぞゴラアアアアアアア!』


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


スタチャはライブの時、どんな似合う下着があるのかア●ゾンで検索していてごめんなさい。


「ん?」


てかこれ、星子でもスタチャの声でもなく和の声じゃねーかよ。

ウチの妹はゴミクズアニキなんて言いません。

和が星子の振りをしてても、すぐ気付くわ。


『ごめんなさいわざと間違えました』


わざと間違えるって、意図的じゃん。

和のパンツとか3回くらいしか考えたことねーよ。


『本当はこっちっす』とメッセージと共に、さっきのより少し容量の大きいmp3が届く。

こっちも再生してみる。


『お兄ちゃん、もうちょっとで誕生日ですね。……とりあえず誕生日は祝いたいなぁ。心配してないけど、決闘なんて絶対勝てるよね!世界で1番、私がお兄ちゃんを信じてますよ』

『ちょっと、せーちゃん。真面目すぎぃ!もっとふざけたメッセージをゴミクズ先輩に送ってよ!』

『このゴミクズお兄ちゃん!スタチャ、パンツでググってんじゃねぇぞ!』

『あぁ、良いね!私なら高評価押すね!でもゴミクズ先輩はドMだから逆に喜びそう』

『このまぞぉ!』


こうしてmp3の再生は終わった。

…………え?

2人なりの応援だったのかな……。


あと、俺のぐーぐる先生のサジェストがどこからバレたんだろう?

気になるモヤモヤが残りながら、決闘間近の夜は過ぎていった……。
















「とうとう来たか、秀頼」

「来ちゃったなぁ……」


あっという間に1週間が過ぎた。

俺の側には、ギャルゲー主人公のタケルが控えていた。

そして、俺の敗北を見せ付けたいのか、複数人のギャラリーを呼んでの試合となった。


「秀頼君、わたしは信じてるよ」

「絵美……」

「秀頼さん、私はあなたの勝利しか考えてないですから!」

「エイエンちゃん……」


俺と親しい者がギャラリーとして集まっている。

絵美、理沙、円、咲夜、永遠ちゃん、ゆりか、ヨル、三島、美月、美鈴。


「クソ雑魚らしく、身分をわきまえた戦いをしなさい!」

「ヨリ君、よくわかんないけど可愛くガンバ!」

「クハッ、クハッ、クハッ」


あと、何故か麻衣様、千姫、概念さんとそんなに親しくないギャラリーが俺に集まっていた。




「おいおい、なんだよ明智のギャラリーはよ!女ばっかりじゃねーか!いやぁ、レベルたけぇな!」

「織田……」


織田先輩が、柄の悪そうな男だけを20人程度引き連れてやってきた。

剣道部の後輩や、友人なのか。


「類は友を呼ぶっていうが……、アレはひでぇな……」


タケルがぼそっと呟く。

「あっちの陣地でなくて良かった」と続けている。


「俺はあの黒髪が好みだな。明智のせば、俺のモノにしてやっても良いぜ」

「誰があんたの女になんかなるもんですか!」

「お、落ち着いて理沙!」


理沙を指しながらゲスな笑いを浮かべる織田先輩。

一言でカッチーンときたのか、理沙が嫌悪感を見せるのを、円が全力で止めている。


「でも、あの緑髪はねーな。見るからに気が強そうだ」

「なんだとぉ!?」

「まどかさん!落ち着いて!」


理沙と円の立場が逆転し、理沙が抑える側になっていた。

そんなやり取りをしていると大きい手が叩く音が鳴り、みんなが静まりかえる。








「静粛に。これは学園の決闘。わたくし抜きでの争いは許さないわ」


その声の主が髪をかき上げながら姿を見せる。


「壮大に生きる女、近城悠久よ。よろしく」


悠久学園長。

原作キャラクターのヨルの保護者の登場だった。


「壮大とかあいつは相変わらず恥ずかしいな……、もう……」

「どうしたヨル?」

「なんでもない……。た、他人の振りしとこ……」


ゆりかには不思議がられたが、自分と悠久は他人と割り切ることで、ヨルは乗り切ろうとするのであった。













秀頼がMだと気付いている後輩2人はわかりみが深い(白目)。




次回、山本の霊圧が……消えた?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る