キスキル=リラに先陣の名誉を


 グレモリイさんたちは、今では『仮称アヒノアム銀河』を詳細に把握しています。


 教団についても、教皇府がある教皇本星、それを防衛する三つの教皇府宇宙要塞、各地に点在する大司教区宇宙要塞の詳細など。

 その昔の男性体の技術で建造されているもので、エデン銀河帝国の科学技術では歯が立たないでしょう。

 もっとも教団もこの技術は知らないようですね。


 セマンゲロフの惑星って、この宇宙要塞で守られていたようですが、ミコさん、まとめてブラックホールへ放り込んだようです。


「まあ『神の星』へ集められた女を運んでいた、この一番近い大司教区宇宙要塞をまずは血祭りにしましょうか」


 リリスさん、そろそろ昔の威風というか、本来の好戦的な所が垣間見え初めています。


「リリス様、先陣の名誉はこのキスキル=リラに賜りたい!」

「そうね、その昔の武勇を再び取り戻しなさい、良いでしょう?アルダトもイドルも、ガエネロンさんも?」


 ガエネロンさんはリリスさんの眷属ではありませんからね。

 グレモリイさんの副官の一人、一応気を遣っているようです。


「リリス様が今回の司令官、異議などございません」


「ありがとう、ではキスキル、因縁深いセマンゲロフの残党どもの屍を、このリリスの為に積み上げよ」

「四万年のふっぷんを晴らして見せましょう」


 『キスキルの宝冠』号が大司教区宇宙要塞に向かって出撃しました。


 『キスキルの宝冠』号の統括人工知能が、

「敵のモグンツィアクム大司教区宇宙要塞です、敵の教団内では三番目の重要拠点です」

 そう、ここは『神の星』、『教皇本星』の次に来る、セマンゲロフ教団の聖地でもあるのです。

 『神の星』に向かうための門といわれているようです。


「私が乗り込む!」

「キスキル=リラ様、それは余りに無謀、まずは雑魚をかたずけて、宇宙要塞を無力化の後、陸戦ロボット部隊を率いて乗り込むべきです!」

「つまらない!」

「つまらなくてもです!」


「全シェルターステーションのビーム砲、宇宙要塞の機関部に射撃、これを無力化せよ」

 統括人工知能が勝手に命令しています。


「天山宇宙戦闘艇を全機出せ!敵要塞の防衛部隊を撃破せよ!」

 天山宇宙戦闘艇というのは、標準ステーションなどで製造される無人戦闘艇を改良したものです。


 円盤型をしておりますが、中央部分が進行方向の車輪というべきものです。

 本当に小さくて、直径五メートル厚さは二メートル、中央部に動力源があり、視認出来る範囲といっても最大五百メートルですが反重力推進航法で移動します。


 円盤の端には、前後に百八十度稼働するビーム砲が八門。

 その間に小さい補助動力機関が埋め込まれており、メイン動力が破損したりしてもビーム砲は戦闘可能というわけです。


 なぜこのようになっているかといえば、動力源の中央部を爆弾として射出できるのです。

 すると動けなくなるので、ビーム砲を後方へ撃ち、慣性航行して移動するわけです。

 

 四門を移動用にしても残りの四門で戦闘を継続するわけです。

 

 小型の戦術コンピューターが積み込まれており、四機編隊の『シュヴァルム』という戦い方を採用しています。

 遥か昔のドイツ空軍の戦い方を踏襲しているようです。


 ネットワークの特徴としての連結機能も有しており、『シュヴァルム』体制で直列につながった形で格納されているのです。

 どのタイプのシェルターステーションにも、この天山宇宙戦闘艇は一個中隊十六機を格納しています。


 今回、この機体のお試しもあるのでしょうね、『キスキルの宝冠』号八隻分の百二十八機が出撃したのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る