【16】第1話 : 太古の森〈4〉

 直ぐに、ティラノサウルスが現れた。

 こちら二人が、バイクから降りて、ジッとしている為に、チャンスと見たのだろうか。

 クルった様に突進して来る。

 すると俺の前で、片膝カタヒザを着くゼンが、左右片手で、両脇の大木にトルゴを飛ばし付け、最後に自分の胸辺りで一つに合わせた。

 狭い道幅ミチハバかる、ゴールテープの様だ。

 俺の右手はスデに、ガントレット(手袋形の武具)を、はめた状態となっており、敵をムカつ。

 このガントレットは、鱗状ウロコジョウの物であるが、俺が手に多くの電撃を集中すると自然と皮膚ヒフが変形し現れる現象なのだ。

 ─あの日からだ…。

 あの忌々イマイマしい、からだ…。

「勝負は一瞬だ! 外せば、俺達が確実にられる! イイナ! ゼン!」

「分かってらぁ! まだ、お前なんかと心中する気なんかネェぜ!」

「けっ! その意気だ!」

 ヤツとの距離が20m…10m…5m…。

 ここで、大口を開けたまま、俺達に飛びかって来た。

「今だ!

 アタシの『スリング・ショット』!!」

 ゼンが叫ぶと同時に。

「行くぜ!

 俺の『サンダー・ボルト』!!」

 ゼンの、スリング・ショットに向かい、右手のガントレットのコブシを激しく打ち付ける。

 すると、電撃が流れるトルゴみ付たティラノサウルスは、激しい電気ショックを受けたまま、スリング・ショットの弾性ダンセイエネルギーによって、鉄球のゴトく後方へ飛ばされた。

『ヴァグゴゴゴゴ!』

 ヤツは、最期サイゴ雄叫オタケびを上げる。

「やったぜ! ヤブザキ! アンニャロー!本当にになっちまった! ピクリとも動かネェ!!」

 ゼンが、肉食恐竜の丸焼きを確認する。

「やったな! ゼン! 子供達もこれで安心していいぞ!」

 ガントレットは、自然に元の右手に戻る。

 俺達は、先を急いだ。

 太古の森の出口に到着すると、その先はケワしいガケとなっていた。そこで、ゼンの機転で、レオパルドン・バイクの逆噴射ギヤクフンシャ装置を使い、問題無くりる事に成功する。

 この崖が、ゴブリン村の裏山ウラヤマであり、ここさえ下れば一気に、け込める。

 ノース・ビレッジまで直ぐそこだ。



「ゼンネェちゃん! ここだよ! ここ! ここがオイラの家だよ! 」

 ケンボーが指さす家は、からブき屋根のオモムキのある建物だった。

『キキキキィィィイ』

 バイクが、土を跳ね上げながら止まる。

 シロは、案の定、まだ到着はしていない。

 今ごろ、正規ルートで、マウント・フェニックスをノボっている途中だろう。

 腕のスソを上げて、ゼンが確認する。

「アタシの『J - SHOCK』腕時計によると…18分47秒だ! 約束してた時間より1分13秒早く到着したぜ! 我ながらいい仕事すんじゃないかぁ…。!」

「ゼン姉ちゃん! 本当にありがとう。 スッゴく格好よかった!」

「ケンボーこそ! ティラノサウルスに、一発イッパツ喰らわせちまうなんて、最高にCOOL(クール)だったぜぇ!」

 俺が、肩をかばいながら進み出た。

「ゼン! すまなかった…金にも成らない厄介事ヤッカイゴトに巻き込んじまって…」

 そう、ゼンにアヤマると、ダマって自分の制服のスカーフを抜き取り、ケガした左肩へ、三角巾サンカクキンにしてシバってくれた。

アヤマるこたねぇよ…。 アタシが勝手にした事さっ。 普通に『ありがとう』でいいんじゃねぇのか?」

「すま……いや…ありがとう…ゼン」

「アタシの仕事はここまでだ。早いとこ、爺さんてやんなよ」

 そう言うと、ゼンは俺達に背中を向けて、独りライターに火を着けた。






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