第16話
☆☆☆
これは本物のアプリだ。
このアプリに写真をUPすれば、その相手に恐怖を与えることができるんだ。
教室へ戻ってからあたしはずっと心臓が高鳴っていた。
すごいものを手に入れてしまったということだけ、頭で理解している。
でもまだ現実味はない。
2度も目の前で起こった出来事を、まだ消化しきれていない。
「あの植木鉢、誰が置いたかわからないんだってさ」
教室内からそんな声が聞こえてくる。
靖のことはあっという間に知れ渡り、誰が植木鉢を窓の上に移動させたのか、という問題で持ちきりだった。
上の階は1年生の教室だったのだが、5時間目の授業が体育だったため教室には誰もいなかったらしい。
植木鉢は普段教室後方の棚に置かれていたもので、誰も移動していないという。
被害者である靖は鼻の頭を切ったようだけれどすぐに血は止まり、念のために早退していた。
そんなことがあったせいか、午後からの美紀たちはとても静かだった。
「損失がなんだったか、また明日教えてね」
帰り際の教室で、夢がそう声をかけてきたのだった。
☆☆☆
家に戻ってきてからもあたしはまだボンヤリとした気分でいた。
このアプリが本物だったとして、使い道はどうしようか?
やっぱり4人に復讐するために使おうか。
それとも、もっと面白い使い道があるだろうか。
そんなことばかり考えていたからだろうか、コーヒーを飲むためにカップを取り出した時、手元が狂って落としてしまったのだ。
お気に入りのカップは床にぶつかるとあっけなく砕け散ってしまった。
「ちょっと大丈夫?」
リビングでテレビを見ていたお母さんが驚いてキッチンに入ってきた。
「ごめん、手がすべっちゃって」
そう言い、大きな破片を拾っていく。
あ~あ、お気に入りだったのに……。
家族旅行に行ったときに買ったカップは家族3人でおそろいだったのだ。
それが割れてしまったことで残念な気持ちが広がっていく。
とても丈夫なカップで簡単に割れることなんてなかったのに。
そう思っていた時だった。
部屋着のポケットに入れていたスマホが震えて、ハッと息を飲んだ。
まさか……!
慌てて取り出し、画面を確認する。
そこには『損失を与えました』の文字が書かれていたのだった。
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