10、佐々木絵美は寝ぼける

「おーい、起きろ絵美!」

「起きてる……」

「意識がふわっふわしている状態は起きてるって言わないんだよ!?」


目がしょぼしょぼしていた深夜からは考えられないほど、俺の目は冴えきっていた。

絵美は横になったままベッドから離れない。


こうなったらスマホを使うぜ。

『寝起きの悪い人を起こす方法』と検索する。


「冷たい水をぶっかける……、耳元で大音量の目覚まし時計を鳴らす……。アカン、可哀想だ……」


というかこんなことしたら絵美にキレられそうだ。

原作秀頼なら躊躇なくやりそう……。

違う方法はないのか違うページを見ていくと、平和的に解決する方法が見付かった。


「驚くような嘘を言うか……。大喜利大会になってしまいそうだが仕方ないか……」


嘘を付くだけでなく、驚かせないといけないからな……。

難しいぞ……。


「絵美!?見ろよ、1億円だ!宝くじで1億円当たったぞ!?」

「…………知らない親戚とかに気を付けてね」

「お、おう……」


絵美的には1億円が当たった衝撃より、知らない親戚から電話が掛かってくることを気にするらしい……。

むしろ俺が冷や水をぶっかけられた気分だ。


「ほら絵美!?UFOだぞ、UFO!?飛んでる飛んでる!グレーの色したUFOが絵美の自宅に落ちていくぞ!?」

「…………ブラウンのUFOはもうやめて」

「くっ、これでもダメか……。というかブラウンのUFOって何!?」


まるで、なんかを皮肉ったかのようであった。


ついに絵美は俺の毛布をかけてくつろいでいた。

平日が早いぶん、週末などの休日はガッツリ寝るタイプらしい。


くっ、どうやっても絵美が起きない……。

以前の俺ならここで諦めていた。

しかし、咲夜とのスマホ教室で得た知識をあることは絵美は知らないらしい。

そう、シリだ。

超万能のシリさんならこの状況をどうにか出来るはずだ!


「ヘイシリ『寝ている女を起こす方法』」

『起きないとキスするといって脅しましょう』

「それだ!」


流石シリだ!

女が嫌がることをわかっていらっしゃる!

そんなことを言われたら誰だって嫌であろう。


「絵美ちゃん?起きないとキスしちゃうぞ!起きないとキスの罰ゲームだぞぉ?」

「誰が誰にキスですか……?」


どうやらまだ耳と口は動かせるらしい。

目だけはすやすやと眠っていらっしゃるが……。


「俺が絵美にキスするよ?良いのかー?罰ゲームだぞ?今日の絵美ちゃんも可愛いねー?キスして襲っちゃうぞー?」

「どんと来いです!」

「なんで……?」


絵美が寝ぼけていらっしゃる。

ダメだ、シリという最先端科学技術を持ってしても絵美の睡魔はどうしようもないらしい……。


絵美ママ呼んで来ようかな?

あー、マジでどうしよう……?


「はい、秀頼。ファーストキス!ウェルカムキス!」

「…………」


俺を呼び捨てにして、変なスイッチが入った絵美さん。

寝ぼけていて、全然起きる気配がない……。

なぜかキス待ちしていらっしゃる……。

まともな意識はまだ眠っているらしい。


「じゃあ俺がクイズを出題するから正解できなかったらキスをしちゃうからな」

「はい」

「パンはパンでも食べられないパンは?」

「窓ガラス!」

「不正解……。1603年に開いた幕府は?」

「窓ガラス!」

「不正解……。シマウマを英語で?」

「窓ガラス!」

「不正解……。窓+ガラスで?」

「まどか!」

「いや、円は絶対違うだろ……。というかなんで窓ガラスって言わないの……?」

「えー?絵美、難しくてわかんない!酷いよ秀頼君!」

「えー!?」


小学生でも全問正解できるレベルのクイズであったが、絵美の言い分は難しいから正解できないらしい。

可哀想に……。

寝ぼけているのに俺とキスしたらトラウマになるかもしれない。


「じゃあ逆にしようか。クイズに間違ったらキス回避だ」

「わかった!」

「ソ連の正式名称は?」

「ソビエト社会主義共和国連邦!」

「正解……。ずっと笑っている店は?」

薬屋クスリヤ!」

「正解……。ガソリンは危険等級Ⅱ第四類危険物のどこに分類される?」

「第 1 石油類!」

「正解……。あれ?なんで正解しまくるの?」

「えー?絵美簡単過ぎてすぐわかる!酷いよ秀頼君!」


結構難しい問題をチョイスしていたつもりではあったんだが……。


「絵美?起きてる?」

「すぴー……、すぴー……」

「ダメだ、まだ寝ぼけているみたいだ」


絵美の寝顔にどぎまぎしながらどうしようかまた悩ませる。

マジでどうやって絵美ママは絵美を起こしてるんだろ……?


「ねー、キスは?キスまだー?早くー、ひでよりー」

「ねー?本当は起きてない?」

「起きてない」

「起きてないか……」


本人が起きてないと断言するなら起きてないのであろう。

しかし、やけにハッキリした声だ。

こうなったのも全部シリのせいだ。

文句を言い付けてやる。


「おい、シリ?どうしてくれるんですか?この野郎」

『男なら決めろよ!』

「なんだこいつ……」


シリからも煽られる始末。


『眠る姫様にキスして目覚めさせるのが王子様ってもんだろ?』

「いや、明らかにお前が言うことじゃないだろ」


めっちゃフランクな言葉遣いをしてくるシリにイラっとしてくるのであった。










次回、秀頼が絵美にキスをする……?

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