【07】第2話 : 酔っぱらいのオッサン〈2〉

「おうおうおう! ダマってりゃあ~知った様な口をくじゃないかさぁ!」

 突然、オッサンが、った勢いで啖呵タンカを切った。

「マドモアゼルだの、子猫さんだの、随分ズイブンと、をバカにしておくれだね!」

「オヤァ? これは失礼いたしました。

 先日、明かりの消えた、この部屋で、お見かけした印象を語ったまでで…」

 伯爵が丁寧テイネイアヤマる。

「なんでぇ!

 そりゃあいけねぇさぁ!

 アチキに面倒メントウ向かって、見当違ケントウチげぇな態度をされちゃあよう…。

 仕方シカタねえっ!」

 カッ!と目を見開いて発する。

 「知らざぁ~言ってぇ~

 聞かせやしょ~う!」

 今度は、歌舞伎カブキ役者のセリフ回しで、見えを切った。

「エデン皇国コウコクヒロしと言えど、オチャメでキュートな大泥棒オオドロボウホカねぇ!

 石川玉三郎イシカワタマサブロウこと、

 プリタマちゃんとは、アチキの事さぁっ!!」

『ボシュッ!!!』とケムりに包まれると、中からアイいらしいネコ耳娘ミミムスメが現れた。

妖怪ヨウカイ眷族ケンゾクバネコ様だいっ!

 娘は娘でも、だっ!

 勘違カンチガいするんじゃねぇよ!

 この唐変木トウヘンボクめっ!」

 姿、形はどう見ても、女のにしか見えない。しかも、イマトラわれの状況ジョウキョウなのに、威勢イセイだけは良い。

 空気読めんのか…コイツ。



 ─いや…待てっ! 分かったぞ!

 何で、伯爵ハクシャクが、パウル神父の聖衣ローブの色にコダワっていたかを!

 つまり、生物の眼球ガンキュウの中には2種類の光受容ヒカリジュヨウ細胞と呼ばれる物が存在する。

 一つ目は桿体カンタイ細胞と言われる、明暗を受容する細胞である。

 タマちゃんの様に、ネコ科のモンスターは、この細胞が多いタメに、暗い応接間からでも外の事件現場を、ハッキリと目撃出来たと推測スイソクされるのだ。

 そして2つ目の細胞が、錐体スイタイ細胞であり、色を判断する細胞である。

 この細胞は、逆にネコ科のモンスターには極端キョクタンに少ない。

 すると世の中の色は、3原色とされる赤色、緑色、青色で構成されている。

 だが、タマちゃんには黄色~青色までのセマい色の範囲内ハンイナイでしか、色の識別シキベツ判断が出来ない。

 その範囲ハンイ以外の色は、全て黒く見えてしまう。

 例えるなら、俺たちが赤色したウマそうな肉を見ても、タマちゃんには焼きげだ黒い肉のカタマリにしか見えないのだ。

 つまり、赤色は実際には、に見えるのである。

 だから伯爵は、事件当日、応接間で見かけた化け猫の泥棒ドロボウを探し出すタメに、あんな質問を用意していた訳なのだ。

「しかし…。 何んでそこまで、必死に伯爵自ハクシャクミズカら探し出す必要が有ったんだ?

 皇国警察にタノめば良い事だ…。

 玉三郎、君は、このデスマスク伯爵邸ハクシャクテイから何を盗み出したんだ?」

 タマちゃんの大きな黒いヒトミが、キュッとシボられた。

「兄さん! くぞ聞いておくんなまし!」

 女のの様な可愛カワイ声音コワネサケんだ。



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