【10】第2話 : 静かなメイドさん 〈2〉

「アンタは…警察本部の!」

「アクアディーテよ。

 覚えて頂けたのね。 光栄コウエイだわ!」

 ─サントリオ聖堂の一件イツケンで見かけた、あの女だ!

 彼女はスカートをまくし上げ、内股ウチモモカクしておいたジュウを引き出した。

「動くな!」

 伯爵に銃口ジュウコウカマえる。

「うぅぅぅん…オマエは、2ヶ月くらい前から、我が邸宅テイタクに住み込んだメイドの一人だったな…。

 何やら、コソコソぎ回ってるフシは有ったが、皇国警察だったとは恐れいった」

「デスマスク伯爵。当初トウショは、貴方アナタ獅皇兵団ヴァンセントとの関係証拠カンケイショウコサグタメ潜入捜査センニュウソウサしていたけれど…実際には、この邸宅テイタクヤミが、より深い事が判明したわ!」

「フン! 今夜のウタゲが終わり次第、オマエも始末するつもりでいたが…まあイイサ…手間がハブけるな。 この場で、まとめて血祭りに上げてやる」

 伯爵の上品な横顔が、より冷酷レイコク微笑ホホエんだ。

「それはどうかしら! 今、貴方アナタ能力ジーニアを解明した所よ!」

 彼女の左手には、ドラキュラでも寝ていそうな、小さなヒツギツカまれていた。

「伯爵の様な間接的攻撃能力クロス・ジーニアは、ある特定ので攻撃を起動する。その原則が、何なのか分から無い限り、コチラも迂闊ウカツに手が出せ無いわ!」

 テノヒラサイズのヒツギには、何か入っている様で、しきりにカタカタと中で動いていた。

「始めは、この部屋のを吸うと、原則下に置かれてしまうものだと推測スイソクしたけれど…それは違うわね。 私だけは、ずっと始めから自由に動けるもの」

 アクアディーテが、伯爵のテーブルに置かれているワインを指差ユビサす。

「それよ! 伯爵の能力ジーニアは、ワイン…いいえ! 正確には、彼は手にれた液体エキタイを自由にアヤツる事が出来るのよ」

 そうか! 今夜の目撃証言が始まる前に、伯爵が来客一人一人に、感謝を込めてワインをいで回っていた…。

 俺等オレラスデに、その時から攻撃を受けていたのか!

「体内に入った液体は、全身のニューロン(神経細胞)の中一つ一つにモグり込み、完全に化学シナプスのON、OFFを支配する事で、末梢マッショウ神経系の自由をウバってしまう!」

 ─この女! 流石サスガは、元・法医学博士…。

 適格な診断シンダンだ!

「お見事ですよ! アクアディーテさん!

 私の能力ジーニア『リヴァイアサン』を良く見破りましたね。

 リヴァイアサンを標的の体内に入れる事をとし、そのノチに自由をウバう!

 貴女アナタ分析ブンセキ力は大したものだ…。 最早モハヤ能力ジーニアと言っても過言カゴンではありませんな」

 伯爵は、小さな拍手ハクシュ敬意ケイイを表した。

「私の能力ジーニア『ブギーマン・ブルース』はが、その能力なの!

 今まで、二人の体内に入っていた、伯爵のリヴァイアサンは、このヒツギの中に閉じ込めてあるわ。

 ヒツギトビラは、私のハダ何人ナンビトであろうと、開く事は出来ないのよ!」

『ガタン!』

 自由になったタマちゃんが、突然、窓際マドギワへと飛びウツった。

「それじゃあ~アチキは、ここいらで、オサラバさせて頂くニャー!

 まったく、命あっての物種モノダネでありんすよ!

 それに、皇国警察の姉さんが現れたちまったら、ツカまる前に、サッサと逃げるが勝ちニャー!」

『バリーン!!!』

 言うが早いか、勢い良く窓を蹴破ケヤブり、一瞬の身のこなしでヤミの中へと消えてしまった。

 伯爵が、スッとを動かした。

「動くなと警告ケイコクしたはずよ!」

 アクアディーテは一歩、み込むと強い口調で伯爵をセイした。

「 あの泥棒猫ドロボウネコは気付かなかった様だが…ヤツのウシろポケットに、リヴァイアサンを一つ、シノばせてやった。

 これで、何処ドコまでも追跡ツイセキが可能だ!」

 伯爵は、そうツブヤくと満足げにコチラに向き直し、オーケストラの指揮シキを取る様に両手を大きく突き出した。

「それ以上、勝手に動くと本当につわよ!」

 アクアディーテが、再び警告ケイコクする。

ハナっから、は少しも動くつもりは御座ゴザいませんよ。 マドモアゼル!」

 すると、伯爵によって窒息チッソク死させられ、今まで床や椅子の上で、うつブしていた招待客ショウタイキャク5人が、ゾンビのゴトく立ち上がり、アクアディーテにオソいかかって来た。

 スデ死人シビトである事は、承知ショウチしていたはずだが、民間人に銃を向ける事を一瞬、躊躇タメラってしまったのだろう…彼女は、両腕をツカまれ、背後から羽交ハガジめにされてしまう。

 俺も応戦したいのだが、先程サキホド気道閉鎖キドウヘイサクにより、イマだ呼吸がトトノわず、ほんの指先にさえ、電流を集める事が出来ない状態だったのだ。

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