第21話
陸が教室に滑り込んできたのだ。
「あ、きた」
美紀がそう言った瞬間、陸が後ろ手にドアを閉めた。
勢いがついていたせいか、バンッと大きな音が鳴ってドアがしまる。
その拍子に陸が飛びあがっていた。
「いってぇ!!」
ドアを閉めた右手を押さえてうめき声を上げる。
その瞬間あたしと夢は目を見かわせた。
ここからじゃしっかり見えなかったけれど、今陸はドアに指を挟んだのだ。
「ちょっと陸なにしてんのよ」
ブッと吹きだして笑いながら美紀が言う。
「指挟んじまった」
「自分で閉めたドアで指挟むとか、どれだけマヌケよ!」
美紀は陸が相手でも容赦なく笑う。
それにつられて教室の中が笑い声に満ちていく。
不意に陸がクラスメートたちを睨みつけた。
今自分がみんなから笑われているということに、やっと気がついたみたいだ。
「笑うな!」
必死に怒鳴ってみんなを黙らせようとしているが、それよりも笑い声の方が大きくて陸の声はかき消されてしまう。
なにより、クラウカーストトップの美紀が笑っているのだから、笑い声が止まるはずがない。
あたしはふふっと小さく声を出して笑った。
些細なことだけど、陸にとっては屈辱的なことに違いない。
いい気味。
そう思ったのだった。
☆☆☆
陸の怪我は思ったよりも大きいものだったようで、化学の時間が終わる前に保健室へ行くことになった。
そしてD組に戻ってきたときには右手の指は包帯でぐるぐる巻きにされていた。
「そんなに大けがなの?」
さすがに美紀が心配そうに言う。
「放課後病院に行くことになっちまった」
陸はチッと舌打ちをして答えている。
バカ力が自分に戻ってきた結果だ。
「思ったよりも効果があったみたいだね」
陸の様子を見て夢は満足そうにほくそ笑んでいる。
あたしは頷く。
あれだけの怪我になったのなら、十分に復讐したと言えるだろう。
もちろん、これくらいのことであたしたちの気分が晴れるわけじゃないけれど。
「ねぇ、次はどうする?」
夢はせかすように聞いてきた。
早く次の復讐を行いたくてウズウズしている様子だ。
「待ってよ、まずはあたしへの損失が終わってからだよ」
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