第2話 悲しいのなら
そして、私はカノンの自宅へ招かれたたのだが…。
「汚いな…。」
カノンの屋敷はゴミ屋敷というほどではないが、大分散らかっていた。足の踏み場はあるが、住みたいかと言われたらそれは憚られるようなレベルだ。
「全く…。今から掃除を手伝ってやるから少し待ってろ。」
そう言い私は眩い光に包まれると、その体の形を変化させ…。気づくと、そこには竜の姿ではなく、人間の男性が立っていた。
「え!?どうなってんの!?」
「言い忘れていたが、私の能力は命竜の名の通り。 生物の形状を変化させることができる。覚えてお
け。」
「そうなんだね!じゃ、早速掃除しよっか!」
…屋敷が広い上に、そこら中に物が散乱していた為、全部片付けて掃除するのに丸1日掛かった…。
しかもだ。夕食をカノンは用意してくれたが、作ってくれたのに言う台詞では無いのだが、これがまぁ、酷かった。ハンバーグを作ってくれたようなのだが、まず真っ暗に焦げていた。それだけならまぁ、良いのだが…。とても塩辛かった上に、なんと中が生焼けだった。いったいどんな焼き方をしたらこうなるのか。しかも、それをカノンは美味しそうに食べていた。生活力が全く無い事は自覚していないらしい。
でも、何故か一つだけ整理整頓された部屋があった。それをカノンに聞いたところ、親が使っていた部屋だと言っていた。カノンはその部屋の物を見て昔の事を思い出したのか少しだけ泣いていた。そして聞いた。
「悲しい時って、泣いても良いんだっけ…?」
村から追放されたという事を考えると、弱音を吐く事は出来なかったのかもしれない、、
「あぁ、勿論だ。」
私はそう答えると、カノンを優しく抱きしめた。 カノンは今まで溜まっていた物を吐き出すかのように泣いていた。
暫くするとカノンは涙の跡が残ったままの顔を上げて、笑顔を見せて言った。
「ごめんね。やっぱり笑ってた方がお母さんとお父さんも幸せだもんね!」
夜は更けて、カノンは両親との思い出を楽しそうに話していた。無理に作った笑顔なのか、本心からの笑顔なのか。それは私には分からなかったが、誰かと話せる事によって、満足げな表情のカノンが微笑ましく見えた。
話を一頻り終えて、そのまま机に突っ伏したカノンを部屋へ運んでベッドへ寝かせると、私は外へ出て竜の姿に戻り、寝ることにした。
「おやすみ。」
カノンと空に浮かぶ綺麗な月に呟きながら。
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