【06】第2話 : 酔っぱらいのオッサン〈1〉
「では…。 ムッシュ。
お待たせ致しました。
デスマスク
事件当日の日時。場所。天候。犯人の数、
そして最後に、パウル神父が着用していた
─すると。
「黒だニャア~!」
鼻を赤く染め、ほろ
この50歳はトックに過ぎた、
─しかしよう…。
『ニャア~!』は、ネェだろう!
イイ
俺は、殺意さえ感じながら薄毛の後頭部を
「黒、黒、黒、黒、黒、くろぉぉぉぉぉっ!」
「そうだよ! タマちゃんが見た
「
違ぁぁう!
再び、
─マズイぞっ!
オッサンの答えは、不正解だ!
それに、タマちゃんってオッサンの事かぁ!?
伯爵が人差し指を立てながら、ゆっくりと独り言の様に話し出す。
「人は、
だが! 皆さん!
事実と真実は、全く別物と言う事を!」
部屋の中をコツコツと往復する。
「今夜、お集まりの方々には、
が…しかしながら、私に真実を語って下さる方が、ここまでは一人もいらっしゃいません。
オッサンの前で、ピタリと
「つまり…私が望んでいるのは、事実では無く、真実なのです。
伯爵は、何が言いたいんだ…。
「パウル神父の
これは事実です。
この色を、お答えして頂いた方は皆、事件当日、現場を目撃されたのでしょう。
しかし、私の予想では、必ず黒と答えて下さる方が、
伯爵の上品な横顔が、冷たく
「ムッシュ。
そう…今、皆さんと居る 、この応接間で!」
─このオッサンが事件当日、この部屋に?
何の話だよ!
「ムッシュ。
イヤ…。
マドモアゼルと言い直した方が、よろしいでしょうね。
おかしいぞっ! 何を言ってるだ!
伯爵は、このオッサンに、マドモアゼルだの、子猫さんだの、気がおかしくなっちまったのか?
だが俺は、酔っぱらいの男から
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