簡易鉄道で十分


 事実、帝国はセマンゲロフの惑星が消滅したので、百隻ほどで編成された探査隊を派遣してきました。

 このセマンゲロフの惑星の近く、四万光年離れた位置には隣の不規則銀河への簡易鉄道のショートワープポイントがあるのです。


 まあね、あるべき聖なる惑星の場所の隣に、訳の分からない宇宙船群がいるわけです。

 しかも聖なる惑星系は影も形もありません。


 物も言わずに反物質魚雷なんてものを撃ってきました。

 まあ、お返しにボンバーを叩きつけたようですね。

 探査隊の艦艇の内、七十隻ほどスクラップになりましたね。

 

「探査隊の諸君、私はシュヴァーベン公爵妃ベルクト、敵対しなければ、当方も攻撃はしない」

「ここを防衛している勢力は『ネットワーク』と呼ばれる組織で、太古の昔、セマンゲロフ神が世界を創造されたときよりも、さらに昔の神がおつくりになられた組織である」


「セマンゲロフ神は、この神の御怒りにふれ誅殺された、そして汚れた惑星系は消滅した、これ以上敵対しなければ、お怒りに触れることもない」

「この銀河は帝国の領域だが、このあたりについては、引き下がられたい、私も元は帝国の人間、悪いことは云わない」


 シュヴァーベン公爵妃ベルクトさんの説得を受け、残存した艦艇を引き連れ、探査隊は引き上げていきました。


 ここのショートワープポイントには標準簡易ステーションが配置されています。

 円筒形の内部面積は約三.一平方メートル、日本で一番小さい村ぐらいですかね。


 三千人の定住用の平屋住居が用意されていますが、人口密度として四千人/平方キロメートル、一万二千名は無理なく収容できます。

 この場合、五階建て、エレベーターが追加されますのでね、高さが一五メートルまで許されるのです。


 一応は貨物鉄道になりますので、ステーション区画には、簡易宿泊施設として五十人収容できるカプセルホテルのレイルロード・ベッド・ウイッチがあります。


 ベッド・ウイッチは女性用ですが、男性用の十人収容できるカプセルホテル、レイルロード・ベッド・ウィザードも用意されていますが、満室の場合女性もとまれます。


 レイルロード・オートレストランと呼ばれる自動販売機だけのレストラン、スペース・シャワールーム、無料公衆トイレもあります。


 住居地区には、小さい初級学校、中級学校、診療所……小さい村ぐらいのインフラ設備も整っています。

 基本的には女性だけ、男はレイルロードの旅人だけです。


 元シュヴァーベン公爵妃ベルクトさんが、この『村』の村長さん。

 三百人の女性もここに住んでおられます。


 このショートワープポイントがある場所の近くの星系には、居住可能な無人の惑星があったのです。

 『リンダウ』と命名、ドイツ南部のボーデン湖に浮かぶ島の名前から取ったようです。

 そのためこの標準簡易ステーションも『リンダウ・ステーション』となり、宇宙往還機が二つの『リンダウ』を繋いでいます。

 『リンダウ』のベルクト村長が開拓の指揮もとっておられるのです。


 その頃、アヒノアム・ステーション付近でのんびりとしていたグレモリイさんが、

「その後の帝国の状況はどうなっていますか?」

 帝国方面の最前線、惑星リリス近くに浮かぶ、『アルダトの宝冠』号のアルダト・リリーさんに通信をしています。


「ヘルメスジュニアでは、帝国本星の状況は分かりませんが、探知できる帝国の惑星には動員令が出ているようです」

「ふーん、力の差が分かっていると思うけど……数で押し切るつもりのようね、なんとも愚かな……」

   

「マイクロ・インフェニティ・カーゴがあるから、問題はないでしょうが、ケチらずにどしどし戦力増強をしてもよいわよ♪」

「ミリタリーヤードの防衛戦隊で十分かと……」


「簡易鉄道で十分というわけね……とにかく仕掛けてきたら容赦なく叩きのめしてやりなさい♪」 

 

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