44、部活動見学

にしても、まさか三島が美月と詠美のみならずヨルとも友達になったなんてな……。

嬉しそうに「毎日が楽しいです!」と語る彼女の顔は輝いていた。


俺と2人っきりでは見せることのなかった表情が、女子と知り合うことであんなに別人みたいに変わるんだから凄いよなぁ……。


しかも、三島の周り友達全員がヒロインっていう状況に、原作キャラクターの元に原作キャラクターが集まるという状況が起こってしまっている。


明智秀頼討伐隊とか作られないか不安で不安で仕方ない状況である。

そんなことは置いておき、俺を悩ませているのは1枚の紙であった。


「入部届けねぇ……」


三島から文芸部に誘われていた。

部活にはハッキリ言って良い思い出がない。

部活という単語だけで肩が疼く気がする。


どうしようかな……?

友達何人か連れてでも良いから見学だけでもと誘われている。


「おっ、秀頼?そのプリントはなんだ?」

「タケル……」


タケルが俺の握っていた紙を目ざとく発見する。

別に隠すほどのものでもないので、まだ何も記入してないプリントをタケルに渡す。


「へー、部活入るの?何部か決まってる?」

「入るかは決めてないけど文芸部に誘われてる」

「なるほどなー」


タケルが入部届けをマジマジ読んでいると、「兄さん、どうかしたの?」と理沙が乱入。

そこから絵美、ゆりか、咲夜(以下略……といつものメンバーが俺の席周りに集まってきた。

呼んでもないのに、あまりにも早すぎる集合にちょっと俺がビビる。

……というか、なんかがおかしい気がする……。


「明智君、文芸部行ってみるの?」

「あ、あぁ……。暇だしちょっと行ってみようかなって……」


円へ返事を返すと咲夜や永遠ちゃんで「そうなんだ」みたいな声が上がる。


「秀頼君が行くならわたしも行こうかな」

「え?」


絵美がそう呟いたのが皮切りであった。


「絵美さんが行くなら私も着いて行こう」

「秀頼や理沙も行くなら俺も行くぜ!」

「というか、どうせみんなで行く流れだろ?大体ウチは予想が付く」

「じゃあみんなで師匠と一緒に文芸部へ付いて行きましょう」

「文芸部は確か下の階ですよ」


理沙、タケル、咲夜、ゆりか、永遠ちゃんとみんなノリノリで文芸部に興味を示していた。


「さっ、明智君!行こっ!」


円がニコッと笑い俺の手を引く。

相変わらず優しい目を向ける円に慣れない……。

一体彼女の身に何が起きたのだろうか……?


「私、部活なんて初めてです」

「ウチも」

「ずっとみんなと行動してるからわたし達部活には縁が無かったですからね」

「我も楽しみです!」


永遠ちゃん、咲夜、絵美、ゆりかは部活見学をするのが楽しそうである。

こんな趣味がバラバラなみんなが固まっているのが奇跡のような気がする。


「うー、部活見学なんてちょっと緊張しますね」

「理沙、そんな時は掌に人って字を書いて飲むんだぞ」

「ありがとう咲夜さん。そんな緊張を和らげる方法があるんですね。人を書くのはサインペンで良いですかね?油性?水性?」

「…………え?」


各自から色々な声がしてくる。


そんなわけで、8人全員で文芸部の部室に向かうことになる。

放課後、この人数で男女混合で移動する連中が珍しいのかチロチロと視線を感じる。

教室から3分ほど歩き、文芸部の部室の出入口を叩くと「はーい」と声がする。


ガラガラとスライドした扉から1人の女の人が出迎える。


「あ!明智さん、こんにちは!」

「こんにちは、三島」


短髪の少女は俺を見ると顔を笑わせたが、その後ろのタケルらに気付き、頭に?を浮かべている。


「えっと……?この人たちは?」

「あぁ、友達。三島が友達誘って来てって言ってただろ?そしたらこれくらいの人が文芸部に興味あるって」

「え?こんなにっ!?」


三島が驚愕する声を上げる。

その反応を見るからに俺が連れて来た人数が予想より2人くらい多かったのかもしれない。

俺も連れて来れて5人ぐらいだと思っていたので、まさか7人も集まるのは予想外である。


「お、多いですね……」


三島が緊張した声を出す。

すると奥から違う女の声がする。


『三島遥香?どうしたー?』

「え、えっと部活見学者がたくさん来ました」

『そうかいそうかい。ならみんな入れてあげな』

「わ、わかりました!明智さん、皆さん、こちらへ」


三島へ案内されて文芸部部室に入って行く。

小さい三島を先頭にして俺たち全員で部室へと入室するのであった。









別サイトにて4年前に公開していた短編ラブコメを投下しました。


タイトルは、

『嫉妬するヒロインを眺めるだけのイチャイチャラブコメ』


3分くらいで読めます。

クズゲスでは書けないくらいにピュアな物語です。


暇なら読んでみてください。


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