9、明智秀頼は寝返りを打つ
ゴールデンウィークに限らず、連休中というのは怠惰の限りを尽くしてしまう自分が居た。
宿題も終わり、後は次の登校日に備えるだけとなれば毎日ギャルゲーをしまくるに限る。
しかし、やり過ぎるのも毒。
目がしょぼしょぼして、眼球疲労が激しくなりつい睡眠時間を長く取ってしまう。
寝たのが遅かったこともあり、おそらくもう昼前になってしまっているだろう。
起きようかな……?
それとも、もう少し寝てようか……?
とりあえず今の体勢を変えようと寝返りを打つ。
「……ん?」
毛布にしては少し固い塊が手に当たる。
でも暖かくて、柔らかい。
…………こんなのベッドの上に置いてたか?
「…………」
夢だな。
俺はまだ夢の世界にいるらしい。
こないだ俺の妄想ではあったが来栖さんが出て来たみたいに実体のある夢くらいではもう俺は動じない。
ギフトの存在、『悲しみの連鎖を断ち切り』というゲームの住人になる、俺の推しだった宮村永遠がリアルに存在すること、ギフトを配る神様・概念さんの存在、ギフトをシスコンで破るシスコン。
そんな超展開の超常現象を目撃してきた今、ベッドに変な物が置かれた実体のある夢くらいでは動じない。
でも、何が置かれているんだろ?
目を開くのも面倒なので、触って何があるのか当ててみよう。
とりあえず現段階の予想では俺が置いた覚えのない抱き枕と予想している。
少し身体を引きずりまたベッドの上に置かれた物に触ってみる。
「…………ん?」
なんか布がある。
抱き枕で正解か?
しかし、布から少し過ぎると人肌の感触がある。
人肌?
あ、これ人だわ……。
まぁ、夢だしな。
「ん?んー……、ひでよりくん……」
「…………?」
間の抜けた絵美っぽい声が聞こえる。
なんで絵美の声がしたんだ?
それとも、絵美の声優さんの声?
絵美の声優さんって確かデビュー作が佐々木絵美なんだっけ……?
あんまり芽が出ることもなく、全然名前を聞かなかったけど、俺は好きな声だったよ。
もしかしたら、俺が死んだあとに売れっ子になってる可能性もあるけど……。
絵美に思い入れありすぎて声優の鑑だったよ。
『絵美アンチばっかりだったけど、操られていただけで良い子なんです!』って熱く絵美についてSNSで語っていたのは好感度上がってたなぁ……。
思わずフォローしちゃってたもん。
セカンドで絵美がヒロインになれるの楽しみにしてたのにルート没収されたのは嫌な事件だったね……。
「へへー、もぅ……、ひでより君ったらぁ」
「……?」
幸せそうな絵美の声がする。
実体のある夢はあるかもしれないが、声を出す夢ってあるのか?
目を瞑りながら頬を引っ張る。
「あ、痛いわこれ……」
実体のある夢で、声が聞こえる夢で、痛覚のある夢。
もうそれ現実だよ。
…………なんで髪を下ろした絵美がいるの?
恐る恐る目を開けていくと、俺のベッドに横たわる佐々木絵美が幸せそうに眠っているのであった……。
「…………?」
意味がわからなすぎて混乱する。
あれ?俺、絵美と寝たっけ!?
朝チュンどころか、もう昼前……。
「あ、あれ?」
俺、絵美を抱いたんだっけ?
記憶に無さすぎる……。
いつの間に、俺は童貞を卒業していた……?
嫌だよ、記憶に残らない童貞卒業なんて!?
「絵美!?絵美!?絵美ちゃぁぁん!?起きて!?絵美ちゃん!?」
「ん……。おはよ、秀頼君」
絵美の元気も覇気もない、小声の挨拶が聞こえる。
「うん。おはよう」
「ん……。…………秀頼君だ」
「うん。秀頼君だよ。君はこの光景がおかしく感じないかい?」
ぼーっとした絵美が目が点になっている。
久し振りにツインテールではない絵美を見た気がする。
「おかしい……?」
「そうそう、なんかがおかしいよね?」
「……秀頼君が襲ってこないのがおかしいね」
「寝ぼけてやがる……」
絵美の目がまだ細い。
彼女、結構寝起き悪いって絵美ママから言われてるからな……。
本気で、絵美の覚醒を待つしかないらしい……。
「なんでここで寝てるの……?」
「遊びに来たら寝てる秀頼君が悪い……。だから寝てる……」
「えー!?俺が悪いの!?」
理不尽の塊であった……。
†
絵美も最近空気気味でしたが、ようやく絵美回です!
絵美回は存分にイチャイチャしろって言われています!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます