第15話
「でっかぁ……!」
ズーランドに入り、一番最初に見に行ったのはゾウのエリアだった。
でかい動物が好きなのか、夢葉は目を輝かせてゾウを見上げる。
確かにでかい。これが同じ哺乳類だなんて、信じられないな。いったい夢葉何人分の大きさなんだろう。
「しょーご、今失礼なこと考えなかった?」
「気のせいだ。目を輝かせている夢葉も可愛いなと思っただけだよ」
「うぐっ……そ、それならいいんだけどさぁ」
プイッと再びゾウの方を見る。
なんだか子供の世話をしているみたいだ。
そんな夢葉を見ていると、鈴乃に後ろから服を引っ張られた。
「正吾、正吾。私もゾウ、好きなんだけど」
「ん? ああ、そういえば鈴乃も、大きい動物とか強そうな動物が好きだったな。もっと近くで見て来てもいいんだぞ?」
「うん、好き。……でも、今はここでいい」
と、俺の服の裾を掴んで離さない。
珍しい。いつもの鈴乃なら、動物を見てはしゃぎまわっていたはずなのに……って、そうか、今は夢葉がいるから、いつも通りはしゃげないのか。
それでも、楽しみたいのか体がソワソワと小刻みに震えている。
外面と内面のある生活ってのも大変だな。
でも……そんな生活、いつか必ず疲れが出て破綻する。
なら今日は……今日くらいは。
「鈴乃、こいよっ」
「え? キャッ!」
鈴乃の手を引き、楽しそうにしている夢葉の隣まで引っ張る。
「あれ、どうしたの?」
「鈴……月宮がはしゃぎたそうにしてたからな。今日くらいはクールぶらないで、年相応にはしゃいでも問題ないだろ。学校外なんだしさ」
「おー! しょーご、いいこと言った! そうだよ鈴ちゃん! 動物園はみんな童心に帰る場所! 自分の気持ちを押し殺さないで、楽しんだもん勝ちなんだよー!」
夢葉が鈴乃に抱き着く。
鈴乃は目を白黒させて、「いいのかな?」と言いたそうな目で見てくる。
そんな鈴乃に、俺は肩を竦めて笑顔を返した。
「そう、かな……いや、そうだね。今日は私も、思い切り楽しませてもらおうかなっ」
「いっえーーーーい! あっそぼーーーー!!」
鈴乃と夢葉が手を繋いで、園内を走って行く。
あんまりはしゃがれすぎると、ついて行く俺も大変なんだが。
しまった。子供がもう1人増えて、お守が大変になっただけだぞ、これは。
テンションが上がった2人に一生懸命ついて行く。
夢葉は子供みたいにはしゃぎ、鈴乃も夢葉と同じように楽しんでいる。
かく言う俺も、久々の動物園にテンションが上がっていた。俺、猫科の動物大好きなんだよ。
ま、それよりもあの可愛い2人を見てた方が、何倍も楽しいけど。
「しょーご、写真! 鈴ちゃんとライオンと写真撮って!」
「おう。ほら、並べ並べ」
スマホのカメラアプリを起動させて、2人を並ばせる。
ライオンはちょうどガラスの目の前にいて、目線をこっちに送っていた。
いいな、ナイスタイミングだ。
……ん? あれ、なんか違うな。カメラ目線じゃなくて……2人を見てる?
そう思った直後。
「ガルアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」
「「にゃーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?」」
ライオンにめっちゃ威嚇され、2人揃って跳びあがった。
どうやら2人を餌だと思ったらしい。おかげで跳びあがった2人を写真に収めることができた。ありがとう、ライオン。
すぐさま俺の背後に隠れる鈴乃と夢葉。相当驚いたのか、瞳孔が開いて汗が流れている。
「な、な、何さ何さ! そんな驚かせることないじゃんか!」
「正吾、あいつやっちゃって! ぎゃふんと言わせちゃって!」
「無茶言うな」
2人はまだ怒っているのか、俺を壁にしてライオンに威嚇している。
ライオンは既に興味を失ったみたいで、鼻息を鳴らして寝始めた。グッジョブ、ライオン。
「ふんっ。他愛もないね。私と夢葉の怖さに怖気づいたよ」
「いーっだ。ばーかばーか!」
「お。2人とも、ライオンの餌やり体験とかあるけど、行くか?」
「「ごめんなさい」」
さすがにトラウマになったらしい。即座に謝って来た。
全く……2人を見てると、飽きないなぁ。
俺は未だに怯えている2人を連れて、ライオンエリアを離れて今度はキリンエリアへと向かった。
【あとがき】
作者からのお願い。
続きが気になる、面白いと思ったら、星や応援、フォローをお願いします!
☆☆☆→★★★
こうしていただけると嬉しいです!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます