三軍統合司令官の困惑


「それにしても帝国貴族というのは腐っているな……ポートロイヤルの奴隷市場も酷い物だが、トルトゥーガのあの惨状は……」

「快楽のために、首を絞めて女を殺すのか……いたぶって殺していたのもかなりある、無惨な死体が山ほどあった……」


 帝国貴族は腐っているようです。

 帝国の内乱は帝国の大貴族、大領主たちと、皇帝と彼に忠誠を誓う伯爵以下の貴族との戦い……


 余りの大貴族達の横暴ぶりに、憤りを感じていた若い貴族と、権力の強化を目指す皇帝が結びつき、大貴族を粛正しようと軍を動員、反発した大貴族が反乱を起こしたようです。

 結果は皇帝直属の帝国軍の圧勝、まともな訓練も受けていない、お飾りのような貴族の軍など、簡単に打ち破られた訳です。


 悪いけどシュヴァーベン公爵などは、この腐った大貴族の一員のようです。

 トルトゥーガから押収された顧客名簿に名前があり、女の後始末代もかなりの額が請求されていました。

 勿論、バーデン辺境伯の名前もありました。


「これでエデン帝国皇帝が正義となるわね……とにかく三軍統合司令官に報告するしかないわね……ミコ様のご命令は遂行いたしましたとね」


 この報告を受けて、イシスさん以下、三軍統合司令部の面々は困惑しました。


「どうした物か……そもそもアナーヒターは帝国の社会体制を嫌っているし、なにより男性体の名残が濃厚に残っている帝国、少なくともセマンゲロフ教は消滅させねばならない……」

 そこへヴィーナスさん、つまりミコさんであり、アナーヒターさんがやって来て云ったのです。


「イシス姉さん、難しいことはないわよ♪押収した書類を帝国に送りつければいいわけよ、そしてね、セマンゲロフ教の解体と海賊退治の経費を要求するのよ♪」

「きっと拒絶するわよ、その後は予定どおり、向こうがやらかしてくれれば、グレモリイさんに任せれば良いだけよ♪イザナミさん、構わないでしょう♪」


 グレモリイさんにイザナミさんから訓電がはいります。

 取りあえず、『仮称アヒノアム銀河』以外の探査は中止、全戦力を集結の後、帝国へこのたび押収した書類を提供し、併せてセマンゲロフ教の解体と海賊退治の経費を要求せよ、とね。


「司令部はいよいよやる気のようね、セマンゲロフ教の解体は多分拒否されるわ、何といっても国教ですからね」

「それを見越しての戦力集中……ミコ様が乗り出さなくて幸いね……」


 リリスさんが、

「なぜ、ミコ様なの?」


「リリス様、ミコ様って、お一人でも『宇宙』を破壊出来るお力をお持ちなのですよ」

「そんなに……」

「リリス様は知らないでしょうが、先の戦争の時は凄かったのですよ、あの男性体の上位支配種族をお一人で叩きのめしたのですから……大怪我を負われましたが、それもやっと回復なされましたし……」


 そんな話しをしていましたが、アヒノアム・ステーションに『ガエネロンの宝冠』号、『リリスの宝冠』号、『アルダトの宝冠』号、『イドルの宝冠』号、『キスキル=リラの宝冠』号の五隻が集結、今後の方針を通達していました。


 そして、リリスさんを遠征司令官に、ガエネロンさんを幕僚長、リリスさんの三人の眷属が先発部隊、そして五人はリンダウ・ステーションに待機、電文の返事次第で、その後の行動をグレモリイさんが判断、指示することになったのです。


 そして帝国へ、通信が送られました。

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