【12】第1話 : 伏見12年・ウイスキー〈2〉
「いかがです? ローハイドさん。
「ぐぅぅぅぅう」
彼は、これには一気に
「あっそうそう! この酵素菌の名称は、
俺は、近くのメモ用紙に
ローハイドさんは、首を引っ込め大きな両手で、器用に開いて確認している。
始めは、意味が分からなかった様子だが、直ぐに、コチラの
「フン!
と彼は吐き捨てたが、
俺は『R-1:681-D酵素菌』と命名した。
『R-1:35-O酵母菌』の名称を知った時、ローハイドさんの奥さんへの愛情が深く感じられた
つまり、『アールワン:サンゴ・ォ酵母菌』に対し『アールワン:ローハイ・ド酵素菌』とした訳だ。
この
二人の夫婦愛とも重なり、我ながら良い命名だと思った。
すると、大柄なローハイドさんの横をスルリと
「せんせぇ~! 悪いけんども、今回の診察料も、コレで
続けて、ドワーフのハンブルク
「おいどんは、この森のキノコで、お願いするでごわす!」
と、一礼をする。
それを聞いたルージュが、少し困った様子を見せたが、直ぐに
「大丈夫ですよ。先生にお伝えしておきます」とだけ返すと、二人は
「オイ! ヤマザキ。 何だ! 診察料金をどうして取らないんだ!」
不思議そうに、ローハイドさんが問う。
「ああ…ウチの診療所は、貧しい方々からは
俺は、笑って答えた。
彼は、
「こんな、貧乏診療所なんて見切りをつけて、早く、家に帰って来い! ルージュ!」
ローハイドさんは、そう言い残すと出口のドアが
外に
俺とルージュはビックリして、お互いの顔を見合った。
数日あとの昼食時、ルージュが、やたらと機嫌が良い。
俺がリクエストした、彼女お得意料理グリフォンの卵オムライスを、鼻歌まじりで支度している。
ちなみに、ルージュは料理が趣味なのだ。
─たまに
味は
─ご機嫌様の理由を聞いてみた。
ルージュの話によると、赤字続きのヤマザキ診療所を何とか改善すべく、半年以上前から製薬会社と薬の値段交渉を単独で行っていたそうなのだ。
しかし、一向に値段は下げてもらえず、悩んでいた所、本日、突然に営業担当者から連絡があり『今までの半額以下で
「これで、二ヶ月ぶりに、お給料が
と、ルージュが
当診療所の会計も、ルージュが
「でも、何で突然、前ぶれも無く、お薬の値段を下げて頂けたのでしょうか? ヤマザキ先生?」
「う~ん…。 何でだろうなぁ…俺にも、サッパリ…」
指先で、
「ああっ!」
ルージュが思い当たる様で、大声を上げる。
「そう言えば…営業担当の男性…。私の足をジロジロ見る事があったじゃないですか!
「う…うん…まっ…まぁ…そうかも知れない…かなぁ…うぅぅん…」
俺は、ピンク色した
「あらやだ! ヤマザキ先生まで、そんな目で見るんですか! 本当に男の人達ってイヤラシいんだからっ!」
「……」
彼女は、いつもの様に、ドカドカと床を踏みならして食器を下げに行った。
─ウチを担当している『シンゲン薬品工業』は、確か…スモーキー&カンパニーの
もしや…会長のローハイドさんの
いや…それ以外、考えられない。
あまりにも突然で、一方的な企業側からの
間違い無い! ローハイドさんだ!
「何だよ! サタンみたいなオッカナイ顔して、意外に
俺も上機嫌で
「そうだ! 2000:GOLDもの大金が入った事だし、リザ・ブーの店に行って、ちょっと、
「今夜も、お早い、ご出勤だこと!」
いつもの通りに彼女は、
「リザ・ブー! 今夜は、飲みに来た訳じゃ無くて、頼み事があって足を運んだんだ」
「あら
俺は、チタとの約束を思い出し、
だが、人気の商品なだけに中々うまく入手出来ず、結局リザ・ブーに1本、分けてもらう考えに行き着いたのだった。
「貴重なウイスキーだと言う事は、重々承知の上だが、そこの所、
「ああ…何だい? そんな事なら店で、数本ストックしてあるから、お安い御用だわ。何なら1本、タダで差し上げてもよろしいわよ」
リザ・ブーも、今夜は上機嫌だ。
「オイオイ! 冗談だろ! 高価な伏見12年・ウイスキーだぞ! タダとは夢のようだ!」
俺は、
「もちろん! 一つ条件が有るわぁ!」
彼女が、
─ほら来やがった…
だから、魔女には気を
「この
リザ・ブーは
「チッ! そんなコッターと思ったぜ! 話が
確かに、ローハイドさんが倒れた日に、俺は、彼の提案から無理やり店の全員に、酒を
─完全に忘れていた。
俺は、引ったくる様にして彼女の手から、領収書を受け取る。
「えぇ…ナニナニ…。
お酒の代金 : 伏見12年・ウイスキー×300杯=1800:GOLD…ォ!!
スモーキー&カンパニー銀行によるツケの立て
合計…2000:GOLDだぁ!!」
─やっぱり
あのオッサン。
…サタンだ。
第1話 : スモーキー&カンパニー 〈 END 〉
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