第17話
食事を終えて早々にレストランを出た。
まだ待ってる人達も沢山いたし、長居はできないからな。
「さて、次どうする?」
「あ、それなんだけど」
と、鈴乃が手を上げた。
「すまない。この後少し用事があってね。今日はここで失礼させてもらうよ」
「え、用事?」
はて、鈴乃の用事ってなんだろうか。
こっちに来てから、鈴乃が1人で外出することはなかったと思うけど……。
と、鈴乃が夢葉を連れて少し離れ、何やら小声で話し始めた。
「ゆめ……今日……すまなか……ふたりき……」
「えっ、ええええっ!? そ、そん……いいの……は……?」
「な、なんのこと……私はホントに偶然……」
んー? なんだ? なんの話しをしてるんだ?
二人の奇行に首を傾げていると、話が終わったのか戻ってきた。
「何を話してたんだ?」
「いや、男は獣だから気を付けてって話をしただけだよ」
「おい」
「冗談さ」
そんなにこやかに嘘つくなよ。マジかと思ったじゃないか。
鈴乃にジト目を向けていると、夢葉が鈴乃の後ろに隠れているのに気付いた。
「夢葉?」
「んぇっ!? な、何かな……?」
モジモジ。ソワソワ。
おい、本当に何を吹き込んだ。
「正吾、夢葉を頼むよ。君は男の子なんだから、エスコートしてあげてね」
「言われなくてもわかってるさ。女性は卵を扱うように、な」
鈴乃は肩を竦め、「じゃあまた」と手を振って去っていった。
去り際まで爽やかでかっこいい奴だな。
「それじゃ、俺達も行くか」
「そっ、そっ……そう、だね……!」
さっきまで楽しげだったのに、二人きりになった途端カチコチになってしまった。
マジで何を吹き込みやがった……仕方ない。
「夢葉、楽しい所行こう」
「た、楽しいところ……?」
「ああ。そこならリラックスできて、俺も夢葉も楽しめる場所がある」
ネットで調べて出て来たし、評判もよかったはずだ。
あれなら、夢葉も緊張せずに楽しめるだろう。
「り、リラックスできて、二人で楽しめる……!? え、えっち! すけべ!」
「おい待て、そんなこと大声で言うな!」
あとそんなこと考えてない! 被害妄想だ!
夢葉は自分の身を守るように、体に手を回した。
いや、マジでその反応は誤解を生む。特に自分の身長を考えろ。事案も事案。悪即逮捕となってしまう。
「とにかく、変なことは考えてない。本当だ」
「……本当に?」
「ああ、本当だ」
「……少しは考えても……」
「ん? なんだって?」
「なんでもなーい!」
ぷいっ。今度は不機嫌になってしまった。
一体、何がなにやら?
「で? どこに連れてってくれるの?」
「ああ。じゃあ行こうか」
夢葉を連れて、レストラン前からズーランドの正門近くに移動する。
そこにあったのは。
「あっ、触れ合いエリア!」
「夢葉はよく来てるとは思うけど……アニマルセラピーって言葉があるくらいだからな。緊張してる今にはピッタリだと思って」
「ぁ……私のことを考えてくれて、ここに来たの?」
「ああ。夢葉が楽しんでくれないと、俺も楽しくないからな。一緒に楽しもう」
「……うん!」
ほっ、よかった。夢葉に笑顔が戻った。
手指を消毒してから触れ合いエリアに入る。
と、足元にいたウサギが夢葉に擦り寄ってきた。
「わっ、わっ! かかかっ、かわいい……!」
「この子は頭を撫でられると喜ぶので、是非撫でてあげてください」
スタッフのお姉さんに教えられ、夢葉はゆっくりとウサギを撫でた。
目を細めてじっとしているウサギ。可愛いな、これは。
満面の笑みを浮かべている夢葉とウサギを写真に収める。
なんだか、本当に少女って感じだ。
そんな一人と一匹を眺め、近くのベンチに腰を下ろす。
と、そんな俺のところに子猫がやって来て脚にしがみついてきた。
「なんだ? 遊びたいのか?」
「にゃー」
「はは。あざと可愛いやつめ」
子猫の頭を指先で撫でる。
その指に釣られてこてんと倒れると、俺の指に猫パンチをして来た。
「おん、やんのかてめー。ほら、よっ」
「にゃっ、にゃふっ」
頑張ってパンチするも、こてん、ぱたんと倒れる。
かあぁっ、可愛いなぁ……!
子猫の可愛さに癒されていると、夢葉がウサギを抱っこしてこっちにやって来た。
「しょーご、猫好きなの?」
「動物は全般好きだけど、猫は一番好きだな。普段はツンケンしてるのに、たまにあざとくなるのが本当に可愛い」
「あ、わかるわかるっ」
夢葉その場に座り込み、右手でウサギを、左手で子猫を撫でる。
美少女が動物と戯れる姿って、本当に絵になるな。
夢葉も緊張が解れたみたいだし……さすが触れ合いエリアだ。
【あとがき】
作者からのお願い。
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☆☆☆→★★★
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