54、細川星子は苦笑する

明智秀頼らがキャンプに行っていた時と同じ頃、西軍メンバーによる女子会が進行していた。

その日、佐々木絵美らは宮村永遠の案内の元、女子会の開かれる会場を案内されていた。


永遠がインターホンを押すと、スピーカーから美月の声がした。


『来たか永遠。今、自動ドアを開けるからな』

「はーい!」


そのまま永遠の目の前の自動ドアが開けられる。

チラッと彼女が振り返ると絵美、理沙、円、咲夜、和、星子、ゆりか、ヨル、遥香の姿があった。

そう、西軍メンバー全員参戦である。

そのまま自動ドアの先に進み、エレベーターの上ボタンを押した永遠。


「ちょっと待て永遠、深森の部屋は何階だ?」

「10階ですよ」

「そうか。我は修行のため走って向かう」

「はぁ……」

「エレベーターと我、競争だぁぁぁぁ!」


そう言ってゆりかは階段を素早く登って行くと言う。

『でも、ゆりかは美月たちの部屋番号知らないよね?』と言葉を言おうとした時だった。


「よし、このあたし!ヨル・ヒルも階段だぁ!」

「ウチも階段使う!」

「なら私も健康のために階段を使うわ」


こうしてゆりかの階段で登る案にヨル、咲夜、円の順番で名乗りを上げた。

「怪我しないようにねー」と遥香が声を掛けると4人が頷き階段を登って行く。


「来いー!さぁ、早くエレベーター来いぃ!」

「絵美?」

「永遠さん、早くエレベーター呼んで!」

「理沙まで!?」


絵美と理沙が4人に対抗心を剥き出しにしていた。


「うー!来い、来い、来い、来いっ!」


そんな様子に永遠も突っ込みながらも、2人に当てられたのかボタンを連打し始めた。


「先輩たちのテンションがおかしい……」

「あ、はは……」


和の呟きに同意とばかりに星子は苦笑する。

因みにこの日、1番テンションがおかしいのは、いつになく不気味なノリでお守りを渡してきた達裄であったりする。




「うおおおおお!」

「ゆりか!負けねーぞ!」

「ちょ、2人早すぎ……」

「はぁはぁ……、ウチもう限界……」


階段組はゆりかが優勢であり、ヨルがそのすぐ後ろを走り、それに1階差くらい離された円と続く。


「ウチ……、無理……」


3階でバテた咲夜はエレベーターのボタンを押す。

ちょうどボタンを押して4秒程度でエレベーターが開き咲夜が乗り込む。


「はぁはぁはぁはぁ……」

「めっちゃバテてるじゃん!」

「うるさい……。はぁ……。絵美も階段走れば辛さがわかる……」

「自分から階段を選んだんじゃん……」


咲夜がエレベーターに乗った瞬間に、事実上の階段リタイアであり、先に乗り込んでいた6人から白い目で見られていた。


そのまま10階にエレベーターが辿り着くと既にゆりか、ヨルの順番でゴールしており、エレベーターからみんなが降りると同時くらいに円も集まってきた。

エレベーター前でみんなと合流である。


「咲夜さんが乗らなかったら円さんに勝てたのに!」

「ふふーん!残念ね!」

「ウチが悪いのか!?」

「咲夜先輩が戦犯じゃないですか!」


理沙と和に責められている咲夜に「あはは……」と星子が和まで競争を意識していることに笑ってしまっていた。

それを見ていた遥香はみんなの仲の良さでほっこりと笑っていた。


「では次は下りで勝負だな!」

「よっしゃー!次は負けねーぞゆりか!」

「今はちょうどこの階にエレベーターがあるので待ち時間ゼロ!負けませんよ!」

「やらないですよ!?何また競争する気なんですか!?美月の部屋に行く目的忘れないで!?」


血の気の多いゆりか、ヨル、絵美を永遠が制し、そのまま友人らが暮らす部屋まで案内をしていく。

「高そうなマンションだなー」とびくびくしている遥香に、「この中のメンバーの家で頭1つ抜けるのは間違いないわね……」と円は外観と中身で推理する。


「せーちゃんはこれくらい稼いでいるんじゃないの?」

「え……?私なんてまだまだアイドル界隈じゃ雑魚みたいなもんだよ……。事務所からたんまりお金取られるし……」

「めっちゃ夢壊すじゃん……」


和の憧れのアイドルであるスターチャイルド本人が辛辣なコメントを残し、少し引き気味になる。

星子のリアリスト振りにその場の全員『えぇ……?』と驚愕していた。


「おっ?来たな、みんな!おーい!」


永遠を先頭に10階を歩いていると、自室の前に美月が待機していた。

こうして西軍メンバー全員が合流したことになる。

死亡フラグキャンプでは、薄暗い雰囲気が終止付きまとう空気であったが、絵美主導の西軍女子会は賑やかでワイワイとした暖かい空気に包まれるのであった。


「こんなにたくさん人を招くのははじめてだ……。何人か知らない顔もあるみたいだ」

「そうですね……。ここの全員+美鈴が美月の恋のライバルです」

「…………あぁ」

「また増える気がする……」


ぼそっと呟いた永遠の一言に、この場の全員が凍りつく。

「いや、まさかぁ……」と円が軽く否定するが、『……増える気がする』と美月以外の全員が心で呟いていた。


「?」

「うん。美月も美鈴もその内わかるよ。……わかるというか察します」


西軍メンバーに1人が追加される度、際限ないのかと1回は突っ込みたくなるのが彼女の中であるあるになっていた。


「ささっ、とりあえずあがってくれて良いぞ」と美月が促すと、永遠を先頭にして「お邪魔しまーす」と深森姉妹の暮らす部屋へと入っていくのであった。


「あら永遠に絵美に円までごきげんよう。…………んん!?」


中で待機していた美鈴であったが、10人を超える西軍メンバーに一瞬で圧倒される。

来てもせいぜい5人くらいだとたかをくくっていた美鈴も、その倍の人数が現れて驚愕した。


「ちょっとお姉様!?なんですかこの数!?」

「せ、西軍メンバー全員らしい……」

「はぁ……」


西軍メンバー全員の顔合わせがスタートするのであった……。
















これ全員を動かすとか正気か……?

西軍全員が1ページに出てくる回とか、かなり久し振り過ぎる……。

西軍という単語が出てからは初ですね。




次回、終わらない自己紹介編……。




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