第14話
「あはは! おもしろいことしてんじゃん!」
靖の声が聞こえてきてサッと血の気が引いて行く。
なんてタイミングで登校してくるんだろう。
「俺も混ぜてよ」
靖はそう言うと転がったままのあたしの上履きを脱がせた。
「なにするの!?」
そう言っても、美紀が邪魔で立ち上がることができない。
靖はわざとあたしが見える場所まで移動してきて、上履きにハサミを入れたのだ。
「ちょっと!」
夢が止めようとするが、その瞬間靖はハサミの刃を夢へ向けて突き出したのだ。
夢が青くなって動きを止める。
「動くと刺すぞ」
靖はニタニタとした気持ち悪い笑みを浮かべてそう言うと、あたしの上履きをバラバラに切り刻んだのだった……。
☆☆☆
今日は本当に散々な日になりそうだった。
まだ午前中が終わったばかりなのに、あたしの心は疲弊しきっていた。
朝から上履きを切り刻まれ、夢はあの後机の中に生ゴミを詰め込まれた。
美紀の機嫌が悪いときはいつも以上に激しくイジメられてしまう。
クラスメートたちは見て見ぬふりを決め込んで誰も助けてくれない。
いつもニヤニヤと笑って楽しんで見ている連中ですら、こういうときは視線を向けようともしなかった。
そしてようやく午前中が終わったとき、あたしと夢はお弁当箱を持って教室から逃げ出した。
教室でのんびりご飯を食べている余裕なんてない。
食堂へ行っても、美紀に見つけ出されるかも知れなかった。
「どうする、どこで食べる?」
「もう、空き教室とかに行くしかないよね」
あたしは夢の質問にため息交じりに返事をした。
どうしてあたしたち2人がこんなにコソコソしなきゃいけないのだろう。
周囲で笑い合っている無関係の生徒たちを憎らしいとすら感じてしまう。
2人で埃っぽい空き教室にやってきて、黙々とお弁当を食べる。
でも、今日のお弁当ほど味のしないものはなかった。
教室へ戻ればまたひどくイジメられるはずだ。
もうこのまま早退してしまおうか。
そんな考えが浮かんでくる。
「あのアプリの効果じゃなかったのかな」
不意に夢が呟いた。
「え?」
「今日ってまだなにも起こってないよね? ってことは、昨日の出来事はただの偶然だったのかな?」
「……そうかもしれないね」
あたしは口の中の食べ物をゴクリと飲み込んで答えた。
普通、偶然だと解釈する方が自然だった。
元々あのアプリのおかげで靖がドブにはまったなんて考えるほうがおかしいのだ。
それでも、少しだけ期待していた自分はいた。
あのアプリがあれば4人に復讐できるんじゃないかなんて、甘い期待を抱いていた。
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