第2話

いうものがあって、歳の近い若手社員が教育係兼メンター(相談役)となり新入社員の面倒を見るようになっている。


 新入社員に対して教育係は仕事を教えるだけじゃなく、プライベートなことでも相談にのったりして仲良くなり、職場の働きやすさに貢献しなければならない。


 しかも半年間はほぼ一緒に行動し、新卒が仕事を覚えられないのは教育係の責任になる。


 正直、若手社員が引き受けるには結構、重めな役割だと思う。




「あ、あの、片岡要かたおかかなめです。よろしくお願いします」


東条沙耶とうじょうさやです。よろしくね」




 私が片岡くんと出会ったのは、入社式の当日だった。


 みんな初々しい感じだったが、彼は一段と初々しかった。新社会人というより、新高校生と言われても信じてしまいそうだ。


 背は私よりもちょっとだけ高く、肌が白くて頬にそばかすが見える。短く切りそろえられた髪が蛍光灯の光に透け、白い地肌と相まってふんわりとした印象を与えた。




「大学では何かサークルに入っていたの?」


「あ、はい。一人旅サークルに入っていました」


「一人旅サークル?」




 旅行サークルならわかるが、一人旅サークルって何だろう。




「はい。一人旅をしてレポートにまとめ、サークルで発表するんです」


「へえ、なかなか変わったサークルだね。活動はそれだけ? 一人旅以外にサークルのメンバーと旅行に行ったりはしないの?」


「はい、それだけです。集団行動が苦手なもので……」




 まだ入社式当日なのに、先輩社員に対して正直すぎる。


 でも初対面の印象は悪くなかった。誠実そうでよくも悪くも今どきの子って感じだ。まあ私と2つしか違わないのだけど。


 私は教育係になったのははじめてだったけど、去年も新卒に仕事を教えていたし、学生時代からテニスをやっていたので後輩に教えることには慣れているつもりでいた。


 しかしここまで物覚えが悪いとは……。

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