第四章 キスキル=リラの物語 武人の誉れ

可愛い特使


 キスキル=リラは戦うことしか出来ない女、自分ではそう思っている。

 事実、片手を無くしながら四万年の歳月を、巨大な爬虫類の惑星でリリスを守り通し、無事に帰還させたのは彼女の功績と云える。

 そして戦う女に天職というべき戦場が用意された。


 キスキル=リラは武勲をあげ、多くの不幸な少女や女たちを解放……

 でも、三軍統合司令部は皆蒼い顔をすることに……


     * * * * *


 帝国からの公式の返事がついに届きました。



 ……海賊からの押収された書類は確かに受領した、その経費は当然支払おう、また私個人としての感謝をここに述べさせていただく。

 しかしセマンゲロフ教の解体は拒絶させていただく、その為、戦闘状態に陥るのも致し方ないと判断する……


 ……セマンゲロフ教は帝国の病巣とは認識している、しかしここで国教を放棄はできない、どうしてもといわれるなら貴国が勝手になされると良いだろう……

 ……我らは行く末を願い、神の星に『祈りの言葉を届ける』、神をないがしろにする者どもには神罰が下るだろう……

      エデン銀河帝国皇帝、ヴァルマン二世  


 

「公式な返事の割に、物が挟まった文面ですね……」

「どうも帝国の中には教会勢力がかなりのさばっているのでは?」

 グレモリイさんとリリスさんのオルゴール通信の会話です。


「神の星に『祈りの言葉を届ける』ね……ひょっとして……本音を送ってくるのでは?」

「それですね、神の星という以上、元のセマンゲロフ星域でしょう!」


 グレモリイさん、セマンゲロフ・ショート・ワープポイントを防衛している統合ミリタリーヤードの人工知能に、次のように命令したのです。

「セマンゲロフ・ショート・ワープポイントに近づく物は全て拿捕しなさい!」

 

 案の定……無人?有人宇宙船が飛来……拿捕したのです。

 そしてリンダウ・ステーションまで曳航してきました。

 リリスさんが聞き取りするためです。

 

 一人乗りの有人宇宙船、というより何かの船の脱出艇のようです。

 パイロットが冷凍冬眠していました。


 冷凍冬眠装置をそのまま病院船の駒鳥型に運び込んで、

「解凍しなさい」

 念のためにリリスさんの眷属の中で一番の武闘派、キスキル=リラさんが警護がてら側にいます。


 解凍が完了すると、装置の蓋が開き、中には少女が眠っていました。


「おやまあ、可愛らしい娘さんだこと」

「まあ、お茶でも飲みながら、目覚めるのを待つしか無いわね、その前にグレモリイさんに報告しましょう」


 で、グレモリイさんに報告、するとイザナミさんに報告するグレモリイさん、そして長々とキスキル=リラさんも交えて、オルゴール通信による『井戸端会議』なんてしていました。

 内容は……かなりシビアな話しのようです。


 一時間ほどたって少女が目覚めたのです。


「ここは?神の星に着いたのですか?」

「神の星というのがセマンゲロフ星なら、その通りです」


「私はエデン銀河帝国皇帝ヴァルマン二世の娘、アンメイと申します」

「貴女は?」


「これは失礼、私はネットワークレイルロード、ヨミミリタリー所属のバロネテス、リリス」

「私はネットワークレイルロード、ヨミミリタリー所属のデイム(女ナイト)、キスキル=リラ」

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