45、黒幕概念

「やぁやぁ、こんにちはみなさん」


部室に全員入室したのを見届けると、白い肌で黒い髪の少女が愉快そうに笑う。

肌が白くて綺麗に見える以外は、特に特徴というものが見当たらない女子生徒であった。

三島の反応を見るに、どうやら彼女が部長のようだ。


「中々面白い人が揃ってますね」


全員の顔を値踏みするように部長は俺から最初に顔を向けてくる。


……なんだ?

この緊張感は?


この部長からはなんとなくだが、はじめて会った気がしない。

それに、心が落ち着かない。

そんな違和感が張り付いている。


「明智秀頼、十文字理沙、十文字タケル、上松ゆりか、佐々木絵美か……。クハハッ、面白いメンバーではないか」


……ん?

今、違和感を徹底的にした。

なぜ、俺たちの一部を知っている?


「おい、ウチの名がないぞ!」

「私の名前も無いわ」

「私も呼ばれてないです!」

「いや、君らは知らん」

「酷い!」


名前が呼ばれてないと声を出したのは咲夜、円、永遠ちゃん。

この共通点を考えるなら……。



ギフトの有無。



なぜ、彼女はギフトを持たない者の名前は知らない?

笑い声といい、まるでこいつは……。


「なぁ、部長さん。あんたの名前を聞いて良いか?」

「…………」


部長が値踏みする目を俺に向ける。


「クハッ」


そして、神と同じ笑い声を上げる。


「クハハハハッ!黒幕概念。概念は概念が名前だ。クハハハハッ」

「ってお前かい!」


おもいっきりエニアじゃねーか!

概念さん、ついに自分で概念を名乗りはじめてしまった……。


「ほう!概念!格好良い名前ではないか!」

「そうであろう、そうであろう」


ゆりかが、真っ先に概念さんの名前にはしゃぎだす。

それを満更でもなさそうな反応を示す概念さん。

……そいつ、全てのギフトの黒幕だぞ?


ゆりかが本来敵を討つべき相手であるが、水を差さずにその姿を見ていた。


「概念さんがこの文芸部を立ち上げたんですよ。それで人数合わせでボクがメンバーに入っています」


そういえば原作でのエニアは学校で起きた事件なんかを当たり前に知っていたが、まさか潜入していたからだったとは……。

原作でも文芸部設定だった三島遥香だが、黒幕概念という生徒が紛れ込んでいるなんて設定知らなかったぞ……。

そもそも三島が文芸部設定なのが死に設定だったからなぁ……。


しかし、もうちょっと名前どうにかしろよ!

黒幕概念ってまんまじゃん!

ラスボスのエニアまんまじゃん!


「ん?」


そこへ三島が俺の近くに立っていた絵美の元へ歩いて来る。

絵美も目が合った時に近付いて来たので警戒している。


「えっと……え?」

「な、なんかしましたか?」


三島が絵美を驚いた顔で見ている。

なんで三島が絵美を見て驚いたのか考えてみたら、そういうことかと気付く。

多分、三島が驚いた理由はこのメンバー内では俺と円しか理解できないと思う。


「彼女は佐々木絵美だ。言わんとしていることはわかるぞ三島」

「あ、あぁ。そうなんですね……。勘違いしそうになりました……。ボクは三島遥香です」

「よ、よろしくお願いします。……三島さん」

「遥香で良いですよ。ボクも絵美さんって呼びたいです」

「う、うん」


ぎこちない感じであるが、絵美と三島が挨拶していた。

それがきっかけであるが、全員の自己紹介をはじめる。


溶け込む概念さん。

みんなと打ち解けていく三島。



みんながこの部の居心地を気に入ってしまい、全員が文芸部へ入部することが決まってしまった……。

そして、全員が連絡先交換をしていた。






『しばらく観察をしよう』


概念さんから1つのラインが届く。

伺う様な目で彼女へ視線を送ると、嘲笑った悪人顔で俺を見ていた。


新しいトラブルの始まりであった……。












ドンドン秀頼君の人生がハードモードになっていきます。

神様という存在が実在するならなんて酷い話でしょうか……。



病弱の代償編完結です!


ずっとシリアスが続いていたので、次章は日常シーン多めでいきます!

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