第1話 命竜との契約
「…森がまた枯れてる…」
少し外に出ていたカノンは
彼女は、竜と人との共存を目指していたのだが、それが国家に対する反逆とされ住んでた町からを追放された。
幸いにも遠く離れた山奥にはカノンと両親がかなり前に使っていた屋敷が取り残されており、そこに住む事は出来た。食料に関しても周辺には森や川もあり困らなかった。
…それでも、自然のバランスが崩れた影響か、最近森は枯れ、川の水も濁っている。
これでは世界の崩壊まで時間の問題なのは、誰の目が見ても明らかだ。
そして森の奥の方へ入ると…
一頭の、白い竜がいた。
神々しくも怪我をして弱っているそれは、カノンに気付くと、そちらをじっと見た。
そして竜の胸の辺りを見ると…
「酷い怪我…大丈夫ですか?」
カノンは駆け寄って応急処置をしようとする。
「…私を恨んでないのか?」
ロガは質問を無視して言った。それもその筈である。今時竜が見つかったら、子供達は怯えて隠れ、大人達は竜を何としてでも殺そうとする。
「…恨んでもないし、怖くもない。私は、竜ともう一度平和に暮らしたいから」
「変わった女だ。…それは本当なのか?」
「本当だよ。昔ね、私は竜に命を助けてもらった事があるの。」
「そうか。実はな、私も人と一緒にまた暮らしたいんだ。…人と暮らしたいと願っただけで、もと住んでいた場所を追放され、このザマだ。」
「私もだよ。私も竜ともう一度暮らしたいだけで町から追い出されたの。」
「お前もなのか…。似たもの同士だな。」
「そうね。でも、それだと貴方も変わってるって事になっちゃうけど」
「よせ、
「ふふっ。ねぇ、一ついい事を思いついたの。」
「ん?なんだ?」
「私と契約を交わしてさ、もう一度竜と人が共存できる世界、作ってみない?」
「…本気で言っているのか?」
「…私ね、お父さんとお母さん、竜との戦争で死んじゃったんだ…。それでさ、もう一度また一緒に共存出来たら、こんなに悲しむ事もないかなって…。」
「そうだったのか。でも、お前にその覚悟はあるのか?」
「…うん。本当にあるって言えばそれは嘘かもしれない。でも…このままだとどっちも死んじゃう。」
「そうか…。やはり面白い女だ。気に入った。よし、今、ここに契約を結ぼう…手を出せ。」
そう言われるとカノンは左手を差し出した。
ロガの胸にある
その瞬間光の玉は弾けて消え、カノンの左手の甲に、
「これにて契約を結んだものとする。そういえば、名前を聞いていなかったな。」
「カノン…カノン・スペクトラム」
「成る程、カノンというのか。よし、カノン。これからよろしく頼む。」
「うん…よろしくね」
そう言うと人間と竜は、それぞれの手と爪で、小さい握手を交わし、人と竜の共存の為の大きな一歩を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます