第8話
ある日、チェルシーが目を覚ますとメイドから申し伝えが有った。
「あら、クラーク様から伝言ですって?」
「はい、明日の午後、お茶会にいらして下さいとのことです」
「分かりました。参りますので、その旨お伝え頂けますか?」
「承りました」
チェルシーは緊張した。
「まさか、なにかバレてしまったのかしら? 蚤の市のこと? それともビールのこと?」
チェルシーは鏡に映った自分の顔を見た。緊張で固まっている。
「大丈夫、上手くやれますわ」
チェルシーは淡いラベンダー色をドレスを取り出し、明日のお茶会に備えた。
夜が明けた。
午前中はクラークとのお茶会を想像して落ち着かない時間を過ごした。
午後になり、軽い昼食を終えると馬車がやって来た。
「チェルシー、クラーク様がお見えですよ」
「ええ!? クラーク様が? ……分かりましたわ」
チェルシーは急いで門に向かった。
「こんにちは、チェルシー様」
「ごきげんよう、クラーク様」
「今日はちょっと遠出をしようと思いまして」
「まあ、どちらに行かれるんですか?」
「それは秘密です」
クラークはいたずらっぽく笑うと、チェルシーが馬車に乗るのをサポートした。
馬車が走り出す。
「あら、この道は?」
「よくご存じでしょう? あなたの家の小作人の家に向かってます」
「まあ」
チェルシーは、緊張で手に汗をかいていた。
「着きましたよ」
「はい」
チェルシーは覚悟を決めた。
「そんな怖い顔をしなくても大丈夫ですよ。チェルシー様」
クラークは笑った。
「グルートビールは美味しいですね」
「!!」
チェルシーは冷や汗が出てくるのを感じた。
「こんにちは」
「こんにちは、おや、クラーク様とチェルシー様? ご一緒とは珍しい」
「え? クラーク様をご存じですの?」
小作人は頷いて言った。
「はい、先日グルートビールの税を納めるよう言われましたので」
「あら、それは私の仕事でしたのに。申し訳ありませんでしたわ」
「正式に王宮で手続きをすると、税が高くなりますから個人的に徴収させて頂きました」
クラークは悪びれずに言った。
「共犯ですね、チェルシー様」
「……」
チェルシーは心の中で舌打ちをした。
「王にバレたら、犯罪ですわよ」
「そうですね」
クラークは笑顔で答えた。
「これからは、楽しいことは二人で致しませんか?」
「クラーク様、どういうことですの?」
チェルシーは笑顔を浮かべて尋ねた。
「王宮に集まる綺麗なだけの令嬢には飽き飽きしておりましてね」
「私にご興味がおありなんですか?」
チェルシーの言葉に、クラークは笑顔を浮かべた。
「……わかりましたわ」
「契約成立ですね。それでは、お茶でも飲みながらお話でも致しましょう」
「ええ」
こうしてチェルシーとクラークは、いろいろな悪巧みもするのですが、それはまた別のお話で。
悪役令嬢vs腹黒王子! 茜カナコ @akanekanako
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