24、病弱の代償・克服

ボクが昨日と同じ廃墟に付くと、明智さんがすでに待っていた。

昨日に引き続きボクが遅れて来てしまい申し訳ない。


「お待たせしました、明智さん。こんにちは」

「おー、こんにちは」


時間を潰していたであろうスマホをポケットに仕舞い込みボクに近付いてくる。

「じゃあ、今日もするか」と問われて「はい!」とボクは頷いた。


「ボク、昨日寝る前にも少し練習してギフトの力をちょっとずつ抑えられるようなってきたんです」


ギフト板を明智さんに手渡すと「おー」と言いながら感心していた。

ボクが昨日いっぱい装着していたギフト板を明智さんが使ってるのを見てボクの匂いとか付いてないかとか変なことを考えてしまう。


「そのまま力を凝縮させるイメージをするんだ。基本的にギフトの力は想像力やイメージが凄く大事になってくるんだ」

「な、なるほど……」


明智さんからまたギフト板を受け取り、自分の『エナジードレイン』をイメージで制そうと頭を働かせる。

10分間くらいは、力はそのままであったが、明智さんから矢継ぎ早にされるアドバイスの全部が的を得ていてなんとなくではあるがコントロールをできるようになる。


「三島は覚えるの早いな」

「そ、そうかな……」

「あぁ、教えがいがあって俺も楽しいよ」

「えへへ……。そっか……」


明智さん、ボクなんかと居て楽しいって言ってくれるんだ。

ちょっとずつ休憩を挟みながら何時間かギフトの力を操る特訓が続く。


「明智さんにはどんな友達がいるんですか?」

「あー……、十文字タケルっていうシスコンの奴とか……」

「シスコン……?」

「そっ、シスコン。妹大好きを公言している楽しくて面白い奴だ。俺の1番の親友ってやつ」


明智さんが楽しそうにその十文字さんについて語る。

お互い好き勝手する性格だとか。

遠慮がなくズバズバ言い合う仲とか。


「あとは、絵美とか円とかは三島と仲良くできそうな気はするな」


女の人の名前も上がる。

彼女はいないとは言っていたけど、やっぱりモテているんじゃないかな?というモヤモヤが消えない。


「さっ、もう少しだ。頑張ろうぜ」

「は、はいっ!」


明智さんは途中途中で汗をかいたり、ボクから離れてお茶を飲んだりしていた。

かなり無理をさせてしまっているのは明確だった。




早く、明智さんを苦労から解放させたい。




そんな『想い』を持ってギフトをコントロールしてみる。





「あ……!できた……!」


「え?」と明智さんが漏らす。

ボクの反応に明智さんが興味を持った。


「明智さん!み、見てください!完全にギフトの力を押さえ付けました!」

「ほ、本当か……!?」


明智さんにギフト板を持たせると感心した声を上げる。


「凄いな……。あんなに禍々しく渦巻いていた『エナジードレイン』を完全に消失させた……」

「は、はいっ!」

「よくやったな!」


明智さんが嬉しそうに笑い、ボクの頭を撫でる。

嬉しくて多分ボクは顔がニヤニヤしているだろう。

下を向き、明智さんに顔を見られないようにする。


「明智さんが居なかったらボク、こんな風にギフトをコントロールできなかったです」

「……うん」

「本当に……、本当に嬉しいです……」

「辛かったな……。俺も辛い人生ばっかりだから君が報われるようになって良かったよ」

「あ、ありがとうございます!」


明智さんは優しい顔でボクに笑ってくれる。

「良かった」って何回も口にしてくれる。


「俺は必ず三島ならギフトのコントロールができるって信じてたよ」

「う、嬉しいです!ありがとうございます!」


ボクに信頼を寄せてくれたみたいでくすぐったい。

ボクの『エナジードレイン』で苦しんだだろうに自分の様に喜んでくれる明智さんが好き。


「こ、これでボクはギフトに縛られることはないんですかね……?」

「あぁ。自由にコントロールができるんだろ?」

「はい!」


再び確認のために明智さんへギフト板を手渡す。

それを彼は受けとると、視界をギフト板に透かす。


「じゃあ、『エナジードレイン』を発動してみて」

「はい!」


ギフトが出る感覚はこの2日間、ずっと練習していたからマスターした。

明智さんが「おおっ!」と興奮した声を上げる。


「確かに『エナジードレイン』が三島を守るように発動されているな。……ここから自分の意思でギフトを無効化できるんだろ?」

「はい!見ててください!」


深呼吸をする。

明智さんから教わったことをイメージする。

30秒くらいのタイムログはあるが、そのままギフトが消える感覚を肌に感じる。


「ちゃんと消えてるな!やったな、これでギフトを克服できたな」

「は、……はいっ!これも明智さんのおかげですっ!」

「そ、そんな頭とか下げなくて良いから」


申し訳ないといった感じに謙虚な態度を見せてくる。

本当にいくらお礼をしても、し足りないくらいだ。


「別に俺は三島を助けてないさ。君にきっかけを与えたに過ぎない」

「そ、そんなこと言わないでください!ボク、……本当に……本当に感謝してます……」

「…………そっか。なら良かったな」


くしゃくしゃとする感じに頭を撫でられる。

ボクに兄がいないから、もし兄がボクに存在していたらこんな感じなのかな、とか色々と思ってしまう。


「あー……、俺もそろそろ限界だったから三島がギフトを使いこなせるようになって良かったよ……」


疲れたという感じに頭を抑える明智さん。

とにかく昨日、今日と『エナジードレイン』に当てられて苦しそうだ。


「明智さん、今度何かお礼させてください!」

「え?」

「感謝の気持ちを受け取って欲しいですっ!」

「別にそんなの良いよ。三島に悪いし」


明智さんは本当に悪いという感じの声を上げる。

それでも、ボクは止まらなかった。

彼にボクを見て欲しかった。


「お願いです……。小さい頼みごとを受けるとかそんなので良いので、お礼をさせてください……」

「……そっか。じゃあ、何か考えておくよ」


明智さんが優しそうに笑う。

ボクは明智さんの手を握る。

冷たい手が心地良い。


「本当にありがとうございました……」

「…………おう」


照れくさそうに顔を背ける明智さん。

ふふっ、普段は格好良いのに可愛いとか思っちゃった。


それから、ボクたちは別れた。

自転車に乗りながら色々なことを想像した。


ようやく元の生活に戻れるんだ。

厄介だったギフトも自分で扱えるようにもなった。

嬉しさが込み上げる。




……明智さん。

ボク、君が異性として大好きです。

魅力のない、ボクなんかからそんな気持ちを向けられて厄介かもしれません。

でも、ボクは明智さんが心強いです。


来週からも、ボクと同じ様に接してくれるかな?なんて気持ちが収まらない。

いつか、ボクは明智さんの隣を歩きたいな……。

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