試験航海は未知の宇宙のギャラクシー


 未踏宇宙はソロモン宇宙と仮に呼ぶことになり、大規模拡張シェルターステーションは、エジプトのファラオの娘でソロモンの妻の名前を取った『ナアマ』号と名付けられました。


「『ナアマ』号、警備ステーション群の指示する泊地座標に到着、警備ステーション、本艦周囲に正四面体に展開、警備ステーション群の牽引ビームに拘束されました」

「警備ステーション群司令部より通信、ただいまよりダークフローに進出、ソロモン宇宙予定座標に転移します」


 一瞬で『ナアマ』号と警備ステーション群は、ソロモン宇宙のワームポイントステーション予定地点に浮かんでいました。 


「二基のヘルメスジュニアを起動せよ!近傍に宇宙船などはいるか!」

「現在、探知されません」


「マイクロ・インフェニティ・カーゴオプションステーションは小型建造ドッグオプションステーションとリンク結合、専用転送ルート確立、その上で防衛戦隊を二セット製造せよ」


「警備ステーション群司令部に通信、一個防衛戦隊を貴司令部に移管、本艦はただいまより試験航海にでる」

「警備ステーション群司令部より返信、『ナアマ号の任務の成功を祈る』、です」


 『ナアマ』号は残りの一個防衛戦隊を率いて、未踏査宇宙領域に踏み込んだのです。


「三軍統合司令部からの想定座標へ向かえ」

「ヘルメスジュニア、全周広域探査、何物も見逃すな!」


 三軍統合司令部から、サミジナ艦隊の戦闘指揮艦ヘルメス級がとらえた通信の推定座標が渡されていますので、とにかくその座標へ向かったのです。


「進路左上前方に、テレビ電波のようなものを出している惑星発見」

「宇宙を行き交いしている船はいるか?」

「星系内には一隻も認められません」

「そうか、その受信した電波は記録しておけ」


「グレモリイ艦長、コーヒーか紅茶でもお作りしましょうか?」 

 移動艦長室付のトゥイーニー・オートマトンが気を利かしてくれました。


「そうだな、紅茶にしていただこうか」

 ミルクティーなんて飲んで、ほっとしているグレモリイさんです。


 指定の座標までは二日の行程です。

 その間、次から次に知的生命体が住む惑星が、ヘルメスジュニアの全周広域探査にかかります。


「星系を出る知的生命体はいないようだな……」

「予定座標まで後一日、そろそろ防備を固める方が良さそうだな」


「マイクロ・インフェニティ・カーゴオプションステーションは防衛戦隊を四セット製造せよ」


 グレモリイさん、前からある防衛戦隊を含めて五つの戦隊を、『ナアマ』号を中心に正八面体に配置したのです。


「転移攻撃に気をつけろ、そろそろ危ないかもしれんからな」

「副長、どう思う?」

 グレモリイさんも統括移動型人工知能を副長としているようです。


「敵の『御使い』の推定能力を考えると、そろそろ探知されるかも知れません」

「『最後の審判戦争』の戦訓では、我軍は変幻自在のサイボーグ戦闘艇に苦戦したとあります」

「ガリレイ衛星での男性体遺物との戦闘でもサイボーグが使われていました、しかしこのときはサイボーグ戦闘艇は登場しなかった」

「従って、今回はそれは無いかと考えられますが、転移攻撃、またはそれによるサイボーグの自爆攻撃、突撃艦は考えられます」


「突撃艦の転移攻撃か……」


「念のために各シェルターステーションに、小型陸戦ロボットを配置すべきと考えます」

「同意する、そのようにしてくれ」


 万全の準備をしていたグレモリイさんでした。

 

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