【09】第1話 : サウス・シルバーナ〈2〉
「先生~!」
「どうした…ブリオちゃん?」
俺は声の方へ視線を移した。
ジュースを買うには少々時間が掛かってはいたが…。
「先生! この子が建物の中を迷ってたみたいだったから連れて来てあげたの」
「この子じゃナイヤイ! ケンタローって名前がチャンとあんだい!」
「あぁ…ケンボーじゃないか!」
「先生! ヤマザキ先生だ!」
緊張が解けたのか、大声で叫ぶ。
「ヤブザキ。お前、このガキンチョ知り合いか?」
「おお知ってるとも。ゴブリン村の
「ゴブリン村からだと…ケンボーとか言う君は、
「違うヤイ! オイラ、一人で来たんだい! おとーちゃん、おかーちゃんは仕事で居なかったし、
黒いコードバン
「どこで拾ったんだい?」
ゼンが聞く。
「拾ったのは、今日の昼、村の入口だよ。それで中身を確認したら、ローハイドさんの名刺がたくさん入ってたから、きっと村に、二日間前に来た時に落としたんだよ。オイラ、前にローハイドさんから、お駄賃もらった事が有って、それでこの財布を覚えてたんだ」
─俺は確かに、二日間前ローハイド氏が、ゴブリン村に訪れていた話を聞いていた。
「ケンボーが言うとり、この財布はローハイドさんの物で間違い無いと思う。俺に心当たりがあるんだ」
「よし、分かった。ケンボー偉いぞ! あんな遠くから、一人でサウス・シルバーナにまで来るなんて! よし! アタシが、ご両親にケンボーを
「おねぇさん、優しいなぁ! オイラ将来、おねぇさんみたいな、女の人と結婚出来たら、いいなぁ!」
反応速度0.8秒で、ゼンが振り向く。
「てってめぇ~! 今、何て言った~っ!
もう一度言ってみろ~っ!」
ビビりながら、ケンボーが答える
「おねぇさんみたいな、女の人と結婚…」
「おい! おい! 聞いたか! ヤブザキ! 結婚だとよ、結婚! かぁ~あ! ませたガキンチョだねぇ…。 年上の女を口説こうとしてやがる!」
─別にそう言う意味じゃ無いと思うぞ。ゼン。
「バ…バッ…バッキャロー! 子供だからって大人をからかうんじゃねぇ~よ! ケンボー! ジュース飲むか? ホレ! 好きなの買ってきな!」
顔を真っ赤にしながら、小銭を渡す。
─子供相手に、
『カッカッカッ…カッ…カッ!』
「おっ! 来やがった! 来やがった!」
ゼンが
「カクのヤツ。異常に時間だけは正確なんだよなぁ…毎日、夕方6時ピッタリに来やがんだよ」
「こ~んにぃ~ちわぁ~!」
両手を前に出し、大きく
「『こんばんは』だろっ! いつも言ってんじゃねぇかぁ…」
「だって、ゼン・パイセン! 私~ぃ。 日中の太陽の下に出たら、燃えて死んじゃうじゃないですかぁ~。 『こんにちは~とか、おはようございま~す』とか、
彼女の名前は『カク』。
20代前半の可愛い女の子だ。左右の頭に作った
「それによう! 勝手に警察の制服を自分好みにリフォームすんなよな! ブリブリのプリーツスカートにしちまってんじゃねぇかぁ」
「だってぇ~パイセン~。制服のタイトスカート、全然、可愛くないじゃないですかぁ~。それにぃ、パンツのラインも
「将来の夢だって? 何言ってんだよ! お前! 一度死んでるくせに、将来も何もあったもんじゃねぇよ!」
カクは、ゼンの言う通り、
「もう~パイセ~ン! 意地悪、言わないで下さいよう~。イケズ~イケズ~。イケズのパイセェ~ン!」
カクは、ゼンの首にしがみつき、
「やっ
「パイセン! パイセン! カクは、大好きなパイセンから離れませんよう~」
まったく、
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