【09】第1話 : ノース・ビレッジ〈4〉
「キサブロー様! ようこそ、
玄関内にて、二列に並んだメイド達が
客間に通され、
「キサブローさんは、お酒はイケル方でしたよね」
彼は、そう言うとウイスキーの
「ローハイドさん…。こりゃあ貴重な、
「何を、おっしゃいますか! キサブローさん。もったいないだなんて
彼は、手でメイドに指示を伝え、オードブルを用意させた。
─あぁ…。
ローハイドさん。
カマンベールチーズの上に、キャビアとミミズの
「さすがに、ミミズの
頭を
─うぅぅん。
ワシは、ウイスキーをロックで、オードブルを
それは、
そこからは
村を追い出された後の、ローハイドさん一家は、各地を転々とする生活を
彼は、動かん左脚を引き
二人の娘達も、そんな両親の
「おかしな言い方なんですが…キサブローさん…。あの頃の一番貧乏で苦しかった時期が、今現在の生活よりズッと
彼は、肩で
そして3年前に、自社の
「じゃが…ローハイドさんが事業で大いに成功された事は、ワシかて
「えぇ…その事、自体は喜ばしのですが…。今の私には…一番…大切な…」
急に声を
「うぅぅん…。そう言えば奥さん…サンゴさんは
ワシは、
「あぁ…
と、グランドピアノの上に
「けんども…小さな写真が一つ…あるだけ…じゃ…が?」
「そうなんです…。彼女は…サンゴは、1年前に、
彼女の病名は、
この
それ
残念ながら、サンゴさんも全身に転移後で
もっとも、通常の
そして自社の、スモーキー&カンパニーの株価が
「しかし、サンゴは賢聖術による治療を、
「いったい…そりゃ、どう言った訳なんじゃぁ?」
「えぇ…それは…今までに
「そうは言うても…命には代えられんじゃてぇ…」
「全くキサブローさんの、おっしゃる通りで…私も何度も彼女を説得しましたが、今後の会社の事業展開を考えたら、今が一番、資金が必要な時だと言って、聞き入れてはもらえませんでした…」
彼は、
その
「では、
ウイスキーは、同じ年に仕込んだウイスキー
そこで、サンゴさんは、
ワシは、
「無理を押した研究が、サンゴさんの
「ハイ…。私はウイスキーに関しては素人も同然でして…加えて、アルコールに対して、アレルギーを持っていますので、研究その物も変わってやれない状況でした…」
ローハイドさんは、大きな両手で自分の
「サンゴは、こうとも言ってました…。『ウイスキーは、100年の時間を
それは、ウイスキーの
「なるほど…100年かぁ…。サンゴさんの言う通りじゃのう…」
「
「大変な覚悟を決めておったんじゃなぁ…。中々、
「自分自身の
彼は、再びウイスキーを
サンゴさんが
「じゃあ、
「えぇ…。でも正確には、半分解明出来ただけで、もう一つ重要な『
ローハイドさんは、彼女の写真を
「サンゴは、亡くなる
彼は大きな体を
『カラッ!』
─ワシの手の中で、小さく氷の溶ける音がした。
「ローハイドさん! それは違うだよ!」
彼が、
「ワシは
彼女は、賢聖術を受けなかったら亡くなった訳じゃ
病気がもたらす肉体的、精神的な苦しみを、むしろ生きる希望に変えてしまう
つまり、
ゆっくり、
「誰しも、自身の生は自分で責任を取らんとイカン。当然の
だからのうローハイドさん…。奥さんの死は、
大粒の涙を流す彼は、深々と何度も
そんなローハイドさんを見たのは、初めてじゃった。
─胸に、つかえてたモンが取れたんじゃろう…。
ワシは、ピアノから見つめるサンゴさんに
─
『ポロン…!』
彼女が笑っただ。
ワシは、それを一口に飲みほした。
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