23、津軽和はプライドを持っている
「おい、ゴミクズ!あの姉者は誰ですか!?」
「呼び捨てはやめて!?ゴミクズじゃ、もう本当にゴミクズだから!?人ですらないから!?」
「ゴミクズに人権があるとでも?」
和は過去一口が悪い。
円の口の悪さが丸々和に入っちゃったみたいな感じである。
「落ち着こうぜ和ちゃん!?ほらほら、このピ●チュウのぬいぐるみなんか大中小のサイズでお父さん、お母さん、娘みたいじゃない!?いやー、癒されるなー!」
「ピ●チュウの子供はピ●ューですよ」
「子供も進化したんだよ!ピカー、ピカピカ!ピカピカピカピカピカピカ!」
「頭沸いてますねぇ……」
「ひでぇ……。そんなに似てないか……?」
渾身のピ●チュウモノマネをしたのに、和は白い目であった……。
前世の友達だった北川とか村井とか野郎の間では似てると有名だったんだぞ!
あ、俺と光秀の声が違うからモノマネしても似ていないのか……?
大失敗である……。
「似てる似てない以前にいきなりピ●チュウのモノマネをはじめてキ●●●染みてました」
「ごめんね!脈絡のないモノマネやめるね!」
前世の友達だった会田とか吉野川とかにはとりあえずピカっとけば爆笑間違いない鉄板ネタだったのに和には通じなかった……。
『てじなーにゃ』も嫌いな辺り、笑いの方向性が違うのかもしれない。
「それで秀頼先輩?あの姉者はなんですか……?気持ち悪いんですけど……?」
「さ、さぁ?2週間前くらいからあんな感じで……。ダークサイドウーマン円が消えてしまって俺も距離感が掴めない……」
「ダークサイドウーマン円……。クソダサな異名を姉者に付けないでください」
とは言いつつも和も円の反応に困っているらしい。
曰く「秀頼先輩が来る直前までは普通だった」とのこと。
「そうですね。じゃあこれを使いましょう」
「スマホ?」
和がスマホを取り出した。
「ヘイシリ、姉の様子が変です」
『優しく見守ってあげましょう。相談された時に力になってあげてください』
「無難な反応っすね。面白みがないっす」
『申し訳ありません。気を付けます』
和のシリを見て絶句した。
これだ!
シリってこういう感じじゃん!
なんで!?
俺のは頭おかしい反応しかしないのになんで和のは普通の反応なの!?
「ちょっと和、どうやったの?」
「何がですか?」
「シリってどうやったら普通の反応返すの?」
「さぁ?」
わけがわかってないみたいなので俺が実践する。
スマホを取り出し、和に見せる。
彼女が頷くと俺が声を出す。
和と全く同じセリフをシリに語りかけてみる。
「ヘイシリ、姉の様子が変です」
『絶対恋してんじゃん。弟は触れないで見て見ぬ振りが優しさってもんだろ』
「……」
なんか違うんだよな……。
咲夜のも変だったけど、俺のはもっと変なんだよ。
「あぁ、そういうことですね。SIMカードによってシリも性格違うんですよ。人間と同じです」
「そうなの!?」
「秀頼先輩のシリも全然正常っすよw面白いしこれで良いじゃないっすかwww」
「バカにしてんじゃん」
和はめっちゃ草生やしてる。
SIMカードで性格変わるとか機種変してもこの生意気なシリには変わらねーのかよ……。
シリのためにSIMカード変えてやろうかな?
「姉者が恋ねぇ……?」
和が俺のシリが発言した言葉を復唱する。
半信半疑な目と態度が露骨に現れている。
「可能性があるとしたら……」
「したら?」
「ひ……ゴミクズ先輩ですね」
「なんで言い直した?」
「姉者と話せる男子なんかあなたとタケル先輩しか居ないっす。二者択一だとしたらつまりあなたっすよ」
「ねえ?なんでゴミクズって呼んだの?そっちが気になって話が頭に入ってこないんだけど?」
「もう良いじゃないですか。先輩は認めなくて良いんでゴミクズは認めてください」
「せめて逆にして!?和から見たら先輩なのは間違いないでしょ!?」
相変わらず毒舌が服着た女である。
「でもタケルって可能性はないのか?」
円が俺に恋ってだけで大爆笑なんだが?
「そもそも秀頼先輩に優しくしているのにタケル先輩が好きなのは関係ないでしょ」
「いや、ほら……。男子に優しくしよう週間とかかもしんねーじゃん」
「そんな全国安全週間みたいなもんはないっす」
俺の言い分をはね除けまくる和。
なんかしっくりこないんだよなぁ……。
「じゃあこうしましょう。姉者の気持ちを探ります」
「どうやって?」
「今から私と秀頼先輩は服を脱ぎます。そして姉者のベッドに行って……」
「却下」
意味を理解した上で和が全部言い終える前に却下した。
円の気持ちを確かめるだけなのに失うものが大きすぎる……。
「えー?」
「なんのブーイングだよ」
「『頼んだらやらせてくれそうな女子ランキング』1位のプライドが……」
「それお前が小学校の時のランキングだろ!?3年も引きずるなよ」
「仕方ありません。秀頼先輩と私が恋人関係、童貞と処女という設定にしましょう」
「マジかよ……」
やるのは決定かよ……。
「私が童貞役で良いですか?」
「俺が童貞なんだよ」
「……言ってて恥ずかしくないんすかwww」
「笑うなや!」
「あんなに女の知り合いたくさん居て童貞なんすかwww」
「煽るな、煽るな」
「大丈夫っす。私がその内童貞もらってあげます」
「そんな憐れみの目を向ける女から童貞を奪われたくない」
「理想たけーなー」
き、キスしたことはあるんだぞ!
童貞卒業も、じ……時間の問題だし……。
「じゃあ早速今から私と秀頼先輩で恋人ごっこをしましょうか。それを姉者の前で演じて反応見ましょう」
「今から!?円来たらで良いじゃん!?」
「ダメです!姉者来る前から恋人ごっこの予行練習です。私が手を叩いた瞬間スタートですよ!」
「わかったよ」
そう言うと和はバチーンと俺の手を叩いてきた。
地味にいてぇ……。
「普通こういうの君が拍手みたいに手を叩いて始めるんじゃねーかな……?なんで俺の手を痛み付けてからスタートなんだよ!?」
「もう、うるさいですね……。私細かくてうるさい人めっちゃ好きです秀頼!」
「好きなのかよ!?」
「ねー?秀頼は?秀頼は私好き?」
「す、スキダヨー」
既に和的に始まっていたらしい。
仕方なく俺は和に合わせることになってしまった。
かなり棒読みであるが当然やる気もないし、わざとである。
しかも和はさりげなく俺を呼び捨てで呼んでるし……。
†
このボケと突っ込みが突然変わりまくる2人のやり取りが好き。
秀頼と和で話を作れるのか不安だったけど、めっちゃ扱いやすい。
1番会話が噛み合う2人かもしれませんね。
次回、恋人ごっこを目撃した円の反応は……?
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