22、病弱の代償・自覚

「じゃあ三島、このギフト板を使ってみろ」

「は、はい……」


「このギフト板を透かして俺を見てみろ」と明智さんから指示される。

言われた通りのことをしてみると、確かに明智さん全体に炎のような形をした薄いオーラを纏っている。


「こ、これがギフトを視覚する感じなんですね!凄い!これが明智さんの言うギフト耐性ってやつですね!」


ボクははじめて見るギフトの形に興奮していた。

確かに波があるとか色々話は聞いたことあったけど、こんな形になっているのは知らなかった。


明智さんは僕の知らないことをたくさん知っている。

凄い、明智さんは頭が良くて格好良い!

ちょっと目付きが怖いけど、ボクに触って無理して本当に優しい……。


なんでボク、こんなに明智さんにドキドキしてるんだろ……?


「じゃあそのままずっと板を付けたままにして」

「はい」


おっと。

明智さんが真面目にボクなんかのために時間を使ってくれているんだ。

ドキドキする感情がなんなのかわからないけど、集中しないと。


「こんな感じですると……」

「う、うわぁぁぁ!凄い!凄いですよ、明智さんっ!」


明智さんを纏っていたギフトのオーラがシャボン玉のように割れて消えた。

ボクみたいな出来損ないと違って自由自在にギフトを扱えるんだ。

凄いなぁ、明智さんは……。


「うっ……」

「あ、明智さんっ!」

「大丈夫……。ギフト耐性を解除させた瞬間一気に『エナジードレイン』を浴びてよろけただけだ……。もうギフト耐性付けたから安心しろ」

「わ、わかりました……」


きつそうに右手で顔を抑えている。


「安心しろ。絶対逃げないから……」

「明智さん……」


なんで、利益もないボクなんかのためにここまで……。

明智さんに迷惑をかけないためにも、ボクも頑張らないと。


「次はギフト板を持って鏡で自分を見てみろ」


学校に通うカバンから小さい鏡を取り出して、ボクに手渡す。

その鏡にボクを映して鏡に覗き込む。


「ひっ……!?」


どす黒いギフトの力が、ボクの周りに渦巻いている。

範囲も半径2メートルくらい伸びている。

こんなギフトの力をボクが常に纏って出歩いていると知り、全身に鳥肌が立つ。

怖い……。

こんなことになるなら、ボクは身体が弱いままで良かった……。

クラスの人から『死神』みたいな目で見られるくらいなら、病弱な身体で良かったのに……。


「気に病むな」

「あ、けち……さん……」

「ギフトの力を制御しよう」

「は、はい!」


明智さんは『エナジードレイン』を気にしないまま、ボクに触れる。


「まずは……、【ギフトを制御できるようにするんだ】」

「?」


明智さんの喉で一瞬強いギフトの流れを感知する。

よくはわからないけど、なんかギフトを使ったのかな……。


「三島?自分のギフトに何か変化あったか?」

「……特に変わりはないですね」

「……やっぱり無理か」


明智さんはそう呟き数秒考える。

ボクの顔を3秒ほどずっと見ている。

うっ……、目付きは悪いけどイケメンな顔を向けられるとボクは恥ずかしい。


「深呼吸をしろ」

「う、うん……。すぅー……、はぁー……」

「そのまま自分が視界に移るギフトの波を押さえ付けるイメージを持つんだ」

「すぅー……、はぁー……」

「焦る必要はない。ゆっくり、ゆっくり。簡単だから」

「あ……!少し波が弱くなりました」

「そうだ、その感覚を覚えるんだ。意識すれば、俺みたいに自由自在にギフトの力をコントロールできるようになる」

「すぅー…………、はぁー……。あ、なんとなくわかりました」


また少しギフトの力が弱まる感覚がある。

凄い……。

ボクが何やってもできなかったことが、明智さんのおかげでできていく感覚が嬉しかった。


「よし。今日は帰るか」

「……え?」


帰る……?

なんでだろ、明智さんとお別れするのが寂しい……。

友達でもなんでもないのに、心臓をぎゅと握られる痛さが走る。


「時間もそろそろ遅いしね。明日の昼くらいかな?ラインで時間帯送るからまたここに来な。俺がまた教えるよ」

「わ、わかりました」


でも、明日も会える。

そう言われた瞬間、心が温かくなる。

明智さんの頼もしさと優しさがボクの心に心地よく入ってくる。

明智さんの動きを視線で追うと、帰る準備をしていたのだが、スマホが何かの通知音が鳴る。


「……おっ?円からライン来てるな」


スマホをいじる明智さんが目に映る。

まどかさん……?

女の人の名前……。


「心配性かよ。大丈夫、大丈夫……」


呟きながらラインの返信をしている。

彼女はいないとは言っていたけど、女の人の名前が明智さんの口から出たのが痛い。


「か、……彼女さん、ですか……?」

「いやいや、普通に小学校からの友達。言葉遣いが悪い子よ」


なんでもない風に言ってのける。


「本当、三島みたいな可愛さを見習って欲しいくらいの奴だよ」

「えっ!?」

「んじゃ、また明日な」


明智さんはそうやって笑って廃墟を出ていく。

か、可愛い……。

明智さんから言われた言葉が離れられない。


ボク……、明智さんが好きになったみたい……。

心臓がバクバクと悲鳴を上げている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る