【08】第2話 : 酔っぱらいのオッサン〈3〉

 話は、こうである。

 タマちゃんは、今から3ヶ月程前に、例のゴト依頼主イライヌシせられた形で、闇稼ギルドを引き受けると、伯爵邸ハクシャクテイから、ある重要な書類をヌスみ出していた。

 そのオドロくべき書類内容によると、デスマスク伯爵は、あろう事かパウル神父と結託ケッタクし、内密ナイミツ孤児院コジイン子等コラ闇取引ヤミトリヒキけ、多額の金を得ていたのである。

 多くの子は10歳以下の孤児ミナシゴ魔物モンスターであったが、特筆トクシツすべきは、エルフの女の子を一人当たり4000:GOLDという、とんでもない高額コウガクで取引していた事だった。

 つまり、孤児院コジインは名ばかりで、実際は孤児ミナシゴを集め、監禁カンキンするタメカクれみのに過ぎなかったのだ。

「盗み出した書類を依頼主イライヌシワタせば、闇稼ギルドは完了。 それに伯爵がと分かれば、次は遠慮エンリョウ無しに、アチキの本領発揮ホンリョウハッキでありんすよ!」

 タマちゃんはエデン皇国コウコクの人達に、義賊ギゾクと口々にウワサされている。

 それはツネに、悪人の大金持ちだけを盗みのターゲットにし、大半の金は貧しい者達の玄関先ゲンカンクサキに、くれてやっていたからだ。

「そこでアチキは、本格的に大金を盗んでやるつもりで、伯爵邸ハクシャクテイへ再び忍びんだんでありんすが、偶然グウゼンにも、当日の事件現場を目撃してしまったんだニャ~」

 タマちゃんは、嵐の夜をネラ伯爵邸ハクシャクテイの応接間へと忍び込む。

 足音を立てずカベづたいに、沿ソって行くと、指先がカクトビラのスイッチにれてしまう。開くそれは、クローゼット程の小部屋であった。

 中には美術絵画ビジュツカイガや宝石、金のボウなど金目カネメの物が、所狭トコロセマしとナラんでいた。

 ほくそみながらも、フッと馬のイナナきに気付き、雨にタタかれるマドへと視線シセンを移す。

 それは聖衣ローブマトったパウル神父が、子供達を乗せたホロ馬車をアヤツり、伯爵邸ハクシャクテイを勢い良く走り去る所であった。

 ─稲光イナビカリヤミを、一瞬イッシュンとらえる。

 すると、馬車のく手をサエギるかの様に、ヨロイの兵士が現れた。

 獅皇兵団ヴァンセントだ!

 仮面でオオわれているタメ、顔は確認出来ないが、骨格と、その俊敏シュンビンな動きにより、かなり卓越タクエツした戦闘セントウ家と推測スイソクされる。

 パウル神父は腰のピストルで数発スウハツ応戦するが、ヴァンセントの左拳ヒダリコブシから突き出したソードで、全て、ハラわれてしまう。

 銃弾ジュウダンめ直す時間が無かったのは、スデに彼の胸から背中へとソードが、突き通されていたタメだった。

 ヴァンセントは、素早く手綱タヅナウバうとパウル神父を残し、何処イズコへと馬車と共に消え去ってしまった。

 神父の苦しげな断末魔ダンマツマを耳にした伯爵は、明かりの消えた応接間にオドんで来た。

 ぐに危険キケンサッしたタマちゃんは、思わず手に触れたハコツカみ、暖炉ダンロ煙突エントツへとモグむ。

 アブなく伯爵に足をツカまれるが、お得意の化け猫のツメで『シャッ!』と一払ヒトハラいすると、たまらず彼は手を離した。

 そのスキ煙突エントツツタい、雷雨の中へとけ出たのだった。





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