21、三島遥香は笑う

「うっ……」

「だ、大丈夫ですか……!?」


到着早々、息苦しくなる。

大丈夫か?

俺、タケルやヨルに殺されることなく三島に殺されるんじゃねーかな、と頭に過る。


三島は近寄りたいものの、近付いたら悪化する自覚があるからか近付かない。


ギフト耐性ってなんだよ、この野郎……。

普通に死ぬんじゃねーかな……。

そんなネガティブなことに思考が支配された時だった。



ーーギフトを使用する際の喉に力を注ぐ感覚を喉だけでなく全身に纏うように意識しろ。



そんな言葉が脳に届く。

言われた通りにギフトを使用する直前で止めて、その力を分散させるイメージを作る。


「お……?」


『エナジードレイン』が弱まった気がする。

擬似的な『アンチギフト』になったものか?

……いや、ちょっとずつ体力は奪われているので防御膜といったところ感じだな。

これがギフト耐性ってやつか。

本当にあったんだな。


……お前、秀頼か?


俺が何言っても返事は帰ってこない。

一方通行なのね、ずる賢い。


「大丈夫、俺には『エナジードレイン』の効果は弱いはずだから。キツイ時は言うから堂々としてな」

「明智さん……」

「気にするな三島。ほら、大丈夫だ」


三島の手を握る。

直接触れても平気である。

さっきまで貧血になりそうくらいまでにはやばかったのに、今はちょっと疲労感が残るくらいしかない。


「明智さん……、ごめんなさい」

「謝らなくて良いよ。ギフトが辛いんだろ?わかるよ、俺も同じだから」

「明智さんも、ギフトを……?」

「そんな感じ。俺のギフトなんてどうでも良いから早速ギフトを制御しようか」

「……はい」


三島が顔を赤くしてうつむく。

なんでだろ?と思っていたらまだ手が握られたままであった。

ま、またやってしまっていた……。


絵美や咲夜、最近はゆりかとベタベタしてくる子が多くて、距離感がバグっていた。

そっか、知らない男から肌を触られるとか通報案件だ。


「ご、ごめん……。手握ったままだったね……。恥ずかしかったね……」

「あ……」


俺も三島もお互い赤くなる。


俺は原作をプレイした際は、最初に理沙。

次に三島をプレイ。

俺はとにかく美月と永遠とヨルを早く攻略したくてウズウズしていた。


1周目の理沙はガッツリ腰を据えたプレイをしていたが、2周目以降は既読シーンは全スキップした。

だから真面目にプレイもしてなければ、早く違うヒロインを攻略をしたいウズウズ感のせいで初代でも『病弱の代償』シナリオが1番思い入れがない。


そんな三島遥香であったが、実際に会話し、面識を持つと意外と可愛いな、なんて思ってしまう。

水色の短い髪を気にしたように弄る三島が、女子って感じがして、男心をくすぐる。


「で、でもどうやってギフトを制御するんですか?」

「あぁ。ギフトの力を流れを見るっていう授業が今後入るんだよ。遮光板って覚えてないかな?小学校の時に太陽見る時に使ったと思うけど、三島の学校では使わなかったかな?」

「あぁ!はい、ありましたね。サングラスみたいなやつ」

「遮光板と形が似ているんだけど、これを使えばギフトの気配は誰でも見れるようになるからそれを学校から借りてきた」


本来は学校の教材でまだ配布されていない物であったが、先生にどうしても予習で使いたいと頭を下げた結果貸してくれたものである。

原作の秀頼は勝手に学校の資材からパクったと言っていたが、俺にはその勇気がなかった……。


「そうなんですね。明智さんは物知りです」

「そんなことないよ」


ゆりかならギフトが気配でわかるを豪語していたけど、三島も俺もそんなものを悟る力なんか持ってない。


「ギフト板って呼ばれるんだ。ちょっと三島の姿を見るね」


板を透かして三島を見ると禍々しいギフトの力が渦を巻いている。

神様の力というギフトだが、こんなのもう死神の力だな……。

他者から元気や命を吸い取り、己の生きる力へ変換するギフト、か……。


「あー……、見ただけでやべーや……」

「う……、ごめんなさい。ボクこれから明智さんの指導を頑張りますね」

「うん。俺が付いてる。三島のギフトが制御できるまで俺は見捨てない。だからギフトを制御できるようになるまで俺が側にいるから」


三島にギフト板を渡す。


「教室で友達がいないボクなんかの側にいてくれますか……?」

「三島の側にいるよ。うん、大丈夫。まだギフトで誰も側にいれないだけさ。ギフトが制御できれば友達もできるよ。三島は可愛いから彼氏だってできるさ」

「彼氏も……?」


不安そうな声を出す三島の背中を励ますように背中を叩く。

すると、三島の顔が俺に向く。


「できるさ。自信持てって!『病弱の代償』だなんて思うな!三島のことをギフトとか変な目で見ないで真っ直ぐに可愛いって言ってくれる人は絶対現れるよ」

「で、でもボクなんか……髪型も一人称も男みたいで色気もないし……」

「女が男の気持ちわかるかよ。俺はそうやって女っぽくないっていう三島が逆に可愛いって思ってる」

「か、かわっ……!?」

「ほら、顔赤くて可愛いじゃん」

「っ……!?」


顔を赤くしてじたばたする三島。

なんたってヒロインだよ?

可愛いに決まってる!


タケルだって可愛いって言ってイチャイチャしてたしな。


「あ、明智さんは彼女いますか……?」

「…………いや、いねー」

「そうですか……」


多分三島に今、『モテねーのかよ』『説得力ねー』って思われているはずだ。

気まずくなって顔を反らす。


「あはっ!そっか、明智さん彼女いないんですね!」

「…………」


笑った三島の声が耳に届き心に999のダメージを負う。

そんなにバカにする必要ある?ってくらいに彼氏彼女いない共通点を嬉しそうに笑う三島が楽しそうだった。

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