4、津軽円はマークされる

「え?え?」


絵美と咲夜に引きずられて行く。

前には永遠、後ろには理沙からマークされて逃げられない。


「円……、やっぱり秀頼君に色目使いましたよね」


絵美の力が強すぎて逃げ出せない。

なんか、本当にビクともしないもん……。


「ウチのロックは外せないぞ円」


もう片方抑えている咲夜の力は多分すぐ振り払える。

絵美から逃げ出せないなら咲夜からだけ逃げても意味がないので、されるがままに前の車両ゾーンに到着した。


「私は、昨日決心したんです!」

「何を……?」


永遠が私に……、というよりこの場全員に宣言する。


「私は、『西軍メンバー』に緊急招集を宣言します!」

「え!?緊急招集!?」

「と、永遠!?本気!?」


私と絵美が永遠の緊急招集の発言に驚愕する反応を示す。

緊急招集とは『一生に1度のお願いだから用事があっても来い』とほぼ同意義であるのだから。

グループ内でも緊急招集を使うのは月1までの決まりが存在する。

まだ、5月の初めだというのに、早速そのメンバーの切り札であるカードを永遠は使用したのだ。


「ま、まさか本気か永遠……!?」

「ここに来て緊急招集とは……」

「いや、咲夜と理沙には昨日の段階で言ったじゃないですか!」

「いや、ウチらも盛り上げようと……」


くっ……、和が昨日マスターの喫茶店に行ったというから怪しい気配がしていたが、まさか永遠達と会っていたのは誤算だった……。

偶然とはいえ、緊急招集を使われる事態になるなんて……。


「完全に円は秀頼さんにターゲットロックオンしましたね……。いつも遠くから秀頼さんを見ていて本当に露骨に行動に出るなんて……」

「あんなに秀頼に恋するのはあり得ないと言っていた貴様がコロッと手のひら返ししたのが顰蹙を買ったな円……」


ポンと慰めるように咲夜が私の肩に手を置く。

なんで……。

なんでこんなに明智君モテるの……。

しかも、みんな面倒な子ばかりだし……。


君、あんなにゲームで嫌われてたじゃん!

豊臣君の魅力は前世から知ってたけど、この場にいる子だけがライバルじゃないのは確実におかしいじゃん……!


豊臣くぅん……、助けて……。


「キスとかなんかしてないですか?」

「し、し、してないわよ!」


理沙からジト目で見られる。

少ない言葉数で確実に抉る理沙も案外強敵だ……。


「き、き、キス……」


絵美がボソッと呟いている。

してない!

したいのに、明智君のガードが硬いの!


私の知らない間に、前世のこと割り切られてるのっ!


「まさか、円が秀頼さんをギャップ萌えで落とすのは計算違いでした」

「いや、違うわよ!?」

「その辺は今日の『西軍メンバー』全員で会議をする議題です!楽しみですねー」

「楽しみじゃない!」

「いつもクールな円が慌てている姿、可愛いです。男ならこんな面もあるのか、と興味を釘付けにできますね」

「……」


強すぎじゃない永遠!?

何気に前世の豊臣君の推しヒロインってだけで私は絵美や理沙より強敵じゃないかって認識している。


「円は秀頼さんが好きですか?」

「ち、違うわよ……。たまたまよ……」

「円は秀頼さんが好きですか?」

「だ、だから……。違うわよ?」

「円は秀頼さんが好きですか?」

「あれ?何、このループ……?」

「円は秀頼さんが好きですか?」

「だ、だからそういうんじゃ……」

「円は秀頼さんが好きです」

「…………」

「さりげなく頷きましたね」


何言っても、もう嘘ってバレてる……。

観念して、私は首を振ってしまった……。


「でも、私は最初から円がこうなる気はしてましたよ」

「絵美……」

「1パーセントでも可能性があるなら引き込むのがわたしの秀頼君ですから。そして少なからず円は徐々に秀頼君に惹かれているの気付いてましたから」


絵美がどや顔である。

正論過ぎて何も言えない……。


「絵美の秀頼は絶対違うぞ」

「露骨に自分の男アピールするのは卑怯です!」

「バチバチとわたしに飛び火しても受け止めますから!」


咲夜と理沙に言い掛かりを付けられても真っ直ぐ受け止める絵美。

本人は知らぬだろうけど、逆に明智君は何をすればこんなに可愛い子たちの恋心に火を付けられるのか本当に詳しく知りたい。


ギャルゲーのし過ぎで、日常生活までギャルゲーになってないか本気で疑いはじめる……。


豊臣君は私だけが魅力を知っている感じでライバルは全然居なかったのに、どうしてこうなるの……?


電車が駅のホームにやって来た時には、恋愛の火花が散っていた……。











次回、『悲しみの連鎖を断ち切り』の悪役令嬢が登場……?

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