22、津軽円は注意する

あれから家を出て、寄り道せず真っ直ぐに津軽宅のマンションに来ていた。

相変わらずデカイマンションで金持ちなのが窺える。


明智家はおばさんは専業主婦で、叔父さんがなんかよくわからん仕事を2つくらい掛け持ちしている普通の家庭だから金持ちとは程遠い。

原作秀頼は働いてねーけど、ギフトでカツアゲしたり(ギフト使わなくてもカツアゲしてたっぽいが……)、プロのヒモだったから金に困ってない設定だったな……。

社長令嬢やタレント、医者など色んな相手が秀頼に貢いでくれていたらしい。

俺は残念ながら原作秀頼にはなれないが……。

俺をヒモにしてくれる女性なんか居るわけがない。


「う……」


中学時代にはじめて津軽家に来た時は渋々って感じだったのに、何故いきなり円は直接津軽家へ呼び出したんだ……?


ソワソワしてくる。

和辺りの小悪魔ハニートラップとか仕掛ける気じゃねーよな?


「鬼が出るか蛇が出るか……」


円という鬼か、和という蛇か。

俺はおそるおそるインターホンを押し込む。


『はーい!明智君ね!今、オートロック開けるから』


円の声と共に目の前が自動ドアみたいに開き出す。

スゲー、これがオートロックって奴か?


俺、こういうの憧れるんだよなぁ!

十文字家のマンションよりもうワンランク上って感じが素敵。

緊張しながら、オートロックの内側に入り、円の部屋の番号がある5階にエレベーターで上がる。


そのままエレベーターから降りると、マンションの部屋の出入口に津軽円その人が立っていた。

まさか下から5分くらい掛かるとはいえインターホン押してからずっと待ってた?

……円に限ってそりゃねーか。


「おーい、まどかぁ!」

「あっ、明智君!いらっしゃい!さぁ、こっちの部屋よ」


円に先導され、そのまま部屋に入り込む。

スゲー、やっぱりめっちゃキレイな津軽家……。

いつもの友人グループだと他に絵美、タケルと理沙、咲夜、山本の家に行ったことがあるが1番金持ちなんだもんな……。

深森美月の実家とかもスゲー金持ちっぽいがあくまでゲーム知識だし、秀頼なんか縁があるわけねーし……。


3年くらい前、玄関にあった変なタペストリーが別の物になりまた変なタペストリーが貼られている。

円の父親が好きそうなイメージだなぁとか考察する。

すると、円と同じ色した髪の少女が廊下からにゅっと現れる。


「あっ!お久し振りですっ!ゴミ先輩!」

「クズを付けろや、コラ」


いきなりなご挨拶に円の妹である和に対してメンチを切りそうになる。


「はぁ……、ゴミクズとは良い身分ですね秀頼先輩……」

「俺はゴミクズで良い身分なのか……」

「私はそういう身分の低い秀頼先輩好きっすよ」

「ええ……?」


バカにされてんのか、本当に好きなのか相変わらずわけがわからない小悪魔妹の津軽和。


「というわけで改めましてゴミクズ先輩。やっぱり秀頼先輩にはゴミクズがしっくり来ます」

「相変わらず失礼な女だな!」

「そんな……、女だなんて!秀頼先輩が私を狙ってる……」

「久し振りに現れてちょっと調子乗ってんな」


高校入学以来、和と会うのはじめてかもしれない。

タケルの誕生日プレゼント購入以来なので1ヶ月振りくらいに和と顔を合わせた。


「コラ、和ぁ!明智君に対してゴミクズは失礼でしょ」

「え?」

「え?」


優しい声した円の指摘に俺と和は驚いた顔を向ける。

和も一緒に反応したということが、円の反応の異常性を物語っている。


「そもそも姉者が最初にゴミクズと言い出したんじゃ……」

「言ってない」

「え?」


何を言ってんだこの子!?

ガッツリ2週間くらい前まで君にゴミクズって呼ばれてましたけど!?


「明智君は明智君よ」

「…………」

「…………」


少なくとも下ネタですらタケル以上に動じない和がこの円の反応に目を丸くして言葉を失っていた……。

普段の円が魔王であるなら、今の円は女教師みたいに見えてくる。

理沙や咲夜に『円の様子が変!』と訴えてもいつも通りと返ってきていたが、和だけは『円の様子が変!』と訴えると肯定くらいは絶対にしてくれるだろう。


返せっ!

俺たちのダークサイドウーマン円を返してくれっ!


「ぜ、前回同様私の部屋に案内しますよ姉者」

「いや、今日は私の部屋で大丈夫よ和」

「え?そ、そうなんですか……?」

「こっちよ明智君」


円が先頭を歩き部屋までの道を案内してくれる。




『ごめん、純粋にゴミクズを中に入れたくない』




過去、このレベルで嫌われていたのを思い出しながら円に着いて行く。

和と無言で顔を合わせながらお互いがやりにくい顔になっている。


円だけは気にしてないように部屋の前に到着する。


「じゃあ、ちょっとお茶を入れてくるから和とくつろいでて良いわよ」

「あ、あぁ……」

「……」


円はそういって廊下の奥へ進み、和は円の部屋を開けた。

はじめて入った円の部屋は全体的に部屋は片付けられていて、ところどころゲーム機や大小それぞれなピ●チュウのぬいぐるみが3つほど部屋に飾られてあった。


「ゴミクズ先輩、相談の時間です……」

「お、おう……」


和が影のある声を出す。

『あれなんだ?』と顔が物語っている。











きたきたきた!円のターン!



因みに……。

秀頼と和の会話シーン約が80ページ振り。

和の直接の登場シーンが約60ページ振り。


むしろ今まで何やってたんだろ?ってくらい和は登場してませんでした……。




次回、姉の変化に和が……?

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