69、明智秀頼は隠したい
「や、やぁ!絵美じゃないか!そ、それにたくさん人がいますね……」
俺は写真集をわざと意識しないようにさりげなく背中に隠した。
一連の行動を見ていた2人は『バレたくないんやな』と俺の態度を察していたようである。
そもそもなんだこのメンバー……。
絵美、理沙、円、咲夜、永遠ちゃん、ゆりか、ヨル辺りは理解できる。
それに追加で三島、美月、美鈴の3人と、後輩の和と星子。
彼女らの接点が一切理解できない……。
しかし接点を無理矢理こじつけるとしたら、原作キャラクターが寄りすぎていることである。
俺を非常に不安にさせるメンバーである。
明智秀頼暗殺部隊と言われた方が納得出来る人選である。
気絶手刀の絵美。
タケル大好きブラコン理沙。
来栖さんスペックの円。
モンスターコミュ障咲夜。
学年一の努力家頭脳派の永遠ちゃん。
舐められない女和。
変幻自在のメ●モンアイドル星子。
変態露出狂忍者のゆりか。
遅れてきた現代拷問女のヨル。
エナドレぶっぱの三島。
チートオブチート美月。
行動力化け物フルスイングの美鈴。
それに対し、ゴーストキングに勝てなかった明智秀頼……。
……もはや、俺が負ける要素しか見当たらない。
咲夜くらいしか勝てないんじゃないかな……。
こうなると逃げの一手である。
「じゃあ帰ろうかなー。またね、マスター」
「秀頼、もっとゆっくりしていけ」
「え?」
咲夜が俺を引き留めた。
逃げキャンだと……?
「おばさんももっとゆっくりしていきましょうよ!わたしたちに混ざりましょう!」
「そ、そうかい?」
おばさんも突然12人のJKが一気にマスターの喫茶店に押し寄せたことに驚きを隠せないでいたところに絵美から引き止められる。
「おばさんということはもしかして秀頼のお母さんですか?」
「俺のお母さんではないけど保護者だよ」
「なんと!?」
美月の質問に答えると永遠や美鈴が「えぇ!?」と驚いた様子を見せる。
ただでさえ、前世の時から親を知り合いに目撃されるのが恥ずかしくて苦手だっただった俺はマスターと無駄な雑談をしないで帰ったらと思い大後悔している。
「み、宮村永遠です!毎日秀頼さんと一緒に勉強させていただいています!よろしくお願い致します!」
「秀頼の保護者です……。あとついでにこの喫茶店の店長の姉です」
「えぇ!?マスターさんのお姉さんですか!?」
「僕、ついで扱い!?」
女子たちがおばさんに興味を持ったのか挨拶をしたり、マスターに質問をしたりしている。
この親父、いつの間に三島や美月や美鈴と面識を持ったんだ……?
俺の知らないところで知人が繋がり過ぎて唖然とする。
「…………」
ふぅ……。
みんなおばさんに集中して沢村ヤマから目を反らすのに成功させたぜ。
身内を知り合いに見られるのは嫌だが、俺の心の拠り所になっている沢村ヤマを見られるよりはまだマシである。
スタチャと沢村ヤマが今世にいなかったら、多分生き甲斐を見付けられずに引きこもりになっていたかもしれないからなぁ……。
センチメンタルになり、心で涙目になった。
「ところで秀頼君?」
「ん?なんだい?」
おばさんとガッツリ面識のある絵美は彼女らから離れて俺の座っている横に立っていた。
まぁ、あの人数をおばさんが食い止めているので絵美と会話は出来ないだろうね……。
俺よりおばさんのがモテてる問題が複雑だ。
「わたしたちが店に入った瞬間、背中になんか隠してなかった?」
「…………いや、何も?」
俺は心を落ち着かせるためにコーヒーを一口飲む。
心臓はバクバクであるが、絵美をどう対処するか考える。
ギャルゲーは見られてOKでも、ヌード写真集はNGだ。
「不自然な膨らみが……」
「絵美!」
「ん?」
ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!
バレる寸前で俺は苦し紛れに声を出す。
「こ、これはおばさんとマスター、俺らの身内グループしか見られてはいけない書物なんだ」
「はぁ。咲夜は?」
「さ、咲夜はダメ!あ、あくまで明智のモノだから!」
「はぁ……。へぇ、咲夜はダメなんだ」
「…………うん」
「…………」
「…………」
「……嘘だよね?」
「…………」
コクッと頷いてしまう。
無理だよ、絵美は勘が鋭すぎる……。
こういうのに限って隠し通せない。
「え、絵美!?」
「ん?」
「と、取引だ!パフェ奢るから見逃してくれないか……?」
あ!
しょうもない!
苦し紛れの言葉で何も考えなかった発言だがこれはあかんやろと後悔した。
「…………わたしと秀頼君の2人でだけなら良いよ」
「え?良いの?」
「その条件なら。それに誰にでも知られたくないことはみんなあるでしょ。そんなに問い詰めないよ」
絵美が女神に見えた瞬間であった。
どうせ絵美と2人で服を買いに行く約束だしそのついでに果たせる!
ありがとう絵美!
俺の沢村ヤマは守られたと安堵する。
「ただ……」
「ただ?」
「ギャルゲーやエロ本なら許さないよ」
ニッコニコの笑顔である。
その笑顔のどす黒さが見える。
なんでか絵美は子供時代からギャルゲーが嫌いなのである。
「ぎゃ、ギャルゲーじゃないから安心しな!」
「ならいいよ」
嘘は言っていない。
そんな感じで絵美からの追及を逃れて安心しているとぼちぼちおばさんに集まっていた女子らも話が終わったらしい。
「マジでキャンプ疲れたから帰るわ」と疲れてヘトヘトな演技を見せ、おばさんに帰る様に促す。
「む?」
「どうしたの咲夜?」
娘の声にマスターが反応すると、咲夜が俺を見てきた。
「秀頼が背中になんか隠してるな」
絵美から背中の不自然な膨らみを指摘されたから少し服をダブダブにしてより自然な形にしていたのだが、これでも見付かるらしい。
「本かなんかか?」
「いや……」
絵美、マスター、おばさんが苦笑いをしている。
俺は立ち上がって咲夜に背中を見られないようにした。
当然ながら咲夜の声が聞こえていた者からも視線を感じる。
「まさか明智君」
「!?」
理沙が閃いたという顔とからかった声を出す。
「まさか沢村ヤマじゃないよね!?なーんて、冗談だよ」
「…………」
「…………」
「…………」
「……え?」
中身を知っている2人が黙り込み、俺も突然の指摘に慌てて背中を向けて喫茶店の外目掛けて走り出した。
「沢村ヤマじゃないよ……?じゃあ、また明日」
「ちょ、秀頼!?」
「秀頼様!?」
「お兄ちゃん!?」
何人かから呼ばれたが俺は振り返らず店内から逃げ出した。
土日は本当に散々な1日だった……。
おばさんを店内に置いて、俺1人で自宅へ走っていったのであった……。
†
理沙は沢村ヤマを知っています。
第5章 鳥籠の少女
第49部分 6、スターチャイルド
次回、沢村ヤマって誰……?
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