第12章 束の間の平穏

1、明智秀頼は運が悪い自覚がある

「はぁ……」


俺はため息を付きながらパソコンのモニターの前でマウスを扱っていた。

最近は本当に運が悪い。

びしょびしょに濡らされた挙げ句、女になった。


どうしてこんなにも運が悪い。

俺は昔から運が悪いんだ……。


前世での両親はアレであり、無人島で死にかけたなんてのは俺の人生経験のジャブみてぇなもんだ。

座っていただけで、『私のスカートを覗いていた』だの冤罪を掛けられ、先生に説教をされた……。


あとは中学時代、気になる異性の子からバレンタインデーに呼び出されて、チョコを渡されるのかとドキドキしていたら「お願い豊臣君!太田君にこのチョコを渡して!」とか言われた時はそのチョコを握り潰しそうになったものである。

俺の小学校時代からのダチであり、クラスメートでもあったサッカー部の太田稔にチョコを渡して欲しかったんだろうけど、イラつきが頂点に逝ってしまった。

結果、隣の隣のクラスで会話もしたこともなかった初対面の折り紙部であった太田洋二という男にチョコを渡してやったことがある。

まぁ、その後に太田洋二と仲良くはなれたのはプラスではあるのだけれど。


後は腕破壊された挙げ句、剣道すら出来なくなったし、交通事故に巻き込まれて死んじまった……。

俺は何か悪いことをしたのだろうか?


今世は今世。

虐待の人生から始まり、上松ゆりかに殺されかけ、『エナジードレイン』で死にかける。

常に貧乏くじを引かされている。


俺はこんな人生はおかしいじゃないかと思いながらマウスを動かす。

そして、みんな大好きヤヒュー知恵袋の時間である。

ヤヒュー知恵袋はご存知、世界中の人の意見を聞ける神サイトである。

中には荒らしも多いが、マナーさえ守って運用すれば良い人もたくさんいる。

俺の不幸を世界中のみんなで解決しようと質問を入力していく。



リアル本能寺

『私の人生、良いことがありません。いつも人生が上手くいかず、袋小路に迷い込むような生活です。どうにか人生を良い方向に持っていくことは出来ないでしょうか?』



堅苦しいか?、と思いつつ、投稿する。

しかし5分経ってもレスがない。

質問内容で滑っているのかな?と不安になりながら、今投稿されている質問もざーっと目を通す。


世界中の人の悩みを眺めるのも俺は好きであり、気になった質問の答えには返すタイプだ。

すると、俺も気になった質問を見付けてクリックする。




アイリなんとか

『近々、大事なミッションがある。そのために強者と戦い修行がしたい。誰か、強者を求む』




出会い系かなんかと間違われそうな質問を見付ける。

マナー違反を指摘しようともしたが、俺には心当たりがあったので返答をする。



リアル本能寺

『『サンクチュアリ』という喫茶店の常連客に世界最強います!もしかしたら会えるかもです!(^^)d』



ふふん。

俺の師匠、遠野達裄に行き着く書き込みをする。

『ゴーストキング』をも圧倒するあの人は俺の知る限りあの人しかいない。

失礼ではあるのだが、おそらくヨルの話に出てきたターザンさんや、俺が前に1度だけ会ったアイリーンなんとかさんより強いと踏んでいる。


すると投稿した人からすぐに返信がくる。

『今、近くにいるので行ってみます!q(^-^q)』と書き込みがくる。

もしかしたら近所の人なのかな?とか考えているとまた返信がきた。


アイリなんとか

『てめぇ、一生恨んでやる。会いたくねぇシスコン野郎の知り合いがいたじゃねーかこの野郎!』と返事がきた。


「…………」


俺は書き込みを消した。

親切で書いたことが仇になる。

本当に俺はつくづく運が悪い。

『会いたくねぇ、シスコン野郎』って誰だろう?と考えながら自分の建てた質問に戻ると3個のレスがきていた。





グランドクロスLiSA

『普段の行いが悪いんだと思います。兄の友達に、たくさん人に頼られる人がいます。彼を見習ってリアル本能寺さんも普段の行いを正してみるというのはどうでしょうか?』


あー、なるほど。

俺のたくさん人に頼られる人というと達裄さんやマスターが浮かんでくる。

確かに彼らをリスペクトするのはありかもしれない。



サウザンドプリンセス

『人は見た目に寄ると聞きます!可愛い人は得をするイメージです!可愛くなりましょう!』


人は見た目か……。

悪人顔だからか悪いことばかり起こるのかな……。

そう考えると意外と的を射た書き込みかもしれない。



UQ

『素直に占い師に見てもらった方が良いのでは?』


そうだったな……。

そういえば頼子になっていた時に、マスターか達裄さん辺りに紹介してもらおうとか考えていたことを思い出す。




「よし、ならとりあえずマスターの店に行くぜっ!」


急がば回れという言葉の通り、パソコンをシャットダウンさせて家の玄関を飛び出した時だ。


「あ!ひっでっよりきゅぅぅん!」

「よぉ、絵美じゃん」


ちょうど俺の家に遊びに来ようとしていた絵美と出くわした。












頼子が占い師のことを考えていたのはこちら。

第11章 悲しみの連鎖

第322部分 3、岬麻衣

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