【11】第1話 : 伏見12年・ウイスキー〈1〉
「ヤマザキ~! 出てコイ! ヤブ医者~!」
午前中から、我が診療所は
「ちょ! ちょっと…ローハイドさん! 先生は今、患者さんを診察中なので困ります!」
ルージュが、彼を
「キサマは、ヤブ医者どころか、ボッタクリ医者かぁっ!」
そろそろ、ローハイドさんが来る頃だと思っていたが…
─こんなにも早々の来院とは…。
俺は、いったん診察の手を止めて、受付へと足を運んだ。
すると、待合室から小さな受付窓口いっぱいに顔を突き出し、口から炎を吹き出さんばかりに怒鳴っている。
「
「なっ! 何のツモリだ! この治療費の請求書わぁ! 2000:GOLDなんて、とんでもなく高額じゃないかっ! ボッタクリ医者め!
もはや、小窓ごと壁をぶち破りそうな
「まあまあ、落ち着いて聞いて下さい。ローハイドさん…。 そもそも、治療費は診察した医師が、独自に決められるのを御存知ですよね」
「そんな事は、ワシだって知っておる! しかしだなぁ! この治療費の金額は、いくら何でも高すぎ…」
と、彼が言いかけた所を、俺が手で制した。
「もちろん、患者さんに、
「では…聞こうじゃないかっ! そのボッタクリ医者の説明とやらを!」
俺は、当然と言った態度で話し出す。
「まずは、先日の緊急手術費に1000:GOLDを頂きます。 エデン皇国でも指折り企業の会長さんの命が、この程度の
「フン! それが
太い首が
「後の1000:GOLDは、
「ナニ? 特許料だぁ! 何で、キサマなんかにワシが、そんな大金を払わなくてはならんのだ!」
赤く大きな目が、ギロリと
「ローハイドさん。
「ああ…確かに。何でキサマが、その事を…」
自分は、キサブローさんの主治医である事を
加えて、
「他でも無い、キサブローさんが話したのなら
そう言い
むしろ、その事実を
「また、その登頂の帰り
「そっそうだ…! だが、その二つの
彼は
「問題はそこなんですよ!
ローハイドさん!」
俺は、順を追って説明する。
まず、
「それは…つ…つまり…『R-1:35-O
「ええ。どうやら、ゴブリン・フジ頂上の井戸の底だけに生息する、特有の
その菌の大きな
と同時に、水は白く
「元、
「なるほど…。
だが…もう一つ、ウイスキー
「ええ。その菌が今回、
ローハイドさんが
俺が予想した通り、麦の実から
「何だと! 硫黄が
ウイスキー醸造の研究者で有り、専門家であれば
「と言う事は…ワシの体の中で…」
「
俺は事前に、この二つの菌に
麦から検出された酵素菌は、村の
本来は、麦の中の硫黄が
これによって、酵素菌が麦のデンプン質を糖質に変化させ、続けて酵母菌が、その糖分をアルコールへと
この酵母菌も、先の酵素菌が変化させた、糖質だけにしか反応しない。
この二つの菌は
それだけに、この菌の組み合わせを発見する事が、
「私も手術時に、ローハイドさんから
つまり、ローハイドさんの胃の中で、このカップル菌は、
もっとも、胃を七つ持つ
彼は自身の七つの胃を通し、一週間、時間を
「つまり、
「ワシの胃から、アルコールが
彼は、自身の腹をゆっくり
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