25、病弱の代償・誘い
「ただいまー」
ボクは興奮した気持ちを抑えて帰宅する。
ちょうどボクの目の前でペットとして飼っているネコが横切る。
「おー、ネコ助!久し振りだなー久し振りだなー」
ボクのギフトは動物にまで影響を与えてしまうものであった。
だから極力ペットのネコ助にも触れていなかったのだけど、完全にギフトを遮断している今は触れても影響はなく『にゃあにゃあ』と鳴いている。
「ボクが翻訳するぞ」
『にゃあ』
「なるほど。ペ●シアンのモノマネかこのやろー」
『にゃあにゃあ』
肯定しているのか、否定しているのかはわからないが久し振りにネコ助に触れ合えてちょっと楽しくなってくる。
「いや、ペ●シアンもネコだろ……」
「なんだー、和馬かー。ボクに逆らうのか?ネコ助ミサイルお見舞いするぞ」
「てか大丈夫なのかよ、ネコ助触って」
「うん。ギフトをコントロールできるようになった。今は全然平気だぜっー!ブイッ」
弟の和馬が「え?」と驚く。
今まで5回ぐらい貧血の被害にあった和馬なので、驚いていた。
「ほら、ボクが和馬に近付いても平気だろ?」
「……本当だ。姉貴に近付いても俺全然平気だ……」
「いけっ、ネコ助ミサイルだっ!」
『にゃあー!』
「うわっ、こっち来るなネコ助!?」
「あはははははっ!ネコ助強いなー」
『にゃあ!』
ボクとネコ助のタッグ技『ネコ助ミサイル』で弟と遊んだ。
高校入学してからこんなイタズラとかが全然できなくて楽しくて笑ってしまう。
「遥香?」
「あ、お母さん」
「あんた……、大丈夫なの?」
「うん!ようやくボクはギフトをコントロールできるようになったよ」
もしかしたら『エナジードレイン』を切ったことにより、またボクが病弱に戻るかもしれないけど、それが普段のボクだしね。
周りの人が体調悪くなるくらいなら、ボクが体調悪くするのがあるがままだし、そっちの方が断然良い。
「そうなの?それは良かったわね!」
「うん!本当に色々と迷惑かけてごめんなさい」
お母さんと弟の両方に頭を下げる。
ギフトがあっても、なくても迷惑ばかりの娘で本当に申し訳ない……。
「でも良かったじゃん。ギフト制御できて自由になれたなら!」
「うんっ!本当にようやくボクの時代到来だねっ!」
「…………いや、姉貴の時代なんてそもそも来てない」
「なんですと!?いけっ、ネコ助ミサイル!」
『にゃにゃー!』
「うげっ!?」
弟に跳んでいくネコ助を見て笑う。
ようやく、ボクが望んだ日常が戻ってきたんだなと嬉しくて泣いてしまいそうだ。
明智さんに、本当に感謝しかない。
今朝までは、本当に家族に近寄れず、ネコ助を見ても素通りしなくちゃいけないのが辛かった。
「ネコ助ー!」
『にゃあ!』
久し振りのネコ助のモフモフに癒される。
ようやくボクの日常が帰ってきた、そんな嬉しさに満ちていく。
ーーーーー
『エナジードレイン』の制御が可能になった休み明け。
クラスではまだボクは馴染めなくて本を開いていた。
変な噂はようやく消えて、休んでいたクラスメートも全員復帰した。
しかし、やはり良い顔はされずボクは独りだった。
会えば明智さんと会話するんだけど別のクラスなので中々会えないと思う。
今朝、明智さんを見かけた時は短いツインテールにしてる子や、緑髪の子とコソコソ会話しているのを目撃して、ちょっと落ち込んでいた。
やっぱり明智さんは格好良いからモテるのかなぁ……?
そんなことを考えながら、本を読まずに考え込む。
明智さんと同じクラスだったらもっと近い距離で接することができたのかな?、なんてちょっと明智さんと一緒に歩く彼女らを羨ましく思った。
「ねぇ、ミシマさん」
「え?は、はい。……ミシマさんボクです」
「あはは、『ミシマさんボクです』って返し面白いね」
「め、面目ない……」
テンパって変な言葉で接して笑われてしまったようだ。
ボクのところに2人の女子が声を掛けてきたのだ。
「ほら、詠美が突然声を掛けるから……」
「ごめんごめん。ミシマさん、からかいがいがありそうでつい」
真面目そうな子と親しみやすそうな女子がボクの目の前に立っていた。
ギフトを切っているのはわかっているが、『エナジードレイン』が発動しないかハラハラドキドキだった。
「わたくしは深森美月だ。同じクラスだからわかるか?」
「は、はい……」
異性のボクでも見とれる金髪、口元の黒子。
美人な人でボクの体温が暑くなるのを感じる。
「私は詠美だよ!よろしくねっ!」
こんなボクなんかになんのようだろう?
深森さんたちの狙いがわからないまま、ポカンとしていた。
「いやいや、全然気にしなくて良いよ。私たちはミシマさんの『近寄ると呪われる説』について本当かどうかちょっと探りを入れていてね」
「は、はぁ……」
そんな噂が……。
体力を持っていく『エナジードレイン』がまさか、呪い扱いされていたなんて……。
だから誰も近寄らないはずだ。
「全然問題ないな。みんな偶然同じ時期に体調を崩しただけ、これが真相だな」
「…………え?」
そんな前向きに捉えてくれる人いるの……?
頭を後ろから殴られた衝撃が走りながら深森さんらを見る。
「わたくし達と友達にならないか?」
「余り者同士のボッチ集団だ。仲良くしようよ」
「…………よ、よろしくお願いいたします」
詠美さんが言ったボッチ2人なのかはわからないけど、そんな風に僕を誘ってくれることが嬉しかった。
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